それは元々の性格だよ。救いようのないクズだったみたい。
47話です。
遅くなりましたが、今回も短めです。
「──それでは、今後はくれぐれも勇者様に対してこのような粗相がないように」
『はい!聖女様の仰せのままに!』
「ではみなさん、持ち場に戻ってください」
『はっ!』
フォースの大聖堂から離れた家の玄関前にて、不気味なまでに統率の取れた声が畑の広がる周囲に響きわたる。
クリアの『処分』を終えた騎士達は、聖女の号令に揃って敬礼をすると、軽い身のこなしで元々の持ち場へと戻っていく。
「すっげー!これが、聖女様の力…!」
「あの有象無象をこんなに容易く…流石聖女様ね!」
満足気に胸を張る聖女を後ろ姿を目に、無意識に漏れたプラソンとシリアスのそんな声。
騎士達の行く末を見届けた2人は、興奮冷めやまぬ様子で互いの顔を見合わせると、どちらともなく肩を寄せ、屈み込むようにして耳打ちをする。
「なぁシリアス…」
「えぇ、プラソン…」
「「俺達も勇者パーティの一員として負けられないな!」」
ーーー
時はほんの少し遡りプラソン、シリアス、クリアの3人が騎士達の『処分』に携わっていた頃。
部屋を出ていく流れで騎士達に踏みつけられた、無駄に豪華な鎧(だったもの)を着た男と共に家の中に残ったルイとユナ。
ホッとした表情を浮かべるユナを他所に、豪華だった鎧の男に再び近づいたルイは、かろうじて原型を留めているその頭を鷲掴みにすると、瞼を閉じてゆっくりと息を吐く。
「旦那様…?」
「ごめんユナ、ちょっとだけ待ってて」
覗き込むユナにそう言って、潰れない程度に男の頭を締め上げるルイ。
しばらくの間、ボロ雑巾の声にならない悲鳴にも似た奇声が室内に響きわたると、不意に事切れたように雑音一つなく静まり返る。
「よし、こんなもんかな」
白目を剥いたボロ雑巾を窓から放り投げ、埃を払うようにパンパンと手を叩くルイ。
開け放たれた窓から、まるで根菜のように頭が突き刺さったボロ雑巾の姿を確認したユナは、慣れた手付きで室内のゴミをまとめると、ボロ雑巾の方へ捨ててからルイの方へと視線を向ける。
「…それで、旦那様?あれは何をしてたのですか?」
「ん?あぁ、ちょっとだけ気になったことがあってね…アレが賊って吹き込んだとしても、彼らがそんなにあっさり信じられるのかと思ってさ。もうちょっとだけ詳しく頭の中を弄くって、どんなからくりがあったのか探ってたんだよ」
なんでもないといった様子でそう語り、ウンウンとひとり頷くルイ。
数刻前のきれいな土下座をキメる騎士達一同を思い出したユナは、ルイの感じていたであろうその『違和感』に今更ながら気付くと、それと同時に聖女に意識を取られていた自分に酷く後悔した。
「旦那様…わた、私は…」
「あぁ大丈夫大丈夫、気にしないでよユナ。僕も最初はこの洗脳に気付けなかったしね。…にしてもそうか、こうやって立場を利用して思考誘導する洗脳の仕方もあるのか…」
「それじゃあ、あの横暴な性格は──」
「あ、それは変態の元々の性格だよ。救いようのないクズだったみたい。…だからこそ、いいように傀儡にされたんだろうけど」
手に入れた情報を自分の中で整理して、一息つくように息を吐くルイ。
その脳内に映し出された黒幕を思考から振り払うように、ユナからいつの間にか用意されたお茶を受け取った彼は、窓からそっと視線を落とすと蜘蛛の子を散らすような洗脳の解けた騎士達を一瞥した。
フィーリッシュ → 変態 → クズ
↘ ↗
無駄に豪華な鎧の男 → ボロ雑巾 → 根菜




