これは邪竜も…
31話です。
まだまだ続きます。
占領されていた砦を魔物ごと崩壊させ、目標を達成したルイとユナ。
プラソン、シリアスと合流した2人は、手に入れたアイテムの換金を終えると、セカンド郊外にある神殿へと向かっていた。
「ねぇユナ、これってさ…」
「えぇ…ビギンの神殿と同じ結界が張ってありますね」
「また、堂々と入って大丈夫だよね?」
「…そうですね。変に警戒するよりは疑われませんしね」
2つ目の神殿を目の前に、ヒソヒソとそんな会話をするルイとユナ。
そんな2人の心情など露知らず、後ろから付いてきていたプラソンとシリアスは、神秘的な雰囲気を放つ神殿を前に目を輝かせていた。
「ここが、前勇者も訪れたセカンドの神殿…!」
「まさか私達が、勇者パーティの一員として訪れることになるなんて…!」
神話と自分達を照らし合わせ、感動するように手を合わせる2人。
なんだかんだ言いつつも、何処かシンクロしている彼らのその姿に、ルイとユナは互いの視線を合わせると、優しく笑みをこぼす。
「よし…!それじゃあ入るよ、2人共」
呼びかけるように、プラソンとシリアスに向かってそう叫ぶルイ。
我に返った2人を背に、ルイとユナはどちらともなく手を繋ぐと、結界の中へと足を踏み入れた。
ーーー
『───む…来訪者とは珍しいな』
神殿の最深部に響く、唸るような異様の声。
まるで何かの祭壇のような、不気味な部屋へと踏み込んだルイ達は、その声を前にそっと立ち止まる。
「なぁシリアス…今、何か鳴かなかったか…?」
「うん…何か、すごい嫌な予感がする…」
聞こえてきた声に対し、その内容が聞き取れなかったのかそんな会話をかわすプラソンとシリアス。
怯えるような2人とは対象的に、ルイとユナはなんともないといった様子で顔を合わせると、部屋の奥へと視線を向ける。
「ドラゴンだね」
「怨霊ですね」
緊張を欠くように、言葉をハモらせるルイとユナ。
2人の声に反応したのか、不意に祭壇の奥に在る巨大な影は、そっとその身を起き上がらせると、怪しく輝く紅い瞳を彼らの方へと向けた。
『よくぞわかったな、か弱き者よ。吾こそは冥界竜モンズモール。恐れずに話し掛けた貴様の称え、吾復活の養分に…えっ?はっ⁇なぜ⁉︎何故だ!?何故魔王様がここに⁉︎』
巨大な影──否、冥界竜モンズモールはルイの持つアボミナブルを視界に捉えると、混乱した様子で取り乱した。
冥界竜の台詞は15話の女神と同じ構図です。
ちなみに『モンズモール』はフランス語で『死界』を意味するみたいです。




