第3幕・Empowerment(エンパワーメント)の章〜⑤〜
6月23日(金)
交流戦が終了し、リーグ戦が再開する。
リーグ再開時、最初の対戦相手は、横浜DeNAベイスターズ。
今シーズンの交流戦において、我がチームが12球団10位と低迷したのに対し、ベイスターズは交流戦優勝と完全に勢いに乗っている。
さらに、この週末の試合に、ベイスターズは、エースの今永昇太、今シーズン絶好調の東克樹、6月になって本来の実力を発揮するようになったサイ・ヤング賞のトレバー・バウアーの三本柱を先発させてくるらしい。
この三連戦で三連敗をくらうと、先月の甲子園でのベイスターズ戦以来、守ってきた首位の座から陥落することになる。
まだ、シーズンの折り返し地点にも達していないとはいえ、僕は、この三連戦が前半戦の大きなポイントになると考えている。
それだけに、ファンとしては、
「なんとか、三連敗だけは避けてほしい……」
そう考えていたんだけど――――――。
三連戦の初戦は、ベイスターズの先発・今永にほとんど歯が立たず、完敗に近い内容だった。
チームに勢いのあった交流戦前と異なり、三回にベイスターズに2点を先制されると、反撃する気配は見られず、序盤から敗色濃厚の空気が漂う。
試合は、そのまま進んで、最終回に大山がソロ・ホームランを放ったものの、得点はこの1点のみ。
翌日以降も、ベイスターズの好調な先発投手陣を相手にすることを考えると、交流戦後半から、得点力が落ちたように感じる打線のデキには心配がある。
それでも、いつまでも落ち込んでいられない、と思い直し、試合が終わったのが夜の9時前ということもあって、僕は、奈緒美さんに連絡を取ってみることにした。
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お仕事お疲れさまです
先日のカラオケ
とても楽しかったです
今度はお食事も一緒にどうかと
考えているのですが・・・
奈緒美さんのご都合は
いかがですか?
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送信したメッセージには、すぐに既読がつかず、返信があったのは日付が変わった頃だった。
【本日の試合結果】
横浜 対 阪神 9回戦 横浜 3ー1 阪神
両チーム無得点で迎えた3回裏、ベイスターズの牧と宮崎のタイムリーヒットで2点を先制される。さらに、6回裏には、ソトのソロホームランが飛び出し、リードを広げられた。
阪神は、9回に大山のソロホームランで1点を返したものの、反撃はここまで。
先発のビーズリーをはじめ、投手陣は3失点と粘りを見せたものの、打線が振るわず、三連戦の初戦を落とす結果となった。
◎6月23日終了時点の阪神タイガースの成績
勝敗:37勝24敗 2引き分け 貯金13
順位:首位(2位と1.5ゲーム差)
6月24日(土)
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虎太郎くん
メッセージありがとう!
せっかくお誘いいただいたけど
夏のイベントの準備が忙しく
しばらく会えそうにありません
本当にごめんなさい
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スマホを充電コードに挿したまま寝落ちしてしまっていたので、奈緒美さんからの返信に気づいたのは、メッセージを送った翌朝のことだった。
返信内容を確認し、気分が沈んだままでありながらも、なんとか、気持ちを立て直して、彼女のメッセージに返事を送る。
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承知しました
お忙しい時に申し訳ありません
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熊がお辞儀をするスタンプ付きで返信を送ったものの、その後も僕のココロは晴れないままだった。
あの日、
「今度は、私の部屋に遊びに来てくださいね」
と言ってくれたのは、単なる社交辞令だったのか、と気分が塞ぎ込んでしまう。
当たり前のことだが、そんな落ち込んでいる僕の心理状態が、横浜スタジアムに伝染したわけではないだろうけれど――――――。
この日も、初回からベイスターズに先制を許すと、直後の2回表に連打で無死一・二塁の好機を作った以外は、得点の気配すらなく、淡々とイニングが進み、6回裏に追加点を奪われてスコアが0対2になると、試合の大勢は決したように感じられた。
他球団のファンである僕の立場からすると、新人王を獲得したシーズン以降は。昨年まであまり目立つ成績を残していないように感じていたベイスターズの先発・東克樹だが、この日は、特に素晴らしい投球を見せていた。
今シーズンは、この試合が始まるまでに、6勝2敗と安定した成績を残していて、この先のシーズンでも難敵となりそうな雰囲気を感じさせた。
【本日の試合結果】
横浜 対 阪神 10回戦 横浜 2ー0 阪神
伊藤将司とベイスターズ東の投げ合いとなった試合は、初回にベイスターズ佐野のタイムリーで1点を先制されたまま中盤まで進む。
3回以降、チャンスらしいチャンスを作れないまま、6回裏に追加点を奪われると、打線は相手先発の前に沈黙し、完封を許す。
チームは、交流戦から続けて4連敗となり、2位ベイスターズに0.5ゲーム差に詰め寄られた。
◎6月24日終了時点の阪神タイガースの成績
勝敗:37勝25敗 2引き分け 貯金12
順位:首位(2位と0.5ゲーム差)