勇者ってすげー
30話ですん
「プラソン!それで、ラストッ!」
「あぁ…!任せろッ!」
シリアスの声に合わせて、目の前に群がっていた最後の魔物を斬り倒すプラソン。
シリアスによるダメ押しの火球によってこんがりと焼けたそれらの死骸は、魔石や装備していたナイフなどを落としながら、光の砂となって崩れ去った。
「お疲れ、プラソン」
「あぁ…お疲れさん、サポート助かった」
レベルアップによる大量のファンファーレを無視しながら、流れるようにハイタッチをする2人。
ドロップしたアイテムを回収するシリアスを横に、プラソンは力が抜けたように仰向けになると、ルイから渡された剣を空に掲げた。
「…にしても、この剣はすごいな…切れ味や使いやすさもさながら、この連戦で傷一つ付いてねえ…」
「それ、新しい剣だよね?さっきは気付かなかったけど、一体いつ新調したのよ…」
回収したアイテムをしまい終え、愚痴るように言葉を吐くシリアス。
プラソンの持っている、素人目で見てもいかにも高額そうなその剣を前に、彼女はたまらず頭を抱えた。
「あー…シリアス?なんか勘違いしてると思うから言っとくが、別にこの剣はどっかで買ったわけじゃないからな?」
「買ってない…?」
「あぁ、ルイが作ってくれた他にない一品だ」
上半身を起き上がらせ、我が物顔で胸を張るプラソン。
自分が作った訳でもないにもかかわらず、堂々とした彼のその態度に、シリアスは何処か呆れたように溜息を吐く。
(まぁ…ルイは勇者に選ばれるような人だし、作れなくてもおかしくないか…)
はしゃぐプラソンを横目に、シリアスは自分の中でそんな結論をつけると、ひとり納得したように頷く。
───ドォォォォォォォンッ!
「な、なんだ!?」
「な、何!?」
不意に聞こえたそんな効果音と共に、周囲に飛び散るような衝撃波。
反射的に飛び上がった2人は、音のした方へと振り返る。
「まじかよ…」
「まさか、本当に…」
驚きを通り越し、呆れたように口を開ける2人。
その視線の先には、件の勇者が作ったと言われた砦が、ガラガラという音が聞こえるかのように跡形もなく崩れ去る瞬間がしっかりと映っていた。
「…」
「…」
完全に崩れ去った残骸を遠目に、無言のまま顔を合わせるプラソンとシリアス。
しばらくの間を空けて、2人は静かに頷くと、どちらともなく口角を釣り上げた。
「さっすがルイ達だな!」
「うん!まさか本当に砦を壊せるなんて!」
勇者の力、という便利な言葉を前に、なんの疑いもなく納得する2人。
感極まった影響か、互いに抱き合っているのだが…帰ってきたルイとユナがそれを茶化すのは、また別の話。
ちなみに、砦が壊れた原因はユナが放った攻撃の余波です。ルイもユナも砦本体には指一つ触れていません(重要)。
新作のイメージが思い浮かんだので、また更新ペースが遅くなるかもです。
今後も気長に待っていだだければ幸いです。




