2つ目の街を出て…
35話です。
今回も短くてごめんなさい。
「さて…これからどうする?」
馬車の荷台に腰掛けたプラソンは、確認するようにそう問う。
砦周辺の魔物と神殿にいた邪竜を討伐。街からこの2つの褒賞金を受け取ったルイ達一行。
邪竜の素材を用い、ルイが作成した新たな装備に身を包んだ4人は、行商人の護衛としてセカンドの街を出たのだった。
「うーん…今のところセカンドみたいな魔物の大量発生とかは聞いてないし、何処かに急いでいく必要は無いしな…ユナは何処か行きたいところでもある?」
「私は旦那様といられればそれで十分です!」
「あはは…ありがと、ユナ」
苦笑する行商人を他所に、暇さえあればイチャつくルイとユナ。
同じく荷台に乗っているプラソンとシリアスは、張り詰めた様子汗を流すと、警戒するように馬車の外を眺めていた。
「あのぉー…勇者様はいつもこんな感じなんですかい?」
馬に鞭を打ちながら、プラソン、シリアスに確認する行商人。
一瞬警戒を解いた2人は互いの顔を見合わせると、ルイとユナを一瞥した。
「まぁ…いつもどおりっちゃいつもどおりだよな?」
「うん…ルイもユナもお互いのことしか見えてないときがあるからね」
うらやましい、と呟いたプラソンに無言で肘を入れるシリアス。
横目でそれを眺めていた行商人は、妬むような気持ちをそっと堪えると、鞭を振って馬車の速度を上げた。
ーーー
ルイ達が駆け落ちしてから数日、魔王城の一室にて。
「それで、ルイはメイド見習いを連れて出ていったと?」
「はい…」
コツコツと足を鳴らす苛立ったような魔物の女性を前に、正座しながら萎縮する魔王。
肯定する彼の台詞に、足を止めた女性は深く息を吐くと、呆れたように頭を抱えた。
「…いくら魔王とはいえ、自分の子供に暴力を振るったら拒絶されるのは当たり前でしょう?一緒に出ていったメイドの娘がいなかったらあの子は壊れてしまったかもしれないのよ?」
「ハイ、全くそのとおりです…」
「ただでさえ人族に勇者が現れたって報告もある危険な時期なのに…あの子に何かあったらどうするつもりなのよ!」
「本当に、申し訳ございませんでした!」
怒鳴る女性の足元で、威厳の欠片もなく綺麗に土下座をきめる魔王。
女性はゴミを見るような目で魔王を視界から追いやると、窓越しに荒れた空を見上げるのだった。
魔物の女性の正体は──
多分、みんなが察した通りで大丈夫です。




