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僕のペナントライフ  作者: 遊馬 友仁
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幕間その4〜決戦・日本シリーズ!オリックス対阪神〜その②

 10月28日(土)


 僕にとって、二度目となる我らが阪神タイガースの日本シリーズ選手権の戦いが始まる。


 前回、我がチームが日本シリーズに進出したのは、ペナントレースを2位で終えたあと、カープとジャイアンツに対して無敗でクライマックスシリーズを勝ち抜いた2014年以来だ。

 中学三年生だった僕は、それなりに楽しみながら、この年のシリーズを観戦していたが、やはり、贔屓の球団がペナントレースを制して、日本シリーズに出場する、ということは前回の出場時とは重みが違うように感じる。


 今年のクライマックスシリーズ・ファイナルはカープとの対戦になったが、三試合とも相手チームに先制を許し、最終回まで僅差が続く、緊張感のある試合の連続だった。


 開幕前の評論家の予想では、両チームのチカラは拮抗していて、


「オリックスと阪神、どちらが勝つにしても4勝3敗で第7戦目までもつれる」


という意見が多数を占めている。


 カープとのクライマックスシリーズのように、胃の痛くなるような緊張感のある戦いが7試合も続いたら、健康を損ねてしまうのではなだろうか、という心配をしながらも、プロ野球を観戦するようになって以来、ずっと『推し』てきたチームが、最高の舞台に立っていることに喜びを感じずにはいられない。


 この大事なシリーズの初戦を僕は、奈緒美さんの家で観戦することになった。

 試合終了後に、そのまま、週末恒例の彼女オススメのライブ観賞に突入するためだ。


 今日も、彼女の家でお世話になるということで、僕が夕飯を用意することにした。

 

 翌日も、作り置き、もしくはリメイク料理が提供できるように、メニューはクリームシチューに決定。

 

 料理番組で見た卵黄を混ぜ込むレシピで作ったシチューは、市販のルーで作ったにもかかわらず、濃厚で味わい深いものになった。

 試合開始に間に合うよう、いつもより早めに準備をして、塩バターフランスパンと白ワインをあわせていただくディナーは、僕のはやる心を落ち着けるかのように、優雅なものになった。


 それでも――――――。


 午後6時30分の試合開始の時間になると、緊張が高まってくる。


 パ・リーグを三連覇し、日本シリーズにも三年連続で出場しているバファローズは、監督も選手たちも短期決戦の経験が豊富なメンバーばかりだ。

 一方の我らがタイガースの選手は、そのほとんどのメンバーが、日本シリーズ初経験である。


(雰囲気にのまれて、初戦から惨敗なんてことになりませんように……)


 それだけを祈りながら、試合の序盤を見守っていたのだが――――――。


 僕の……いや、多くのファンや評論家の予想に反して、試合は中盤から我がチームの一方的なペースになった。


 5回表に先頭打者としてヒットで出塁した佐藤輝明(さとうてるあき)が、続くノイジーの打席の初球に、意表を突く盗塁を決めると、進塁打で三塁に進み、指名打者としてスタメンに抜擢された渡邉のポテンヒットで、今や日本球界ナンバー1の好投手・山本由伸(やまもとよしのぶ)から待望の先制点を奪う。

 さらに、ランナーをためて、近本(ちかもと)中野(なかの)のタイムリーで追加点をあげて、一挙に4点を奪う。

 次の6回にも、中軸で作ったチャンスを下位打線でモノにするという期待以上の結果で、()()山本由伸を中盤で早々とノックアウトしてしまった。


 一方、今季ブレイクした村上頌樹(むらかみしょうき)は、日本シリーズ初先発とは思えない、落ち着いたマウンドさばきで、5回裏に初めて迎えたピンチでも、ファウルで粘るマーウィン・ゴンザレスに対して、笑みさえ浮かべるような余裕が感じられた。


 試合が終わってみれば、村上は7回2安打無失点の好投であったことに加えて、得点に大差がついたことで、緊迫した場面で投入されるであろう島本(しまもと)石井(いしい)桐敷(きりしき)岩崎(いわざき)などのリリーフ陣を完全に休養させることができる程の完勝だった。


 相手に生じた小さなほころびを突いて、一気に連打を浴びせるシーズン中の我がチームの攻撃の長所が見られたことは、とても心強く思えた。

 さらに、岡田監督が指示したと考えられる、バファローズ・バッテリーの動揺を誘った佐藤輝明に対する盗塁指示の采配は、多くの解説者陣から称賛の声が上がっている。


 そのソツの無い戦いぶりには、ファンでありながらも困惑を覚えてしまい、

 

(阪神って、こんなに強いチームだったけ?)


と、心の中に疑問が湧いてくるほどだった。

 

 ……とは言え、最後は地力の差を見せつけられる格好になった、9年前のホークスとの日本シリーズも、初戦は快勝で始まっている。


 パシフィック・リーグを圧倒的なゲーム差で制したバファローズが相手だけに、今年も、まだまだ油断はできない――――――。


【本日の試合結果】


 プロ野球日本選手権シリーズ オリックス 対 阪神 第1戦 

 

 オリックス 0ー8 阪神


 バファローズ・山本由伸(やまもとよしのぶ)、タイガース・村上頌樹(むらかみしょうき)、予想どおり両先発の好投もあり0対0のスコアで迎えた5回表。タイガースは、佐藤輝明(さとうてるあき)のヒットと盗塁を足掛かりに、渡邉諒(わたなべりょう)のタイムリーで先制すると、近本光司(ちかもとこうじ)中野拓夢(なかのたくむ)も続き、この回に一挙4点をあげる。続く6回にも、木浪聖也(きなみせいや)坂本誠志郎(さかもとせいしろう)などのタイムリーで追加点をあげ、山本由伸をノックアウト。

 投げては、先発の村上が7回を2安打無失点の快投で、タイガースが初戦を制した。


 ◎10月28日終了時点の日本選手権シリーズ成績

 

 阪神タイガース     1勝

 オリックスバファローズ 0勝

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