吾、死んだのか…?
遅くなりました。34話です。
執筆ペース遅くてすみません。多分これからもこのくらいのペースで書きます…
「ここは一体…」
何処か朧げながらも意識を覚醒させた吾は、ゆっくりと周囲を見渡す。
視界に映る周囲は、いつか吾が勇者と戦った荒れ果てた廃墟のようだった。
「───しかし何故、吾はここにいる?吾は確か…」
そうだ、吾はあの神殿で今代の勇者と戦っていたはずだ。
幻覚魔法を使っていた小僧の本体を狙って《邪竜の吐息》を放って──
「──まさか…負けたのか?…この吾が?」
いや待て、落ち着け吾よ。吾はあのとき確実に《邪竜の吐息》を放った。放ったはずなのだ。…だが、肝心のあの岩陰にいた小僧達を消し去った記憶が無い。
だとしたら…まさか吾は本当に──
「ようやく自覚したか、我が右腕よ」
吾の思考をかき消すように、不意に聞こえた懐かしい声。
吾が顔を上げると、そこには──
「──ま、魔王様!?」
「いかにも。我こそはあの偉大なる大魔王、アームド・コントロールである」
久方ぶりにあった吾の主は、あの頃と変わらぬ屈託のない笑みを浮かべてそう叫んだのであった。
ーーー
「ハッハッハッ!貴様もあの小僧にしてやられたようだな!」
邪竜の話を聞き終え、豪快に笑い飛ばす太古の魔王。
羞恥に俯く邪竜を他所に、彼はひとしきり笑い終えると、一息整えて口を開ける。
「ま、貴様がやられたのも無理はないて。かくいう我も永らく封印されていたとはいえ、あの小僧にでも足も出ずこうしてあの世へといるのだからな!別に恥じることでも無かろうて」
「魔王様…」
元魔王のその言葉に、情けなく声を漏らす邪竜。
元魔王はそんな彼の肩をポンと叩くと、目下を見つめながら言葉を続けた。
「ま、我らも今や古の存在よ。我を装備したあの小僧達がこれからどうなるか…我らで見届けてやろうではないか」
「そう、だな…えぇい、経緯はどうであれこの吾を一撃で滅ぼした今代勇者の行く末…吾も腹を括って見届けるとしますぞ」
「フッ…いい顔になったではないか邪竜」
「ハハッ…魔王様のおかげですな」
あの世にて旧友と再び心を交わした元魔王と邪竜。
2人は、自身を滅ぼした新勇者の強さを認め、その魂が完全に消滅するまでの間、その動向を見届けることにしたのだった。
「お、見てみよ邪竜よ」
「ハハハッ!小僧め、まさかこの吾を鎧として身に纏うとはな!」
「一瞬で竜の素材を変形させる技術、見事なものよ。…それに、完成したあれは神級防具だな」
「伝説として聞いていたが…まさかこんな形で拝む日が来ようとは」
「ま、我らは既に死んでおるけどな!」
「違いないですな!」
『ワハッハッハッハッ───!!!!』
ーーー
「──クシュン!」
「大丈夫ですか、旦那様?」
「いや、大丈夫大丈夫…誰かが僕の噂をしてるみたい」
心配そうに覗くユナに、そう言って微笑み返すルイ。
邪竜の落とした素材を加工した彼は、完成した鎧を身に纏うと、仲間の方へと振り返った。
「おぉ…!これが勇者ルイの新しい装備…!」
「まさかあの邪竜だったものがこんなに神々しくなるなんてね」
「流石勇者だな!」
邪竜からできた鎧を着たルイに対し、まるで自分事のように喜ぶプラソンとシリアス。
その場で防具を生成した事実を『勇者の力』で完結させた2人は、その特異性を疑うことなく呑気に笑い飛ばすのだった。
太古の魔王がもう出ないと言ったな!あれは嘘だ!
…と、まぁそんなわけではなくてですね、ホントは出す予定なんてなかったのよ。少なくともあの地点ではね。
ちなみに、最後のルイ達はまだ神殿の中にいます。




