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怪人  作者: ウツウツ
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第4話

 爆発した路地に警察官が駆けつけた。


「危ないので離れてください!」


 警察官は野次馬に注意すると、懐中電灯をつけて黒煙が立ち込める路地に入っていく。


(ん?人影?負傷者か!?)


「誰かいますか?大丈夫ですか?」


 返事はない。路地を進む警察官。


「あれ?誰もいない…?」


 ネクロナイトはマンホールの中に隠れていた。ネクロナイトは不審人物が溶け出して怪物の一種だとわかった瞬間に、爆発物に向けてネクロナイトの防御技『冥府神の守護(ハデスプロテクション)』(盾が大きくなり体を防護する技)を発動したおかげで致命傷を避けたのである。


(危なかった。少し負傷したか)


 ネクロナイトは盾で守りきれなかった脚等を負傷していた。傷は徐々に治っていく。


(人の姿に戻ってもこの傷を見られたら必ず職務質問される。隠れるしかなかった)


 マンホールの底の方を見る。


(このマンホールは下水に繋がっているようだ。警察は爆発の調査等をするだろうからこのマンホールからはしばらく出れない。下水を通って他のマンホールに出るしかないか)




 研究室で考えるライヤー。


「なぜだ!?なぜゴーリアーに続き、今回の場所にもネクロナイトが現れたんだ…!計画を知っていた?まさか内通者が?我らに逆らえばどうなるか知らない愚者はここにはいないとは思うが…可能性は0%ではない…」


 女性研究員の一人がライヤーに話しかける。


「【怪人】…いえ、【サタンの子】には【サタン】を探知する能力があるのではないでしょうか」

「ほう…天使(エンジェル)…君の考えを聞かせてくれ」

「はい。昆虫等に見られる集合フェロモンは同種の他個体に対して誘引作用を示し、集団形成を解発する化学物質です。【ルシファー】や【サタン】からも化学物質が分泌されることがわかっています。【サタンの子】はこれを利用して【サタン】を探知している可能性があります」

「なるほど、集合フェロモンか…。確かに【ルシファー】も【サタン】も未知の部分が多い。だからこそ研究が必要だ。しかし、その理屈だと【サタン】にも【サタンの子】を探知させることができる可能性もあるということか?」

「未知の生命体である【ルシファー】にデジタルデータを読み込ませることにより誕生したのが【サタン】です。ですが、【サタンの子】は【サタン】と【Ultimater】…つまり生物同士が融合して誕生した生物です。ネクロナイトは融合時にその形状を大きく変化させています。これは新たな生物種の誕生、つまり変異種である可能性が高いと考えられます」

「つまり、探知能力は変異種特有の能力だと?」

「はい。ご存知の通り、研究所内で【サタンの子】を何体か誕生させましたが、形状が変化しない個体もありました。また、いずれも【サタン】探知能力は有していませんでした。しかし、融合前の【サタン】にも【Ultimater】にも見られなかった能力を有している個体は確認しています」

「確かに。人間と【サタンの子】に自由に変化できるのも新たな能力だな」

「はい。このメカニズムはわかっていませんが、そもそも【サタンの子】は近縁の生物種以外との多くの遺伝子の組み換え、真核生物が本来行う有性生殖とは異なる極めて短時間での多細胞の融合等、人知を超えた現象を起こしています。【ルシファー】や【サタン】もそうですが、そういうものだと割り切って考えた方が研究は捗るかと思います」

「わかった。君がいなければUltimateデバイス開発の成功も、【サタン】の誕生もなかっただろう。私は君の頭脳を信じるよ、天使(エンジェル)

「…ありがとうございます」

「では、その説が正しいと仮定し、次の実験を行う。仮に広範囲の探知が可能だとしても、要は間に合わなければいいのだろう?」


 他の研究員が話しかける。


「同時に複数体発生させないのはなぜですか?」

「…わからないのか?多数の【サタン】に警察も自衛隊も【サタンの子】も対応しきれなかった場合、どうなると思う?」

「【サタン】が増殖して、日本が滅びるかもしれない…ということですか?」

「その通りだ。日本が国家として機能しなくなり、その国土には大量の【サタン】が蔓延ることになる。他国は…世界はどうすると思う?」

「日本ごと…【サタン】を殲滅する可能性がある…。それに私達も研究どころではないですね」

「そう。そして現在、研究設備が整っているのは日本だけだ。これは【ルシファー】をただの危険生物だと判断し、研究施設を日本にしか設置しなかった私のミスだ。【サタン】による世界の支配…地球の保護は、研究を進めてあらゆる準備が整ってから行う」

「わかりました」

「そして下らないことで私の時間を使ったお前のような無能は不要だ。Hellへ連れていけ」

「え!?ちょ、ちょっと待ってください!や、やめて!助けて!」


 ライヤーに質問した研究員は他の研究員に部屋の外へ連れていかれた。天使と呼ばれた女性研究員は悲哀の表情を浮かべている。




「○○島AR観光ツアー参加者の皆様はこちらにお集まりくださーい」


 ツアーガイドが声をかけると船から降りた観光客がぞろぞろと集まる。


「ここが…MIRAIさんの住む島か…」


 観光客の一人、仏頂面の東郷 一狼(とうごう いちろう)(31歳)が呟く。東郷の巨体にツアーガイドは驚く。


(この人大きいー!190cm…2mくらいある?スポーツ選手だったりして…)


