転生!
不思議な浮遊感と脱力感。そして真っ黒い景色に時々現れる刹那の閃光。天界にいては終ぞ経験することの無かったであろう、現象はフォルスの胸に沸き立つ興奮を与えた。
これからどんな神生もとい人生を謳歌しようか。そんな事を考えている矢先、魂が肉体に受肉したのを感じる。揺蕩う此処はさながら海のようだ。
あと一年前後で、フォルスは人界の大地にて産声をあげることになるだろう。
──だが。
「オギャーオンギャァー!!」
何故こうなった。
「ごめんね……貴方を護にはこれしかないの」
「オギャーオンギャァー(いやちょっと、お母さん?!なんで森の茂みで意味深な発言を)」
赤子の瞳に写っているのは、フードを深く被った男女。雨に濡れた彼らは酷く憔悴しきっているようにみえた。
「アリア……追っ手が近くまで来てるぞ」
「おぎゃぁぁあ!?(追っ手!?)おぎゃんぎゃあ!!(ちょっと、え!?どゆこと?)」
「ごめんなさい。ここは登山者達が良く通るわ。だから、きっと貴方を」
「アリア!!」
「わかってるわ。じゃあね、愛しの我が子供」
カゴの中に入れると、男女は松明の方へと走っていった。
「……おぎゃ(詰んだんだが)おぎゃおぎゃ(まじ詰んだんだが)おぎゃ……(産まれて速攻森に捨てられたんだが)」
夢に見たスローライフが、デットライフになりそうな予感に身震いを禁じ得ない。──否。
「オンギャァ!!(これはおしっこだ)」