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【完結】天野来人の現代神話 ~半神半人の鎖使い、神々を統べる王となる~  作者: 赤木さなぎ
第二章 ガイアの遺伝子編

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『遺伝子』の色

「――ねえ、メガ」

「うん? どうしたんだネ?」

「鬼を殺さずに、人間に戻す方法って、無いかな」


 その問いは、メガにとって唐突な物だっただろう。

 鬼人(きじん)という生前の記憶を取り戻した言葉を話す鬼、その存在は天界の神々にも知られていない。

 “鬼人となった秋斗を人間に戻したい”なんていう来人の真意なんて、分かるはずも無い。

 だというのに、メガはその問いを馬鹿な物だと笑い飛ばす事も無く、そしてその理由を問い返す事も無く、ただ単に素直に受け止めて「ううーん」と考え込んだ。


 来人はメガが思考を巡らせ答えを探す中静かに待ち、ずずっとギザの入れてくれた茶を啜る。

 そして、しばらくするとメガが顔を上げた。


「――そうだネ、可能性は有るかもしれないヨ」

「本当か!?」


 ダメ元での問いだっただけに、前向きな回答が返って来て来人は声を上げた。

 しかし、タダとは行かない。

 

「でも、その前に。ボクにもそれを求める理由を教えてくれヨ」

「それは――」


 当然の疑問だろう。

 しかし、秋斗は他者に存在を知られぬよう秘密裏に動いている。

 もし仮に存在がバレた場合、神々は鬼である秋斗たち鬼人を問答無用で殺して核にしてしまうだろう。

 それは別に悪意が有っての事ではなく、神々にとって核を浄化して魂を輪廻の輪に戻すという行為は当たり前の事で、正しい行い。

 来人のやろうとしている鬼を直接人間に戻す、生前の状態に戻す、つまり殆ど死者蘇生に近しい行いをしようとしているのが邪道なのだ。


 メガはそんな来人の心中を見通したかのように、言葉を重ねる。


「別に、秘密だというなら言いふらしたりはしないヨ。ライトが天界の馬鹿どもにボクの存在を秘匿してくれているのと同じ様にネ」


 そのメガの言葉に、来人は心を決めた。

 

「分かった。実は――」


 そして、秋斗の事と、鬼人の事。

 来人の知りえる情報を全てメガに開示した。

 

「なるほど、鬼人ネ……。にわかに信じ難いが、ライトが言うのなら間違いはないんだろうネ」

「ワタシもメガさんに拾われずに死んでいたら、鬼になってたんデスかねー」

「お前の場合は仮に鬼になったとしても、生前に近しい者が居ないんだから鬼人にはなれなかっただろうけどネ」

「なるほどデス」


 そんな会話をメガとギザが交わしている。


「それで、さっき言ってた可能性って?」

「実は、似たような研究をしていた事が有ったんだヨ。ボクが自分の器を改造したって話は、前にしただろう?」

「ああ、元々病弱だったのを魂の器を弄って――あっ」


 そこまで喋って、来人は思い至る。


「そうか、魂が歪に変質した鬼も、メガが改造すれば――」

「いいや、そう都合よくは行かない。僕の技術では鬼のあべこべで滅茶苦茶な魂を正常な状態に戻す事は出来なかったヨ。ボクが出来る改造はボク自身にそうした様に、付け足すだけ、足し算までだヨ」

「出来なかったって、やった事は有るのか……」

「人体実験よりは、まだ人道的だと思うヨ」


 元が人間だったと思うと素直に頷けないが、来人にそれを責める権利も無いので特に突っ込みはしない。

 

「それじゃあ、どうやって? 他の可能性が有るのか?」

「『遺伝子』の色(スキル)――かつて“魂の遺伝子を組み替える”、そんな色(スキル)を操るガイア族が居たんだヨ」

「魂の、遺伝子……」

「そうだネ、少し長い昔話をしようか。――ギザ、お茶を入れ直してくれ」


 ギザはメガからマグカップを受け取り、合わせて来人のカップにも茶を注ぐ。

 そして、改めてメガは話を始めた。


「――『遺伝子』の色(スキル)、それはかつて二代目神王(しんおう)ウルスが相棒のアッシュと共に討った、裏切りのガイア族“ゼノム”の持っていた色(スキル)だ」

「裏切りのガイア族、つまり悪者って事?」


 来人がそう問えば、メガは「さあ、それは受け手次第だヨ」と言葉を濁して、話を続けた。

 

「ゼノムは原初のガイア族の内の一体で、“ファントム”というもう一人のガイア族と共に、神からの解放を謳って神々に反旗を翻したんだ。『遺伝子』の色(スキル)で他の原初のガイア族の魂を変質、怪物に変貌させて暴走させる事で甚大な被害を及ぼした。その色をもう一度再現できれば、鬼となった魂を人間の物に再構築できるかも知れないヨ。」

