表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/3

闘神は隠居したい

 宇宙(そら)に最も近い場所──天界・クローラ。悠久の時が流れるクローラ(ここ)は、穏和と調和の取れた正に平和な世界。


 ──だが、そんな天界に一度だけ、熱がこもる日がある。


闘神祭(ウルティムス)


 闘神の名を連ねるもの達による、闘技場を使ってでの演武。この日だけは、血と汗と涙と歓声がクローラを震わせるのだ。


「はいー次の方ー」

「……本当に死んじゃったんですね」

「あなたはートコマさんですねー」


 消沈しきった声を出したのは、制服を着た男性だ。視線を伏せて立つ彼は死人。ここは闘技場とは少し離れた場所にある、円環の理(セフィロト)。死んだ者を転生か成仏か選ばせる場所である。


「ですねぇ~」と、白髪の男性は、平坦な声で業務をこなす。


「そりゃもー豪快にですねぇ~。でぇ、転生と成仏とどちらか選べますがどーしますかあ?」

「豪快ッて……どんなですか?」

「なんか。家にいる時に後ろから彼女にブスッとですねぇ~。その後は滅多刺しっすねぇ~」

「滅多……」


 何かを思い出したかのように頭を抱え、顔には苦悶の表情が浮かび上がる。断片的に記憶が蘇るのはよくある話だ。


 死人は呼吸を乱しながら、言葉を紡ぐ。


「最後のメール……続く改行……最後の言葉……ごめ──」

「成仏っすねー地獄行き確定ーっすね~」

「え、ちょ、ま」


 指を鳴らした直後、目の前の死人は消える。


「はい次の方~」

「俺は死んだのか?」


 眼鏡をかけた男性。先程の死人とは真逆で、毅然たる態度をとっている。それこそ英雄の一端──


「そうですね~で、成仏と転生、どちらにしますか?」

「は?なんで?」

「はい?」

「そんなん、俺が決めなきゃいけない義務があるん?」

「一応、決まりですのでぇ~」

「もちろん抵抗するで?────こぶ……」

「はい、転生ですね~。魔王に抵抗してっすね~」


 ──パチン。


 今日は闘神祭(ウルティムス)。早く業務をこなし、祭りを楽しみたい。だが、こんな時に限ってよく分からない魂が列をなす。


 さっきなんかか「その心汚れてるね!?」だとか、女性によく分からない説教をうけた。


 短い溜息を吐き、それでもあともうちょいだと気合いを入れ直す。


「次の方ー」

「ウス」


 顔を布で覆った男性。上半身は何故か(・・・)裸。むき身になった肉体は隆々とした筋肉で出来ている。


「えーっと貴方は……」


 机に並べられた資料には見当たらない。


「ワタシ、ハ、テンセイシマス!!」

「…………」

「テンセイ!シマス!!」

「テン──」

「貴方、フォルス様……ですよね?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