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勇者なんだけど、世界がうざいから大魔王に転職することにした。

 最終回です。

 クズ──では無く、ルイの父親であったgmksが完全消滅してからしばらく年月日が流れ。

 絶対的脅威であった魔王、並びに魔物を生み出す瘴気が消え失せたこの世界は、大きな変化を迎えることとなった。

 


 そんなある晴れた日のこと。はじまりの街『ビギン』は、かつてないお祝いムードに包まれていた。


「それでは、誓いのキスを」


 豪勢に飾られた教会の一角。

 ステンドグラス越しに光が差し、幻想的な空間に立つ男女が一組、その声に従い接吻を交わす。


 方や、照れ臭そうに頭を掻く新郎。

 方や、頻りに指輪を触り顔を赤くする新婦。


 2人に接吻を促した張本人は、満足気に微笑むと、両手を広げ口を開いた。


「今ここに、永遠の愛を誓った夫婦が誕生したと。女神である私が宣言する!」


 彼女の後光と共に、街中に響き渡る祝福の声。


 晴れて夫婦となった2人──プラソンとシリアスは、その勢いを前に肩を震わせた。



ーーー



「えー、あー…はい。ご出席の皆様、今日は俺達の結婚式に来ていただきありがとうございます」

「女神様に国王陛下、そして魔王国(・・・)の方々。皆様と共に杯を交わせたこと、深く感謝しております」


 教会に併設された会場に響く新郎新婦(プラソンとシリアス)の声。乾杯の杯を交わし、和やかな空気が流れる。


 魔王討伐。その一報はまたたく間に広がり、同時にその仲間の存在を植え付けることとなった。


 魔王を屠りし勇者、ルイ。

 献身的な勇者の妻、ユナ。

 フォースの聖女、クリア。

 魔族(・・)侯爵、ブラインド。

 そして、女神エスポワールこと、エスプリ。


 人族も、魔物も、そして女神すらも入り混じったその名に連なり、ただの人族であった2人は、誰が決めたわけでもなく、こう呼ばれたのだ。


 剣聖と賢者、と。



 閑話休題。


 そんな2人の挙式が終わり、要人の参加する披露宴。忙しなく入れ替わる人々に、2人が音を上げそうになった刹那、不意に司会のギルドマスター─キャンプ(プラソンの姉)が全員の注意を引きつけた。


「皆様の顔合わせも終わったところで。ちょうど最後のお二人が到着したとのことです」


「最後のって…」

「もしかして…」


 キャンプの言葉に、シンクロした声を漏らす新郎新婦。

 2人の視線が向かった扉が開き、見知った2つの人影が、その姿を現す。


「順序は前後してしまいましたが、これより友人代表のスピーチになります」


 周囲の流れをぶった斬り、そう宣言をしたキャンプ。

 彼女から拡声の魔導具を受け取った人影達は、互いに顔を見合わせると、その口を開ける。


「えー、ご紹介に預かりました。新郎の友人代表を務めさせていただきます。ルイです」

「同じく、新婦の友人代表をさせていただくユナです」



ーーー



「──それで、お前は今後どうするんだ、ルイ?」


 式と披露宴が終わり、参加者が帰った後。

 女神を除く最初期の4人だけとなった教会内に、プラソンの声が響く。


「どうって…まぁ、まずは民衆のコントロールかな。僕らみたいに知性を持った上位魔物を『魔族』と改名したはいいものの、完全に浸透した訳では無いからね…人族と同程度まで力が落ちたのも実感してないみたいだし、統治は母上とブラインドが──」

「ちょ!ストップ!ストップだルイ!俺に政治の話をされてもわからねぇっての!」

「はは、政治だってわかったんだ」


 おい、と。ノリツッコミを交わし、どちらともなく笑い合う2人。

 しばらく笑い明かした2人は、その足で教会外に踏み出すと、月明かり照らす夜空へとその視線を見上げる。


「…そうだプラソン」

「ん?」

「僕、父親になるんだ」

「ほーん、そうか──ってえぇ!?」


 ルイの唐突な言葉に、驚きの声を上げるプラソン。

 してやったり、と笑ったルイは、ヘッドロックをかます彼の腕を軽く叩くと、愉快に声を弾ませる。


「で、誰だ?やっぱ正妻のユナちゃん?それとも大穴の女神様とか?」

「いやー…その」

「なんだよルイー!勿体ぶらずに言えっての」

「…全員」

「全員」

「うん」

「そうか」

「うん」


 一拍遅れて、当然のように再び驚くプラソン。友人であるユナ、クリア、ブラインド、エスプリ(エスポワール)を脳裏に浮かべた彼は、照れ臭そうに笑う親友(その夫)をどついてみせると、自分事のように笑みをこぼす。


「そっかー…一気に4児の父となると大変そうだな」

「そうなんだよね。母上が手伝ってくれるとはいえ、平和に暮らすには解決しなきゃいけない問題が多すぎるし…」


 だからさ、と。

 不意に、そこで言葉を区切って天に向かって手を伸ばすルイ。

 ただ一瞬、見計らったかのように月を隠した雲が、その隙間から溢れた月光を爽やかに笑う男へと差し当てる。




「勇者なんだけど、世界がうざいから大魔王に転職することにした」




 ー ー ー 完 ー ー ー

 一途な愛を永遠に。(挨拶)


 皆様おはこんばんにちようございます、赤槻春来です。

 本作「魔王の息子」をここまで読んでくださりありがとうございました。

 最初のほうに書いた通り、完全にノリとよくわからないテンションではじめた作品です。本作では、並行して書いている他作と違い、できるだけギャグやコメディよりにしてサクッと読めるものを作ろうと、途中からプロットとテンプレを作り上げていきました。

 私情もあり、後半駆け足になってしまいましたが、少しでも読者様の笑顔に貢献できていれば良いなと思っています。中でもクズ(魔王)関連に関しては、できるだけ小物で別に死んでも誰も困らないようなキャラクターになるよう頑張ったので、そこで笑っていただけたら嬉しいです。(実は私自身第一話で付けていた名前すら忘れてた)


 なにはともあれ、2020年に書き始めてから5年以上、これにて本作は完結になります。

 読んでくださった皆様、そしてこんな不定期な駄文に付き合っていただいた方々に心より感謝を。

 私情ですが、本作は12/20よりカクヨムにも転載することにしました。(一日置きに更新、内容はこちらと全く変わりありませんが…)

 本作が少しでも面白い、笑顔になれたという方は、ポチポチっとしていただけるとありがたいです。((作者)がとても喜びます)


 改めまして、ここまで読んでくれた皆様方、ご精読ありがとうございました。

 また、何処かでお会いできたら幸いです。


 それでは皆さん、ごきげんよう。


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