「でも、お爺ちゃんが倒した。だからその色(スキル)も、もう失われたんじゃ……?」

「ああ、そうだヨ。でも、別に色は他者が再現出来ない訳じゃないヨ。お兄ちゃんが“バーガ”の『氷』の色(スキル)を再現して見せた様にネ」

「え、ガーネの色(スキル)って、元々の使い手が居たの?」

「ああ。それがボクら兄弟の祖父であり、初代神王アダンの友人だった原初のガイア族“バーガ”だヨ」


 今まで知らなかった地を歩く天使――ガイア族たちの話に驚く来人。

 しかし、メガの言いたい事が見えて来た。


「つまり、ガーネと同じ様に原初のガイア族の色を子孫たちは再現出来る可能性が有るって事か!」

「もっとも、既に死したゼノムの子孫なんてこの世に居ないけどネ」

「駄目じゃん」


 意気揚々とメガの先を行こうと自身の結論を語った来人だったが、すぐに否定され肩透かしを食らう。

 この犬の先を行くにはまだ早そうだ。

 

「じゃあ、どうするんだよ?」


 来人が諦めてそう聞けば、メガは意地悪そうに口角を上げる。

 

「ふん、じゃあヒントを上げよう。――『死したゼノム』『ウルスの色(スキル)』、そして『泡沫』。どうだい?」

「どうだいと言われても……」


 来人は考える。

 死したゼノム――『遺伝子』の色(スキル)を有していた、原初のガイア族。今回のキー。

 ウルスの色(スキル)――つまり、アッシュとの『憑依混沌(カオスフォーム)』によって使用している『分解』。

 そして、来人の色(スキル)『泡沫』――相手の攻撃を一度吸収して、バブルに閉じ込め、その後反射する能力。

 

 メガがこれらをヒントと言うのだから、そのパズルのピースを組み合わせる事で答えを導き出せるのだろう。

 そして、しばらく思考を巡らせた来人の結論はと言うと――、


「――過去に戻って、ゼノムの攻撃を『泡沫』で受ける事で、『遺伝子』の色(スキル)を貰って来る!!」

「馬鹿もの」


 一蹴。

 隣でギザもくすくすと笑っている。


「先輩、それでは『ウルスの色(スキル)』というピースが余っているのデス。それに、過去に戻るなんて手札は無いのデスよ?」

「いや、メガなら出来る! 頑張ってくれ!」


 正解を導き出す事を諦めた来人がメガに丸投げすると、ため息をついて答を教えてくれた。


「かつてゼノムはウルスとアッシュによって討たれた、つまり『分解』された。分解とはつまり消滅とは似ている様で異なる物だ」

「つまり、分解された欠片がどこかに在ると?」

「“かもしれない”という仮定の話だけどネ。そして、ライトはもっと頭を柔軟にするべきだ。ボクの分析によれば『泡沫』の色(スキル)はスポイトの様な物だ、他の色を吸い出して、自分の色として扱う――」

 

 メガはこれまで来人がラボに通っていた間に“健康診断”と称して様々なデータを集めていた。

 だからこそ、来人本人以上にその能力を理解していた。


「つまり、ガイア界のどこかに在るかも知れない遺伝子の色の残滓を見つける事が出来れば、僕の色(スキル)を応用してスポイトの様に掬い取れれば、可能性が有る」

「YES」


 そして、メガは背負ったリュックから伸びたマジックアームでキーボードを器用に操作し、大きなモニターに映像を映し出す。


「――ガイア界の最奥、氷の大地リップバーン。さっき話題に上げたバーガの眠る地。そこはバーガから溢れる『氷』の色によって一帯の時間すら停滞している禁足地だ。そこなら、古の戦いで散ったゼノムの色も大気中のどこかに残っているかもしれないヨ」

「そこに行けば、もしかすると――」

「ほんの僅かな、それこそ1%よりも低い可能性だけどネ」


 時が止まり、太古の空気を残した禁足地、氷の大地リップバーン。

 そこへ行けば、秋斗を元に戻せる可能性が有る。

 ほんの僅かな可能性だったとしても、来人がそこへ向かう理由としては充分だった。


「でも、そのバーガ? そのメガたちのお爺ちゃんは、どうしてそこに?」

「――祖父は遥か昔の戦い。かつてアダンとアナと決別した原初の三柱の一つ、破壊の神アークとの戦いで戦死したヨ」

「破壊の神……」


 そう言えば、と思い出す。

 王の間で出会った原初の三柱はアダンとアナの二人だけ。

 そして、もう一柱の事を問おうとすれば話したがらなかった。


「ま、昔の話だヨ。そのアークもアダンたちに敗れて封印された、二度と陽の光を浴びる事はないヨ」

 

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星は1~5まで、思った通りの評価を付けて頂ければと思います。

軽い気持ちで大丈夫なので、是非よろしくお願いします!


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