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許せませんわ!

 41話です。

 はぁはぁ…と、静かな部屋に響き渡る、興奮したようなブラインドの吐息。

 眼の前に腰掛けたルイは、彼女の頭にそっと手を置くと、真剣な眼差しを彼女へ向ける。


「どう?僕の話を聞いてくれる気になったかな?」

「はぁはぁ…は、はい!ルイ様!わたしに話があるのですね!挙式の話でしたらわたしは──」

「ごめん、挙式の話をしたいわけじゃないんだ。そんな話をできるような状態じゃなくなってしまったからね」

「えっ………───?」


 絶望、という2文字を貼り付けたようなブラインドの表情。落ち着いたルイの一言を聞いた彼女は、静かに溢れた涙を理解すると、震える自身の手で頭を掻き毟る。


「そんな…そうよ、これは嘘!わたくしのルイ様がそんなことを言うはずありま───」


「落ち着いて、ブラインド。まずは僕の話を聞いて」


 ルイに身体を抱きしめられ、耳元再び囁かれる落ち着いた声。背中を撫でられたブラインドは、そんな彼の体温を直に感じると、過呼吸だった息を鼻から大きく吸い直す。


「ああっ!?貴女ッ!ドサクサに紛れて旦那様になんて羨ま──はしたない真似を!?今すぐ旦那様から離れてください!」


 抱き合う2人の姿を目に、思わず身体を乗り出したユナ。

 何処か余裕な笑みを浮かべるブラインドを前に、彼女は割り込むようにして2人の間に腕を差し込むと強引に身体を引き剥がした。



ーーー



「──と、言うわけで僕らが挙式をできる状態じゃないんだ」


 窓辺から微かに差し込む、新たな朝を知らせる光。

 興奮した女性陣(ユナとブラインド)を宥め、なんとか本題を話したルイは、ようやく頷いたブラインドを前にそっと息を吐く。


「…では、その問題さえ解決すればわたくしはルイ様と晴れて婚姻関係になれるというわけですね!」

「えっと…うん、問題が全部解決できたら、ね?」


 肯定するようなルイの言葉に、あからさまに表情を明るくするブラインド。

 ジト目を向けるユナを背に、ルイは嫌な汗を感じて頭を掻くと、誤魔化すように口角を上げる。


「わかりましたわルイ様!このわたくしが責任を持ってすべての問題を解決してみせますわ!──いくらお父様達とはいえわたくしとルイ様の愛を邪魔する害虫ッ!地獄の果てまで追い詰めて、魂の欠片も残さず消し去ってやりますわ!」


 ドン、と胸を叩いて、ブラインドは高らかにそう宣言する。


(『問題』はけっこう根が深いし、まさかこうも簡単に宣言されるとは思わなかったけど…これでしばらくは誤魔化せるはず。まぁ、その過程で本当に解決してくれたらそれはそれで助かるんだけど)


「それではルイ様!わたくしは今からお父様(あの害虫)を駆除しにまいりますわ!それではここで御暇(おいとま)させて──」

「あっ!ちょっと待って!」


 ルイの思考よりも早く、窓から飛び出そうとしたブラインド。

 慌てて引き止めたルイは、魔法の袋からネックレスのような魔導具を取り出すと、それを彼女の首にかけてみせた。


「ルイ様…これは…!」

「幻影魔法の付与された魔導具だよ。このまま出ていったら君が魔物だとバレてしまうからね。僕からの贈り物…かな?」

「…!!!!」


 小声でそう言って、ポリポリと頬を掻くルイ。

 睨みを聞かせるユナを他所に、ブラインドは万篇の笑みを浮かべると窓枠に足をかけた。


「ありがとうございますルイ様!わたくし、直ちに役目を完遂して参りますわ!」


 幸せ全開の(キラキラとした)オーラを身に纏って、ブラインドは意気揚々と宿の窓から飛び降りたのだった。

ルイの出した『問題』=ブラインドの父親が行っていた不正や汚職など、魔王達上層部の腐った部分。

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