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【改訂版】第七皇女は早くも人生を諦めたようです  作者: 蓮実 アラタ
1章 仕返し編
6/30

5 第七皇女は餌を持ち込む

 

 魔術塔は皇城の西の離宮の一角に存在し、普通に歩いていくとかなり時間がかかる。

 そこで近くにいた風の精霊にお願いして魔術塔まで一気に運んでもらった。精霊と自由に交流できる力はこういう時すごく便利だと思う。


 誤解のないように言っておくと勿論お礼はしているし、いつも頼んでいる訳ではない。私はズボラではないもの。今は時間が惜しいのよ。緊急事態だから仕方ないわ。うん。


 私は精霊にお礼として魔力を分け与え、ついでにひとつ頼み事をして塔の最上階へ続く階段を登っていた。


 塔の中は灯りの魔具が一定の距離を保って置かれているおかげで明るかったが、物々しい雰囲気が漂っていた。

 そのまま登り続けること数分。


 階段を登り切った私の前を一際頑丈そうな扉が出迎えた。

 この魔術塔の最上階は皇城のどの部分よりも頑丈な造りになっており、たとえ火事が起きたり地震が来ても崩れないのだとお姉様が自慢していたっけ。

 目の前のこの頑丈な扉も防音仕様になっていて、外からの音は決して内部には響かない。


 だから今ここでノックしたところで中には響かない。分かってはいるのだがとりあえず礼儀として扉を二回叩きノックする。

 当然内部にノック音は響かないので扉もあかない。


 そこで私はまず一歩下がり扉の斜め右に備え付けてある魔具に向かって声をはりあげた。


「レスティーゼ・エル・ヘルゼナイツが参りました。お姉様に用事がありますの。通してくださいませ!!」


 私の声に反応してガチッ! と音がして扉が開いたかと思えば、


 ──ドシャッ、ガラガラ……ガチャン!!


 何か物が雪崩になって落ちたような効果音の後に、今度は手動で扉を開けながらのんびりとした声がかけられた。


「あれ? レスじゃない。今は誕生日パーティのはずだよね? どうしたの?」


 中から白銀の髪を無造作にひとつにまとめ、「ツナギ」と言うらしい独特なシルエットをした作業着を着た女性が現れた。

 女性は全身が埃まみれで普段は白い綺麗なはずの頬も黒く汚れている。


 女性の後ろからチラッと見えた扉の向こうの部屋は、予想通り物が落ちたようであちこちに雪崩の被害の残骸が散乱しているようだ。


 メルランシアお姉様はその残骸を気にもとめてないようで突然の私の訪問に首を傾げている。相変わらずのマイペースぶりに私は頭を抱えたくなった。


 これが一国の皇女だと言われてどのくらいの人が信じるだろうか。誰も信じないわね……。


「お姉様……相変わらずですね……」


 まずは用件より片付けが先だわ……。

 私はため息を着きながらやれやれと首を振った。



 *



「あー、助かったわぁ。ありがとねレスティーゼ」

「……それほどでも」



 お姉様の部屋で()()()()()()()精霊達に手伝ってもらいながら魔術を駆使して一気に雪崩の残骸を片付けた私に、お姉様はひたすら感謝を述べる。


 「ふいー、スッキリしたぁ」


 バスタオルを片手にほっこりした表情を浮かべるお姉様。


 部屋を掃除する間にお風呂に入ってもらったため、メルランシアお姉様は本来の輝くような美しさを取り戻していた。

 つなぎ服は全てまとめて洗濯に出したため、今はゆったりしたデザインの水色のドレスを身にまとい、洗ってサラサラになった白銀の髪はいつものようにポニーテールにまとめられ、背に流れている。


 うん、こうしていると第二皇女らしく見えるわ。


 私がウンウンと感心していると、少し青みがかった銀色の瞳をこちらに向けながら二の姉様は私に問いかけてきた。


「それで、パーティを抜け出してどうしてこんな所に来ているの?レスティーゼ」

「セイルに任せて出てきたのですよ。それよりお姉様。お姉様が作ってくださったあの録音と録画の二機の試作魔具を早速活かせそうな機会(チャンス)がありそうなんですけれど」


 訝しげに私を見ていた二の姉様はこの一言で目の色を変えた。


「なんですって!? 早速テストできるの? いつ!? ちょっと、その話詳しく聞かせて頂戴レスティーゼ!!」



 銀青の目をランランと輝かせ鼻息を荒くする第二皇女(メルランシア)の様子を見て私は内心でほくそ笑んだ。


 ――よし、釣れた。


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