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55/64

市民って、どうやって定義されるんだっけ…?

 55話です。

 フィフスの街を騒がせる、頻発する謎の失踪事件。

 宿で一夜を過ごした翌日。正式にその依頼を受けたルイ達5人は、解決の糸口をかざすべく、各々聞き込みを行っていた。


「失踪ねぇ…そういえば、最初の失踪者はこっちに帰化した商人だったかしらね」


 住宅街の一角。ルイの質問に対して、顎に手を当てそう語る老婆。


「帰化した…?外から来たってことですか?」

「あぁ…でももう何十年も前だし、今じゃもうこの街の住人だよ。若い子たちは知らないだろうしね」


 あたしが知ってるのはこれくらいかな、と。そう言葉を残して、老婆は帰路につく。礼を言って、手を振り彼女を見送ったルイは、懐からメモを取り出すと、書き込んだ情報を見比べる。


(失踪事件が始まったのは2週間くらい前。奇妙なことに、どれも存在そのものが最初から無かったかのように唐突に姿を消している。…教会が発光したのと同時期なのは気になるけど、かといって関連性も無さそうですだしなぁ)


 一人そう考えて、一先ず他4人の情報を待つことにしたルイ。彼は、日光に照らされたメモをしまうと、宿の方へ街中を駆け抜けた。



ーーー



 依頼開始から早3日。

 あらかた住民への聞き込みを終え、今ある情報を共有したルイ達は、宿の一室で地図を広げ、取り囲むように集まっていた。


「──それで、何か新しい共通点に思い当たった人は?」


 シリアスの一言により、再びシンとなった室内。

 それもそのはずである。彼らが集めた情報は全て、失踪した人物の生い立ちばかりであり、失踪の仕方以外に共通事項がなかったのだ。


 一向に話が進まず、全員で唸り声を投げ始めた刹那。

 不意に、ルイに近づいたクリアが紅茶に手を伸ばすと、角砂糖がボチャボチャと、水しぶきをあげてカップに落ちる。


「きゃっ──」

「うぉ!?」


 わざとらしく、ルイに抱きつくクリア。「どさくさに紛れて羨m─旦那様から離れなさい!」と、逆隣にいたユナが抗議し始めるのを他所に、ルイは特に2人を振り払うでも無く、溢れたティーカップに目を向ける。


「あの一瞬でよくもまぁ溶け込んで…溶け込んで?」


 ポツリと。呟いた言葉に自身に問いかけるルイ。プラソンとシリアスがその様子に疑問符を浮かべる中、頭の中に過った老婆の言葉を思い出すと、支えが取れたように沈黙を破る。


「どうしたルイ!?何か分かったか!?」

「ぇ!?ホントなの!?」



「あぁ…クリアのおかげでね」


 プラソンとシリアスが反応する中、たしかに自信を持ってそう答えるルイ。

 4人の視線が集まる中、彼は地図上のメモを剥がすと、それぞれになにやら筆で書き加えた。



ーーー



「──つまり、外から来た身元不明の人物がこの事件の共通項の可能性がある、ということですか?勇者様?」


 一通りルイが話した内容をまとめ、確認するように聞き返すクリア。ああ、と頷いたルイは、もう一枚のメモを懐から出すと、それを机上に置き広げる。


「これは…教会発光事件の?」

「たしかに時期は重なるが、ただ光ってるだけなんだろ?なんの関連が──」


「──浄化魔法、ですね?旦那様」


 シリアス、プラソンの声を遮って、ルイと頷き合うユナ。そんな言葉に勘付いたのか、クリアは両手を合わせると、その頭を大きく縦にふる。


「妙だったんだよ、発光時期と被ってることが。…でも、教会が発光したのは浄化魔法を放ったからと仮定したら、跡形もなく消えたって証言にも納得がいく」

「…なるほど?」

「ぇ?─は?つまり、どういうことだ?」


 頷くシリアスと対照に、未だに疑問符を浮かべるプラソン。

 クリアはそんな彼へ視線を横流すと、細くするように口を開ける。


「ご存じの通り、浄化魔法はわたくし達人間に使った場合、汚れを落としたり傷を癒やしたりするだけです。…ただ、魔物に使った場合はまた効果が変わってしまいます」

「──それって…」

「えぇ、おそらく貴方想像通りです。失踪者は街に溶け込んでいた魔物で、それを消し去るための浄化魔法を使用したところ、教会の発光事件に繋がったのかと」


 淡々と、そして祈りを捧げるようにしながらそう語り終えるクリア。

 彼女のそんな言葉に、プラソンは捻っていた頭を無理矢理動かすと、ぽんっと手を叩いて顔を上げる。


「つまりアレか、ここの領主はバカだったってことだな!」

「なんでそうなるのよ!?」

「いや、だって…魔物みたいな有象無象ですら市民として受け入れてるんだろ?いくら街に人を呼ぶ為にしてもザルすぎるだろ」

「それはたしかに─って!違うわよ!今はもう暗殺された領主の話をしてる場合じゃないの!そこまで分かったなら私達の今後について話をしなさいよバカ!」

「はぁ!?誰がバカだよバーカ!」


 ギャーギャーと、本題からズレ始める2人(プラソンとシリアス)を他所に、ゆっくりと距離を取るルイ達。

 3人は、どちらともなくため息を吐くと、改めてメモへまとめた紙と視線を落とす。


「市民に溶け込んだ魔物、かぁ…割り出すならその辺を洗うのはアリかもな。…そもそも市民って、どうやって定義されるんだっけ…?」

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