 ツアーガイドが客に説明を始める。


「ここ、○○島はARアーティストのMIRAIさんが住む人口1000人程の島です。この島にはここでしか見られない彼女の作品が仮想空間に多数展示されています。MIRAIアプリでカメラを起動すると、彼女の作品とこの島の美しい自然が織り成すアートが閲覧、撮影できます。まだインストールされていない方は今すぐインストールすることをお勧めします。メタバース等のVRとは異なる魅力を持つAR…拡張現実の世界へ皆様をご案内します」


 観光スポットを巡る観光客達。一通り観光が終わると、モニターが設置されているイベント会場に案内される。


「さぁ、皆様お待たせしました。いよいよ、MIRAIさんによるアートライブ、つまりMIRAIさんが作品を創るその瞬間を!生で見ることができるイベントが始まります。それではMIRAIさん、お願いします!」


 MIRAI(28歳)が客の前に姿を現すと観光客は拍手や歓声で迎える。


「こ、こ、こにちは。は、は、話すの苦手…なんで…描きます!」


 明らかに緊張しているMIRAIだが、ヘッドマウントディスプレイを付けると人が変わったように落ち着きを取り戻し、仮想空間に作品を創っていく。作品はモニターに映し出されている。


 観光客達はスマホを向け、作品が創られていく様子を見たり、撮影したりしている。東郷は目から涙を溢れさせながらライブを見ていた。作品が完成すると拍手が沸き起こり、ヘッドマウントディスプレイを外したMIRAIは挙動不審になっていた。ガイドが客にマイクを向け、感想を聞いていく。


「…じゃあ次はこちらの方、涙を流すほど感動していたようですがいかがでしたか?」


 マイクを向けられた東郷が涙を拭き、答える。


「作品に感動したわけではない」

「えっ!?」


 批判にも聞こえる発言にガイドや他の客が驚く。MIRAIが口を挟んだ。


「じ、じゃ、じゃあなんで、な、ない、泣いてたんですか?」

「…。…三年前に病気で亡くなった妻がMIRAIさんの大ファンだった。妻にこの作品を見せてあげたいと、そう思ったら…自然と涙が溢れていた。…生前、妻はよく俺にMIRAIさんの作品を見せ、その良さを語っていた。二人でMIRAIさんの作品をたくさん見た。俺は子供のようにはしゃぐ妻を…美紀みきを見るのが…好きだった…。武骨な俺の心を…いつも…温かくしてくれるのが…み…美紀だった…」


 東郷は再び感傷に浸り、声を震わせた。周りの人も同情して聞いている。東郷は深呼吸をして話を続ける。


「…だが…妻が亡くなってから俺はMIRAIさんの作品を見れなくなった。見ると妻が隣で話しかけてくるような感覚になって…辛かったからだ。…でも、最近…やっと見れるようになった。だからこのツアーに参加した。帰ったら撮影した写真を見せ、今日のことを報告したいと思う」


 ツアーガイドが頷きながら言う。


「そんな想いがあったんですね…。きっと奥様も天国から見ていらっしゃいますよ」


 MIRAIは質問を重ねる。


「す、す、すみません。わ、わかりました。も、もう一つ…あ、あ、あなたは、わ、私の作品、ど、どう思うんですか?」

「…俺はアートのことはよくわからない。だが、MIRAIさんの作品はどれも美しいと思う」

「!!……あ、あ、あなたの…な、名前は…?」

「名前?東郷 一狼だが…」


 MIRAIは驚いた表情で固まる。ツアーガイドが話しかける。


「MIRAIさん?MIRAIさーん?大丈夫ですか?」

「あ、は、はい。わっ、わかりました。と、と、東郷さん、あ、ありがとう、ご、ございます」


「ぐわぁーっ!!」


 悲鳴が聞こえた方を見ると、島民が大きな犬のような怪物に襲われている。


「た、たす…け……」


 襲われ、噛みつかれた島民がゲル状の物体に包まれみるみる骨になっていく。観光客は悲鳴を上げて散り散りに逃げる。


(な、な、なんですかあれ!?ニュースでやってた怪物!?こ、こ、こんな島にまで現れるなんて…。と、とにかく、に、ににに、逃げないと!)


 MIRAIは近所の住民に注意喚起しながら駐在所の方へ走る。


「み、み、皆逃げてー!か、怪物が出たよー!」

「怪物?MIRAIちゃん、どうしたっていうんだい」


 スーパーの前を歩いていた買い物客の島民がMIRAIに声をかける。


「おばさん!早く逃げて!犬の怪物に食べられちゃうよ!」

「怪物って、あのニュースでやってた…」


 ガッ!怪物は買い物客に飛びかかり、首に噛みついた。MIRAIは逃げ出し、買い物客はみるみる骨になっていく…。


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