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35/64

2つ目の街を出て…

 35話です。

 今回も短くてごめんなさい。

「さて…これからどうする?」


 馬車の荷台に腰掛けたプラソンは、確認するようにそう問う。


 砦周辺の魔物と神殿にいた邪竜を討伐。街からこの2つの褒賞金を受け取ったルイ達一行。

 邪竜の素材を用い、ルイが作成した新たな装備に身を包んだ4人は、行商人の護衛としてセカンドの街を出たのだった。


「うーん…今のところセカンドみたいな魔物の大量発生とかは聞いてないし、何処かに急いでいく必要は無いしな…ユナは何処か行きたいところでもある?」

わたくしは旦那様といられればそれで十分です!」

「あはは…ありがと、ユナ」


 苦笑する行商人を他所に、暇さえあればイチャつくルイとユナ。

 同じく荷台に乗っているプラソンとシリアスは、張り詰めた様子汗を流すと、警戒するように馬車の外を眺めていた。


「あのぉー…勇者様はいつもこんな感じなんですかい?」


 馬に鞭を打ちながら、プラソン、シリアスに確認する行商人。

 一瞬警戒を解いた2人は互いの顔を見合わせると、ルイとユナを一瞥した。


「まぁ…いつもどおりっちゃいつもどおりだよな?」

「うん…ルイもユナもお互いのことしか見えてないときがあるからね」


 うらやましい、と呟いたプラソンに無言で肘を入れるシリアス。

 横目でそれを眺めていた行商人は、妬むような気持ちをそっと堪えると、鞭を振って馬車の速度を上げた。



ーーー



 ルイ達が駆け落ちしてから数日、魔王城の一室にて。


「それで、ルイはメイド見習いを連れて出ていったと?」

「はい…」


 コツコツと足を鳴らす苛立ったような魔物の女性を前に、正座しながら萎縮する魔王(・・)

 肯定する彼の台詞に、足を止めた女性は深く息を吐くと、呆れたように頭を抱えた。


「…いくら魔王とはいえ、自分の子供に暴力を振るったら拒絶されるのは当たり前でしょう?一緒に出ていったメイドの()がいなかったらあの子は壊れてしまったかもしれないのよ?」

「ハイ、全くそのとおりです…」

「ただでさえ人族に勇者が現れたって報告もある危険な時期なのに…あの子に何かあったらどうするつもりなのよ!」

「本当に、申し訳ございませんでした!」


 怒鳴る女性の足元で、威厳の欠片もなく綺麗に土下座をきめる魔王。

 女性はゴミを見るような目で魔王を視界から追いやると、窓越しに荒れた空を見上げるのだった。

 魔物の女性の正体は──


 多分、みんなが察した通りで大丈夫です。

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