5つ目、人族最後の街!
53話です。
新たにできた仲間『聖女クリア』を連れ、真っ白なフォースの街を後にしたルイ達勇者一行。
馬車内でキャットファイトを繰り広げるユナとクリアを他所に、ルイの張った簡易結界にていつも通り安全に道中を通過した彼らは、そびえ立つ城壁に囲まれた最後の都市、パッシングへとやってきていた。
「ここが、人族最後の街…」
「話には聞いていたけど、この大きさは街というかもはや都市よね…」
王都ビギンと同等かそれ以上に発展した街並みを目に、ぼんやりとそんな声を漏らすプラソンとシリアス。
そんな彼らと同様に、物珍しそうに周囲を見渡したクリアは、色とりどりのその風景に瞳の奥を輝かせると、隣に立つルイへ擦り寄ってその左手に自身の指を絡ませる。
「く、クリアさん!?急に何を──」
「恋人繋ぎ、ですわ勇者様。わたくしこんな色鮮やかな街を見たことがありませんでしたから、是非このままデー──」
「そこまでよクリア」
胸元を押し付けようとして、割り込まれたユナに引き剥がされるクリア。
「──っ、ユナさん」
「私の目が黒いうちは旦那様とデートなんて羨m──はしたないことはさせません」
「は、はしたない!?正妻を許したとはいえ、四六時中勇者様にベタベタしてる貴女のほうがずっとはしたないですわ!」
「聞き捨てなりませんね?仲間として認めただけで私は旦那様の側室を許した覚えはありません!」
ギャーギャーと、仲良くしてほしいという当人の気持ちなど預かり知らぬところで始まった2人の口論。
最早風物詩と成りつつあるその光景を目に、ルイは気配を消してその場から離れると、無意識に寄り添い合っている男女へ声をかけようとして、その口をゆっくりと閉じる。
(せっかくだし、邪魔しちゃ悪いよな)
心の中でそう呟いて、再び街並みへ視線を向け直すルイ。
すれ違う人々が仲間の光景から目を逸らす中、通りの先に目当ての看板を見つけた彼は、意気揚々と新しい街での一歩を踏み出した。
ーーー
「たのもー!」
パッシングの中央、ギルドにて。
例の掛け声と共に、意気揚々と扉を開けたルイは、周囲の視線などどこ吹く風と一直線に受付へ向かい歩き進む。
(ここでもやっぱり見られてる気がするけど、これで5回目だしね。魔物とバレてないとはいえ、どの街に行っても余所者は注目の的になるのかな?)
呑気にそんなことを考えて、受付カウンターの前へと立ったルイ。
何処か青ざめた表情の受付嬢を目に、特に気にするでもなく口を開こうとした瞬間、不意に背中に衝撃が走ると、周囲の空気が一気に冷める。
「オイテメェ、余所者のクセにオレにぶつかるタァいいご身分だなァ?駆け出しの小僧が魔王領ち近いこのパッシングでやっていけると思うなよ?あァ?」
「…?」
突然のことに首を傾げるルイ。
そんな彼の視界に映り込んだ、肩を掴み下品な笑みを浮かべる大男は、臭い息をハァハァと漏らすと、その笑みをさらに汚く深くする。
「あーあ、終わったなあの子」
「ぱっと見高そうな装備着てるしなぁ…」
「よりによって新人イビリのカ・マセに絡まれるとか付いてなかったな」
(成る程、これが本に書いてあった冒険者名物新人イビリってやつか。…まぁ、僕はもう新人じゃないんだけど)
口々に言い放つ親切なモブの言葉に、ひとり納得し腕を組んで頷くルイ。
目の前で怯えあがる受付嬢を他所に、カ・マセと呼ばれた大男は、一向に反応しないルイに顔を赤くすると、力任せに腕を振り上げる。
ゴキッ───
「は?」
しんとしたギルド内に響き渡った、カ・マセの素っ頓狂な声と何かが砕けるような鈍い音。
傷ひとつ無いルイとは対照的に、周囲の視線はあらぬ方向へとひしゃげたカ・マセの腕へと注がれる。
「う、ああああぁぁぁぁっっ!?!?オレの腕、オレの、腕gaaaa──」
カ・マセが叫び始めるや否や、再びしんと静まりかえったギルド内。
無音でのたうち回る大男に奇怪な視線が注がれる中、ルイは静かに胸を撫で下ろすと、受付嬢へと再び身体を向き直す。
(息臭かったから結界張ってたけど、遮音の効果も付け足して正解だったかな)
「すみませーん、ここのクエストと近くの宿を確認したいんですけどー」
何事も無かったように切り替え、そのまま本題へと移るルイ。そんな彼の姿を前に、一連の流れを間近で見た受付嬢の顔が大きく引き攣っていたのは言うまでもないだろう。
(なんだかんだやってなかった新人イビリネタってやつをやりたかっただけとは口が裂けても言えない…)




