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42/64

頭が痛い…これは、二日酔い…!?

 お久しぶりです。

 42話になります。

「おーい…ブラソン、生きてるー?」


 ペチペチと顔を叩きながら、覗き込むように呼び掛けるルイ。

 しこたま飲まされたのだろう、ブラソンは周囲の冒険者達と共にカウンターに突っ伏して気持ち良さそうに寝息を立てている。


「旦那様、そちらは起きて──ないですね…」

「うん…そちらはってことはシリアスさんも?」

「えぇ…揺すっても目覚める気配はありません」


 何処か諦めたような口調で、シリアスを背負ってルイの元へと歩くユナ。

 雑魚寝している冒険者達を一瞥した2人は、どちらともなくため息を吐くと、互いに顔を見合わせる。


「幸い、ここらの魔物は殆ど倒したし、ブラインドもいるからしばらくは大丈夫…かな?」

「えぇ、そうですね…どのみち御二人は二日酔い確定でしょうし、ブラインド様(あの忌々しい女狐)が来る前にさっさと次の町に向かいましょう」

「う、うん…そうだね…」


 ニコニコと笑うユナを前に、思わず頬を引き攣らせる。

 酒代を置いた2人は、酔い潰れているプラソン、シリアスをそれぞれ担ぎ直すと、足早にギルドを立ち去るのだった。



ーーー



「ゥヴッ…ヴェッ…」


 不規則に伝わる揺れを前に、飛び起きるなり身体を外に乗り出したプラソン。

 ひとまずすっきりした彼は、ガンガンと痛む頭を抑えながら、ゆっくりとその周囲を見渡す。


「おはようプラソン、調子はどう?」

「あぁ、おはようシリアス。今はちょっと頭が痛くて──じゃなくて!なんで馬車!?なんで俺達は馬車に乗ってるんだ!?」


 優しく背中を擦るシリアスを横目に、状況を理解してそう騒ぐプラソン。

 笑みを浮かべながらその口元を拭いてあげるシリアスは、背後(馬車の前側)に寄り添い寝ているルイ達を一瞥すると、耳元へと顔を近づける。


「しー…!静かにして、プラソン」

「いやでも──」

「ルイとユナがようやく寝付けたのよ。起こしたら悪いでしょ」

「え…?ルイ達が…?」


 流れる沈黙と共に、馬の蹄がなる音と心地いい馬車の揺れ。

 囁く彼女の声にゆっくりと顔を上げたプラソンは、状況を把握するなりコクコクと頷く。


「…昨日、私達が呑み過ぎちゃったでしょう?用事が済んだからって2人が支払いとか全部済ませて馬車(ここ)まで運んでくれたみたいなのよ」

馬車ここまでって…まだサードに滞在して3日も経ってないじゃないか。報奨金とかもあるだろうし、もう少し残ってても──」


 そこまで言いかけて、ハッとしたように目を見開くプラソン。

 そんな彼の反応を前に、シリアスは理解したように頷くと、どちらともなく口を開ける。


「「街の復興の為にあえてお金を貰わなかったってことか(ね)!」」


「私達に報奨金なんて渡したら、防衛する為の設備も作れなくなっちゃうし…」

「流石ルイ─いや、勇者…!まさかそんなことまで考えて…」


 2人のそんな会話を背に、御者の男は光栄とばかりにウンウンと頷くと、次の街であるフォースへと馬車を走らせるのだった。

 尚、魔物の脅威が消えたサードの街はさらなる発展を遂げるが、それとは別にいつか渡すための報奨金をずっと保管している模様。

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