頭が痛い…これは、二日酔い…!?
お久しぶりです。
42話になります。
「おーい…ブラソン、生きてるー?」
ペチペチと顔を叩きながら、覗き込むように呼び掛けるルイ。
しこたま飲まされたのだろう、ブラソンは周囲の冒険者達と共にカウンターに突っ伏して気持ち良さそうに寝息を立てている。
「旦那様、そちらは起きて──ないですね…」
「うん…そちらはってことはシリアスさんも?」
「えぇ…揺すっても目覚める気配はありません」
何処か諦めたような口調で、シリアスを背負ってルイの元へと歩くユナ。
雑魚寝している冒険者達を一瞥した2人は、どちらともなくため息を吐くと、互いに顔を見合わせる。
「幸い、ここらの魔物は殆ど倒したし、ブラインドもいるからしばらくは大丈夫…かな?」
「えぇ、そうですね…どのみち御二人は二日酔い確定でしょうし、ブラインド様が来る前にさっさと次の町に向かいましょう」
「う、うん…そうだね…」
ニコニコと笑うユナを前に、思わず頬を引き攣らせる。
酒代を置いた2人は、酔い潰れているプラソン、シリアスをそれぞれ担ぎ直すと、足早にギルドを立ち去るのだった。
ーーー
「ゥヴッ…ヴェッ…」
不規則に伝わる揺れを前に、飛び起きるなり身体を外に乗り出したプラソン。
ひとまずすっきりした彼は、ガンガンと痛む頭を抑えながら、ゆっくりとその周囲を見渡す。
「おはようプラソン、調子はどう?」
「あぁ、おはようシリアス。今はちょっと頭が痛くて──じゃなくて!なんで馬車!?なんで俺達は馬車に乗ってるんだ!?」
優しく背中を擦るシリアスを横目に、状況を理解してそう騒ぐプラソン。
笑みを浮かべながらその口元を拭いてあげるシリアスは、背後(馬車の前側)に寄り添い寝ているルイ達を一瞥すると、耳元へと顔を近づける。
「しー…!静かにして、プラソン」
「いやでも──」
「ルイとユナがようやく寝付けたのよ。起こしたら悪いでしょ」
「え…?ルイ達が…?」
流れる沈黙と共に、馬の蹄がなる音と心地いい馬車の揺れ。
囁く彼女の声にゆっくりと顔を上げたプラソンは、状況を把握するなりコクコクと頷く。
「…昨日、私達が呑み過ぎちゃったでしょう?用事が済んだからって2人が支払いとか全部済ませて馬車まで運んでくれたみたいなのよ」
「馬車までって…まだサードに滞在して3日も経ってないじゃないか。報奨金とかもあるだろうし、もう少し残ってても──」
そこまで言いかけて、ハッとしたように目を見開くプラソン。
そんな彼の反応を前に、シリアスは理解したように頷くと、どちらともなく口を開ける。
「「街の復興の為にあえてお金を貰わなかったってことか(ね)!」」
「私達に報奨金なんて渡したら、防衛する為の設備も作れなくなっちゃうし…」
「流石ルイ─いや、勇者…!まさかそんなことまで考えて…」
2人のそんな会話を背に、御者の男は光栄とばかりにウンウンと頷くと、次の街であるフォースへと馬車を走らせるのだった。
尚、魔物の脅威が消えたサードの街はさらなる発展を遂げるが、それとは別にいつか渡すための報奨金をずっと保管している模様。




