いざ始まりの街へ!
「ここまで来れば大丈夫だろ」
城を抜け出したルイとユナは野宿を繰り返しながら魔物のいる森を歩いていた。
「ご主人様。ひとつ疑問があるのですが…」
「ん?どうしたユナ。僕なんか変なこと言ったかな?」
ルイは首を傾げると、ユナはどこか躊躇うように口を開いた。
「あの…私の勝手な想像かもしれませんが…」
「うん。何かあったの?」
「いえ、この森は魔物がたくさんいると聞いていたのに私達を全く襲ってこないので。その、もしかしたら私達が同じ魔物であることが気づかれているのではと…」
ユナの言葉にルイは思い返すと、たしかにこの森に入ってから魔物との交戦は愚か、遭遇したことすら無かった。
「やばいな。やっぱ着替えないで来たのが悪かったのかな?」
「どう考えてもそれしかないかと…」
「着替えねぇ…やっぱ魔物達の間で流行ってるこの服じゃダメなのか」
「いや、人間の服を着てない地点でアウトだと思います」
ユナにばっさりと言われたルイはガクッと肩を落とすと、荷物の中から勇者達の遺品を取り出した。
ーーー
「よし、これでいいだろ!」
ボロボロの鎧を身に纏ったルイは今まで着ていた服を焼き払うと、意気込むようにそう叫んだ。
「ご主人様、なんでわざわざボロボロの鎧を?」
「いや、だってピカピカのやつあったけどもしそれがオーダーメイドとかだったら怪しまれると思って。だからボロボロで原型をとどめてないやつにした。…ってかユナはいつの間に着替えたのさ…」
「ご主人様が着替えてるときですけど」
地味でボロボロの服に着替えていたユナはそう言うと、今まで着ていたボロボロのメイド服を火の中に投げ込んだ。
「じゃあ改めて始まりの街へしゅっぱー…」
「?どうしました?ご主人様?」
「あ、いや…あはは…ユナ、これめちゃピンチだわ」
「え?」
掛け声をあげようとした2人の周りに、今まで影すら見せなかった大量の魔物達が集まっていた。
「オイ、あいつら鎧着てるぞ。さっきまで仲間かと思ってたが俺達を騙すためだったのか!」
「人間なら殺してもいいよね?」
魔物達は口々にそう言うと、ギロリと視線を2人に向けた。
「やっべ…よし、ユナ!逃げるぞ!」
「…!はい!」
ルイはユナの手を引くと、魔物達から逃げるように森を抜けていった。