政治も宗教も、上層部は腐ってるんじゃない?
遅くなりました、48話です。
常々思うのですが、こういう作品の教会勢力、大体上層部が汚職政治家とかとズブズブに繋がってるよね?
ってことで、ここでも敵対させて逝きたいと思います。
何故だ?
何がどうしてこうなった?
儂は大司教、この世を支配する宗教の中で、最も権力を持つ男だ。
名は──忘れた。もう幾千年も前の話だ。今更、人の身である儂の呼び名などもはやどうでも良いがな。
「クソッ…忌々しい小童共め。勇者などとチヤホヤされただけの小物が、儂の崇高なる計画を邪魔しおって──ッ」
荒々しく大聖堂内に響く儂の声。
この半世紀、我が崇高に至る条件は最高だった。
儂の生きた限り最も強い魔王による、数百年に渡るこの世界の恐怖統治。幾人もの勇者が敗走し、残った人族の街は僅か5まで衰退したのだ。…だが、それはあくまで前提条件ということだけ。
半世紀前、状況を見かねたのか、かの女神がこの世に干渉を始めたのだ。そう、儂が求めていた、その神の力を使って。
腐った人族の長共を傀儡にし、誕生した聖女にそれ相応の力も付けさせた。
そして後は、儀式の場に器を捧げれば準備が全て整うというのに。
「何故だ!何故だ何故だ何故だッ!!!」
積み上げられた肉塊を蹴飛ばして、呪詛のように言葉を吐く。
かの王は洗脳できなかった?いや、違う。完璧に我が意識下においていたはずだ。
なら何故?勇者が現れる?
それも、人族を宗教洗脳から解放する程の、力を持つ勇者が。
「なんとかして、あの小童を始末しなければ─ッ!」
儂の本能が告げるのだ。アレは儂の敵である、と。
肉塊に突き刺した杖を引き抜いて、儂はソレを大きく天に掲げ仰ぐ。
硝子張りの美しい光を浴び、儂は言葉で宣言するのだ。
───儂こそが、この世を従える崇高なる神なのだ、と。
ーーー
聖女の先導に従って、黒幕の待つ大聖堂へ、裏口から侵入したルイ達。
既に神聖騎士団によって避難が成されているのか、人っ子一人いない聖堂内は、その名に背く程不気味な空気が漂っている。
「おかしい…この先から気配はするんだけどな…」
「そこはただの壁、なはずですけど…勇者様が言うなら、何かあるのでしょうか…?」
先頭をルイに変え、微かな人の気配を頼りに建物内を進んでいた中、不意に壁の前で止まったルイに同調するように、可愛らしく首を傾げるクリア。
媚びを売るようなその姿を横目に、カツカツとルイの隣に並び立ったユナは、その壁にそっと手を触れると、ルイの方へと視線を向ける。
「旦那様」
「あぁ…お願いするよ、ユナ」
疑問符を浮かべる3人を他所に、静かに頷き聖剣を構えるユナ。
ルイがさり気なく結界を張った次の瞬間、聖剣が鞘に収まる音と共に、目の前の壁が塵となり崩れ落ちる。
「ッ…まさか、俺達の寄付金がこんなことに使われていたなんてッ!」
「何が祝福よ!コレじゃ、生命に対する冒涜だわ!」
「ゔッ──…」
目の当たりにした光景に対し、口々に吠える男女と、口元を押さえる聖女。
当然の反応だろう。死臭と共に彼らの感覚を刺激したのは、人体実験の光景とその実験の成果物だったのだから。
「予想はしていたけど、僕らの予想よりも酷い…」
「魔物ですら犯さない禁忌、ですからね…」
壊れたように咆哮を上げる化け物達を目に、そんな言葉を漏らすルイとユナ。
そんな2人に続くように、へたり込む聖女を背に置いたプラソンとシリアスは互いを見合わせると、己の剣を、杖を、強く握りしめた。




