ナイトツーリング
幸い、イグニッションコイルは汎用品ではあるが新品で販売されていたので購入することにした悠。交換も済ませ無事3発打つようになった。
仕事終わり、悠に呼ばれ家に到着した俺。そこにはバッテリーが充電されていた。
「どうしたの、これ」
「ちょっと走ってみようかと思って」
満充電でどれくらい走れるのか気になったみたいで、自走不可能になった時の為に軽トラで付いて来てほしかったらしい。
「とりあえず交通量の少ない道を選んで走るようにするから付いて来て」
「それはいいけど、どこまで走れるかねぇ」
「たまに止まって電圧計りながら行こうと思ってるから」
「分かった、じゃあある程度広いところによろしく」
そうして悠はサンパチ、俺は軽トラで出発することにした。万が一の為、軽トラにはラダーを載せておくのも忘れない。
「今は、14.6Vだから」
「了解、次に止まってどれくらい減ってるかだね」
「それじゃあ行くよ」
軽快に走り出すサンパチ。3発打って奇麗なトリプルサウンドが聞こえてくる。当たり前だが今の所問題無く走っている。
信号に掛かったので横に並ぶ。
「どんな感じ?」
「今の所大丈夫そう」
「どこら辺で一回止まる?」
「トンネル手前の広場にしようか」
「了解」
信号も変わるので目的地を決めて話を切り上げた。
家を出て20分程走行してもうすぐ目的の広場だがその目前で異変が起こった。
(なんだかテールランプの光量が落ちてきてるような)
明らかに暗くなってきたテールを見て心配になる。速度も少し落としてきているのでヘッドライトも同じように光量が弱っているのだろうと予想する。
やっとの思いで広場に到着して、すぐエンジンも停止した。もちろん自分で止めた訳では無い。
「20分かぁ」
「思った以上に距離走れないね」
「昼間ならまだライト切れるから少しは伸びそうだけど」
「それでも微々たるものでしょ」
想像よりも短い航続距離に悩む。この当時のバイクはライトのオンオフが出来るので多少の節電は出来るがそれでも厳しいものがある。
「11.7V」
「きっちり消費してるね。やっぱり早くオルタネーター構えないとだ」
「早く届かないかな」
「は?」
突然の報告だった。届かないかな、という事はもう購入したのだろうか。
「言ってなかったっけ。こないだヤ○オクで出品されてて状態も良さそうだったから入札したら落とせたんだよね」
「めっちゃ初耳なんですけど」
「じゃあドッキリ成功という事にしといて」
いきなりドッキリを掛けられた事になった。確かにオルタネーターを探し始めて1ヶ月。何かしらの進展があってもおかしくは無かったが。
「なら今晩無理に走らなくてもよかったんじゃ」
「それはほら、バイクがあると走りたくなるでしょ」
「そこは我慢してゴ○ラ乗れよ。そうしたら俺もバイクで来れたのに」
「今はサンパチの気分なんだよ。逆に単車欲しくなったんじゃない?」
「…、俺はいいかなぁ。高速乗れないけど今のでも3桁は軽く出せるくらいには早いし付いて行けるよ」
「そこは単車で揃えて走りたくない?」
「俺はブン回して乗りたい派だから。今以上排気量が上がると楽しめなくなるからパス」
予想はしていたけどやはり購入を進めてきた。これ以上バイクを増やす気は無いのでお断りしておく。それよりも。
「サンパチ載せようぜ」
「それもそうだね」
「でもさ、この時間にバイク載せてると傍から見たら盗難だよね」
「カバーでもしてたら完璧かな」
「お巡りさん、こっちですよー」
俺達は他愛もない会話をしながらサンパチを軽トラに載せ帰路に着いた。
(今日はドッキリ掛けられたし黙っとくかな)
そんな事を考えながら。