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僕のペナントライフ  作者: 遊馬 友仁
19/78

第2幕・Respect(リスペクト)の章〜①〜

 5月11日(木)


 〜御子柴奈緒美(みこしばなおみ)のさざめき〜


「――――――それで、そのサポーター君との約束は、どうなったの?」


 平日の午後9時近くにもかかわらず、盛況な客入りの韓国料理店の個室で、御子柴奈緒美(みこしばなおみ)は、友人たちによる質問攻めにあっていった。


 興味津々に、近況をうかがおうとするのは、遠山京子(とおやまきょうこ)。奈緒美とは学生時代からの仲である。

 

「社会人2年目ってことは、私たちより四つくらい年下だよね? どんな男の子? 似ている有名人はいる?」


 同じく、学生時代のサークル活動を通じて知り合った葛西美紀(かさいみき)は、奈緒美の話しから、中野虎太郎(なかのこたろう)の人となりに興味を持っているようである。


「お二人とも、()()()過ぎです! ナオミさん、困ってるじゃないですか!? ところで……結論として、そのコタローさんは、()がありそうなんですか?」


 同席する二人をたしなめつつも、自分自身も好奇心が抑えられない、といった感じで質問するのは、吉野公香(よしのきみか)。奈緒美が最初に勤めた会社の後輩で、韓国スター好きという共通点から、アイドルファンが集うこのメンバーに加わっている。


 友人たちの矢継ぎ早の質問に、奈緒美は戸惑いながらも、目尻を下げた微苦笑で応じた。


「中野くんからは、ゴールデン・ウィークの予定を聞かれたんだけど……イベントの準備や撤収の日程と重なっちゃってて……だから、まだ、次にいつ会うかは決まってない……」


「う〜ん……中野くんが似ている有名人かぁ……強いて挙げるなら、キンプリの岸優太(きしゆうた)くんとか、フィギュアスケーターの宇野昌磨(うのしょうま)くんかなぁ?」


 彼女が、学生時代からの仲である友人二人の質問に応えると、後輩女子が、


「岸優太くん系統の容姿ってことは、俳優の伊藤淳史(いとうあつし)さんとも似てたりします?」


と、茶々を入れてくる。


「まぁ、そう言えなくも、ないかな……?」


 後輩の質問に小首をかしげながら答える奈緒美。


 コース料理のチーズタッカルビの「()め」に投入されたサリ麺は、盛り上がるトークの中、すっかり冷めて、チーズとともに固まっている。

 

 鍋のようすを気にしながらも、奈緒美の返答にうなずいていた京子は、

 

「そりゃ、そんな男の子と()()()なら、ナオミも上機嫌になるか」


と、困惑気味ながらも機嫌よく語る友人のようすを眺めつつ、

 

「でも、そんな()()()()に、彼女がいないとか、ありえるのかな?」


と、つぶやく。


「あっ、たしかに……」


 京子の言葉に、美紀も同意する。


「彼女がいる男性なら、ナオミさんを(うち)まで送り届けたりしない、ってことですか?」


 公香(きみか)がたずねると、京子と美紀は同時にうなずく。


「もちろん、それだけで、判断できるワケじゃないけど……私が彼女なら、酔っ払った知らないオンナを家に送る彼氏はイヤだな……」


 京子の言葉に、今度は美紀と公香(きみか)がうなずいた。


「ナカノくんだっけ? ますます、どんな男の子なのか、気になるな〜。ナオミ、彼には、他にどんな特長があるの? アナタと趣味や話しがあったりするの?」


 美紀は、より一層、興味を持ったという感じで、奈緒美にたずねた。


「趣味といえば、私がももクロちゃんの『吼えろ』を歌ったとき、コールを入れてくれたんだよね。ファン以外には、あまり知られてない曲なのに、どうして、知ってたんだろう?」


 彼女の言葉に、一同はナニかを感じ取ったように、一斉に「あっ…(察し)」という表情をつくる。


「それは、やっぱり、ももクロのファンか、アイドルオタクってことじゃないの?」


 苦笑いしながら、自らの見解を語る京子に、再び美紀と公香(きみか)が、大きくうなずく。


「あ〜、部屋はアイドルグッズやポスターでいっぱいとか? 有り得そう……」


「男性も、最近の若いアイドルファンは、見た目だけじゃ、わかりにくくなってますもんね……」


 それぞれが私見を述べつつ、『推し活』に余念がない自分たちの趣味を棚に上げた三人は、


「うわ〜引くわ〜」


と、声を揃える。


「ちょっと! 知らない男性の趣味を勝手に決めた上に、論評するとか、いくらなんでも失礼じゃない!?」


 奈緒美が声を上げると、京子と美紀が、


「でもね〜」


と、反応したあと、公香(きみか)が、たずねる。


「ナオミさんは、ナカノさんが、アイドルファンじゃないって思う理由があるんですか?」


「う〜ん、あのあと、ももクロちゃんの『行くぜっ! 怪盗少女』とか『走れ』を歌ったときの反応は、サッパリだったんだよね……だから、少なくとも、ももクロちゃんの熱心なファンってことは無いと思うんだ……」


 奈緒美は、後輩の質問にそう答えたあと、彼女が疑問に感じていたことを付け加えた。


「あと、私が、リビングのソファーで横になっているとき、中野くんの鼻歌が聞こえてきたんだけど……『きりひらけ しょうりへのみち』とか、なんとか……あの歌、なんの歌なんだろう?」


 先輩の言葉に反応した公香(きみか)が、


「気になるなら、調べてみましょうよ!」


と言って、奈緒美にスマホでの検索をうながす。


 すると、ほぼ同時に彼女のスマホにメッセージアプリの着信通知が表示された。


 ==============


 夜、遅くに申し訳ありません


 今週の日曜日、御子柴さんは、

 なにか、ご予定はありますか?


 ==============


 ==============


 御子柴さんのご都合が良ければ

 一緒に行きたい場所があります

 

 ==============


 中野虎太郎からのメッセージを確認した四人は、個室内でお互いに顔を見合わせた。

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