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【完結】天野来人の現代神話 ~半神半人の鎖使い、神々を統べる王となる~  作者: 赤木さなぎ
第一章 百鬼夜行編

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来人VS『赫』の鬼②

「まだだ!!」


 ボロボロになっても、何度でも立ち上がる。

 来人は拳に鎖を纏う。

 それはテイテイから伝授された、鎖を扱う拳法――『鎖拳(さけん)』だ。

 

 『赫』の鬼の拳に、鎖の拳をぶつける。

 鎖は回転し、まるでドリルの様に赤い甲殻を打ち砕く。


 そして、ボロボロの両手を後方へ伸ばすと、弾かれて地に落ちた二本の剣は来人の手元へと帰って来る。

 そして、両の剣を振り下ろす。


「小賢しい真似をッ!!」


 『赫』の鬼は自身の腕を剣の形へと変える。

 そして、数度の剣と剣の打ち合いの末。


「ぐあああああああ!!!!」


 『赫』の鬼は来人の剣を弾き、返しの刃で来人両腕を切り落とす。

 

「終わりだ」


 そして、トドメの一撃を振り下ろそうとした時。


「――終わらせて、堪るかよ」

「――ギリギリ、間に合ったネ」


 雑魚を蹴散らしたテイテイとガーネが、助けに来た。

 

 ガーネが『赫』の鬼の剣を受け止め、テイテイがそのがら空きの胴に鎖の拳を叩き込む。

 『赫』の鬼はその拳の一撃で吹っ飛ばされ、岩山の壁にその身体を埋める。


「らいたん、まだ立てるネ!?」

「あたり、まえだ……」


 来人はゆっくりと立ち上がる。

 腕の傷口の隙間から鎖が伸び、それが新たな腕を形作る。

 天界でのティルとの戦いで一度見せた、イメージによる肉体の修復。

 今回はあの時よりも、より大きく、より強靭な腕。


 鎖で構築した腕で、再び剣を握る。

 しかし、その刃はもう先程までの激しい戦闘でボロボロだ。

 来人は剣に鎖を巻き付け、刃の代わりとする。


 『赫』の鬼はまるで堪えていないみたいに、依然立ち上がり、またケタケタと気味悪く笑いながらテイテイの方を見る。

 

「お仲間が来たかと思えば、ただの人間じゃねぇか」

「――『赫』の鬼、やっと会えたな」

「ああん? 誰だよ。雑魚の事なんかいちいち覚えてねえよ」


 両者、激突。

 拳と拳、赤い稲妻とマグマ、両者の力を激しくぶつけ合う。

 しかし、テイテイがどれだけ強いと言ってもやはり人間だ。

 鬼の中でも最強格の『赫』の鬼を相手では、押し負けてしまう。


 しかし、それでもテイテイは一人ではない。

 

「後ろだネ!――『氷斬(ひょうざん)』!!」


 『赫』の鬼の背後から、ガーネが斬りかかる。

 氷を纏った斬撃。

 しかし、『赫』の鬼はすぐさまそれに反応し、一瞬の内に片腕を剣の形に変形させて、その斬撃を相殺。

 そのままもう片方の手で赤い稲妻を放ち、ガーネを一蹴した。


「てめえら雑魚に用はねえんだよ」


 『赫』の鬼が二人を倒し、再び来人に狙いを定める。

 しかし――、


「――今だ!!」

 

 テイテイは倒れたまま、全力で大地を殴りつける。

 その強烈な振動で、地に散らばっていた無数の“金のリング”が弾き上がる。

 それは一番最初に来人が散らしておいた布石。

 カンガスという獣人の男から入手した隠し玉――“サブウェポン”だ。


 これまでのテイテイとガーネの動きは全て、後ろで準備を整えていた来人の為の攪乱(かくらん)だ。

 

「――『光輪(こうりん)』。このリングは全てが“隙間”だ」

 

 武器屋のカンガスが選んだサブウェポン、それは元は投擲武器としての用途で造られた光輪(金のリング)だった。

 それを『鎖』の色(スキル)の“あらゆる隙間から鎖を生成する”という特徴を活かす為だけに利用したのだ。


 来人はその光輪の輪の隙間から鎖を産み出し、鎖の牢獄を『赫』の鬼の周囲に創り出し、縛り上げる。


「なっ――!? 小癪な真似を――」

 

 そして、来人の鎖の腕は先程よりも巨大化していた。

 同じくその手に握る剣の刃に巻き付く鎖も幾重にも重なり、巨大な一本の丸太の様になっている。

 

 巨大な鎖の腕に、巨大な鎖の刃。

 テイテイとガーネが作り出した時間で、来人は『赫』の鬼を殺す為の準備を万全に整えていた。


「やめろ、やめろやメロ、ヤメロォォォ!!!」


 『赫』の鬼は身体を暴れさせ、抵抗する。


「いいや、ここでお前は終わりだ」

「だネ!」

 

 しかし、光輪から伸びた鎖の上から、テイテイが更に鎖できつく何重にも縛り上げ、ガーネが氷漬けにする。

 もう、逃げられない。


「――父さん、僕の欲が何なのか、分かったよ」


 最後の攻撃の時、来人は誰にも聞こえないくらいの声で呟く。


「――僕は陸と違って、家族も居て、裕福な良い暮らしもしている。でも、それじゃあ満足出来ないんだ」


 来人は親友の秋斗を奪われた。

 それは富も、家族も、恋人も、全てを持っていた来人がこれまでの人生の中で唯一失った物だ。


「――僕は、全てが欲しい。たった一つでもこの手から取りこぼす事が、許せない」


 “全て”を求める半神半人(ハーフ)の王子、来人。


「秋斗の仇――、お前は、ここで殺す」


 振り下ろされる巨大な鎖の刃は回転し、『赫』の鬼の甲殻を砕き、肉を抉り取る。


「グギャアアアアアア!!!!」


 ジャリジャリと鎖の擦れる金属音と共に、『赫』の鬼の最後の絶叫が地の色に染まる岩山の世界に木霊する。

 宿敵が最後に口にしたのは人の言葉ではなく、鬼の奇怪な鳴き声だった。


 『赫』の鬼の核が、ごとりと重い音を立てて落ち、異界の膜がじんわりと溶けて降りて行く。


「――終わったネ」

「来人、やったな」


 戦いを終え、来人の元へと駆けて来る二人。

 来人の髪色も、白金が抜けて茶へと戻る。


「ガーネ、テイテイ君、ありがとう――」

「おっと」


 来人はそう言うと、緊張の糸が切れたみたいにふらりと倒れ、それをテイテイが受け止める。

 いつの間には、来人の腕は鎖の鉛色から元の肌色に戻っていた。


「ごめん」

「言っただろ、来人の事は守るって。今度は、親友を失わずに済んだ……」

「ああ、格好良かったよ、親友」


 来人は姿勢を立て直し、テイテイと拳を合わせ健闘を称え合う。

 幼き頃に親友を殺した『赫』の鬼は来人のその手で殺された。

 仇討ちを果たしたのだ。


 しかし、親友の秋斗はもう帰って来ない。

 復習を果たしても、気持ちは晴れる事は無かった。

 全てを求める来人は、満たされない。


(王の力が有れば、秋斗を――)


 失った物を、取り戻す。

 秋斗を、生き返らせる。

 来人は決意を新たに、覇道を突き進む。

 

 中国の百鬼夜行、『赫』の鬼は討たれた。

 残すはティルの南極部隊のみ、大異界はあと一つだ。

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