なんか、あちこちで異変が起きてるらしい
おまたせしました、54話です。
引き攣った表情の受付嬢から話を聞き、未だに騒がしいギルドを出たルイ。のたうち回っているカ・マセのことなど気にすることなく、堂々と我が道を行くその姿は、後に『野蛮人狩り』という不名誉な二つ名を生み出すのだが、その過程は説明しなくてもいいだろう。
閑話休題。
そんなギルド内のことなど知る由もないフィフスの街の市場にて。消耗品の買い出しを兼ね、人々の話を聞いたルイは、手の中に収まったメモを目に、その眉間を軽く抑える。
「一般市民の連続失踪事件に、不自然な魔物の沈静化、それに原因不明の教会支部発光事件etc…最後の街なだけあって、やっぱり問題は山積みかぁ」
呟きをした刹那、露天で買った串焼きを口に含み、もぐもぐと口を動かす。先に読み上げた『最近の困りごと』を目に、ルイはユナ達への報告定文を脳内に組み上げると、ゴクリと口内の肉片を食道に流し込む。
(ギルドでは『冒険者が戦闘に駆り出されるせいでずっと人手不足だ』って叫んでたけど、ここまで一般の事件に手が出てないとは、ね。…魔王軍が常に攻めてくる街だし、仕方ないとは思うんだけども)
それでも尚、未解決で奇っ怪な事件が増えていく現実。
物価も高騰し、どこか痩せこけていた市民を思い返しながら、ルイは心の片隅で謝って、待ち合わせした宿屋へと足を運ばせた。
ーーー
「──それで、この街で俺達がやることってなんなんだ?」
プラソンとシリアスが借りた宿屋の一室にて、広げられた大量のメモを見たプラソンが、落ち着きなさそうに歩き回って口を開ける。
「ひとまずは直近で起きたこの3つから、かな?街のみんなも不気味がってたし」
「…たしかに、普通に生活するにも不安な内容だもんね」
失踪、沈静、教会の3つを指したルイの提案に、同調するよう言い放つシリアス。「旦那様に従います」とイエスマンなユナと「また教会で何か…」と心此処にあらずのクリアを背に、3人は示し合わせるように視線を交わすと、どちらともなく頷き合う。
かくして勇者ルイ一行の次なる目標は、謎の失踪事件となった。
「…にしても、流石に未消化の依頼が多すぎやしないか?」
「うーん、それがね。街の人が言うにはなんか、あちこちで異変が起きてるらしいんだよね。特に2週間前あたりから」
プラソンの疑問に対して、広げたメモを集めながら、淡々とそう言い放つルイ。
尚、彼らがハゲの滅びた時期とそれが一致することに気付くのは、もう少し先のことである。
一応完結まであと10話くらい(予定)。
うまく収まればいいんだけど…




