これは魔王様(笑)も…
62話です。
互いの秘密を曝け出し、より絆を深めたルイ達一行。
度々黒煙を上げる魔王城に潜入し、襲撃に乗じて侵入した彼等は、ボロボロになった広い廊下を進み、魔王討伐へと乗り出していた。
「──にしてもルイ、本当によかったのか?親父さんなんだろ?」
「うん。別に構わないよ。そもそもアレが魔王になったのも、父である先代魔王を倒したからだし」
それに、と。共に歩む仲間を一瞥して、「いるだけ害だしね」と付け足すルイ。
頼もしくも、種族による価値観の違いを目の当たりにしたプラソンは、堪らず苦笑を浮かべると、そんな彼の隣に並びに走る。
「もし、お前が愚王になったら、その時は俺が『勇者』になってやるよ」
「あぁ、是非お願いするよ、プラソン。…僕も、そうならないように気を引き締めなきゃね!」
どちらともなく拳を突き合わせ、屈託の無い笑みを交わす。
何処までも続くように思える、長い長い廊下。
元の居場所でもあり、彼等を先行していたユナとエルピスは、不意に頷き合うと、続くプラソン達へと視線を向ける。
「旦那様、皆様。そろそろです」
彼女の声に反応して、各々返事をするルイ達。
幼少期より、良い思い出の無い扉へたどり着いたルイは、仲間達と頷き合うと《魔王剣アボミナブル》でソレを一刀両断した。
ーーー
「ようやく見つけたぞ魔王ッ!世界の為にさっさとくたばりやがれッ!」
騒がしさの消えぬ魔王城、その玉座の間にて。
クズが肉塊に八つ当たりをしていた最中、不意に飛んできた凄まじい斬撃の直後、そんなプラソンの声が空気を震わせる。
「──くたばれ、だと?何をふざけ──ヴッ゙…」
ポタポタと、クズの足元に広がる赤い水溜り。
尊大な声を上げようとした刹那、先程の一撃により消し飛ばされていた左腕に気付いたクズは、咄嗟に燃やし止血をする。
「チッ…いや、人族の勇者か。フ、フハハハッ!流石だ勇者よ。不意打ちとはいえこの俺の片腕を飛ばすとはなッ!だが──ん?」
声の主に向かいそう言って、この期に及んで虚勢を張ろうとしたクズ。
額に汗を滲ませ、明らかに空元気であった彼は、隣に並ぶ人物がルイだとわかった瞬間、下品に口元を歪め、翻って偉そうな態度をみせる。
「よく俺の前に姿を現せたな愚息。もしや勇者に泣き付いてもらったのかァ?フッ、ちょうどいい。さぁその連れてきた女共を俺に渡せ。こっちはイライラしてたんだ。父親で…魔王である俺が言ってるんだぞ?だからさっさと──ってエルピスッ!?何故だ!?何故出てったはずのお前がここにいるッ!?」
クズ──否、魔王コンプラストは、ルイと共に乗り込んだ正妻を視界に捉えると、混乱した様子で取り乱した。




