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勇者パーティといえば聖女?なにそれ聞いてな──

 45話です。

 幾度となく読んできた、古の勇者の英雄譚。

 勇者という、清く悪を討つその称号を持つ人はどのような人物なのだろうと、今日も今日とて本をなぞって想いを馳せる。


「…?なにやら騒がしいですね」


 呟く女の名はクリア。今代の聖女である。

 ハゲの招集に応じ、街外れの診療所から馳せ参じた彼女は、慌ただしくすれ違う聖騎士達を横目に、抱えている英雄譚を握り締め大聖堂の中へ入る。


「ようこそいらっしゃいました、聖女様」

「はい、こんにちは。シスターマターナル。…あの、これは何の騒ぎでしょう?」


 受け付けに立つ修道服の女─マターナルに挨拶を返し、不思議そうに首をかしげるクリア。

 周囲を一瞥したマターナルは、右手で小さく手招きをすると、近付いた彼女の耳元に口を近付けて、小さな声で口を開ける。


「これは大声では言えないのだけれど、勇者を名乗る人達がフォースに来てるらしいのよ。それで、フィーリッシュ様が彼らは異端者だと言い出して…」

「あぁ…」


 マターナルの言葉に、反射的に遠い目で頷くクリア。

 しばらくの沈黙の後、彼女は「ん?」と真面目な表情に戻ると、再びマターナルへと視線を戻す。


「シスターマターナル、今なんと…?」

「ええ?フィーリッシュ様が異端者と」

「違います!その前!その前です!」

「えっと、勇者を名乗る人達が──」


「─すみません、用事ができました!」


 マターナルの言葉を遮って、そう言い残して大聖堂を飛び出すクリア。

 小さくなる背中を前に、マターナルは一瞬苦笑を浮かべると、置き去りにされた英雄譚をしまって業務へと戻るのだった。



ーーー



「聖女?」

「えぇ、聖女ですよ勇者様!」


 尚も集団土下座を続ける騎士達を他所に、ルイの言葉に返してその場でクルリと回るクリア。

 若干改造された純白の修道服がひらりと舞う中、ルイは彼女から視線を外すと、ギリギリと歯を食いしばるユナの方へと顔を向き直す。


「ユナ、ユナ」

「───はっ!?だ、旦那様…?」

「大丈夫?」


 ルイの呼ぶ声に我に返り、ブンブンと首を縦にふるユナ。

 ルイは、彼女の腕をそっと側へと引くと、期待したような目を向けるクリアへと視線を戻す。


「えっと…クリアさん、だっけ?」

「はい!」

「…それで、君は僕にどうしてほしいの?剣を抜いた後、仲裁して戦闘を回避させてくれたのは感謝してるけどさ。この街では僕ら異端者なんでしょ?だからどうして──」


「わたくしを仲間に加えてほしいのです!」


『え?』


 ルイの言葉を遮って、突然発した大声を出したクリア。


「勇者パーティといえば聖女。やはりこうじゃなきゃな」

「非常に不本意だけど、こればかりはプラソンに同意ね」


 …若干2名(プラソンとシリアス)を除き場にいたほぼ全員が困惑した声を漏らす中、ユナを押しのけてルイの手を取ったクリアは、キラキラとした瞳を彼に向けると、ズイッとその顔を近付けた。


「ちょ、ちか、近──」

「いいですか勇者様!聖女というのは勇者様の隣に立ちその癒しの手で勇者様を治しお助けしいずれはその妻となり生涯を共にする運命で結ばれた存在なのです!英雄譚にも記されたかの古代勇者様もパーティメンバーとして支えた聖女を娶りその生涯を終えたとありますし、是非勇者様は今代の聖女であるわたくしを仲間に加え、ゆくゆくは妻として迎え入れていただきたいと思っております!大丈夫、心配せずともこの身は勇者様の為に未だに誰にも汚されていない純潔なままです!嗚呼…女神エスポワール様…!わたくしを勇者様を巡り合わせてくれたこの運命に深い感謝を…!さぁ勇者様!わたくしを──」


「──黙りなさい」


 クリアの唇がルイに触れそうになったその瞬間、ドスの効いた声と共に首元に突き出されたユナの聖剣。

 勢いの止まったクリアを他所に、ルイがゆっくりと視線を動かすと、今にも隠蔽していた魔力が漏れ出しそうなユナの姿がその視界に映り込む。


「聖女だかなんだから知りませんけど、いい加減になさい?旦那様の妻はこの(わたくし)です!よくもまあ、そんなわたくしの目の前でクドクドと──」

「なら正妻でなくても構いません!」

「なっ──旦那様に浮気をさせろと!?」

「いえいえ、浮気だなんてそんな不道徳な!?もちろんわたくしを第二夫人として、に決まってますよ!英雄色を好むと言いますし?かの古代勇者も聖女の他に複数の妻を娶ったとあります。何も問題ないありません!」

「貴女に問題がなくてもわたくしにはあるのですよ!」


 ギャーギャーと騒ぎ合う2人を遠目に、ようやく土下座を辞めゆっくりと距離を取る騎士達。

 助けを求めるようなルイの視線を前に、プラソンとシリアスは一瞬目を見合わせると、そっとその光景に背を向けるのだった。

ユナ:どうしてこうも旦那様に近付く女が増えるんですか?(殺気)


私(作者):書いていたらいつの間にか出てきて勝手に動き出しただけなんです!創ろうとしてできたキャラじゃないんです信じて下さ──(絶命)

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