悪口言ったから…
29話です。
「フハハハハッ…!ようやく来おったか、勇者と呼ばれた虫螻よ」
各々の剣で魔物を薙ぎ倒しながら、いよいよ砦の前へとやってきたルイとユナ。
2人が砦の入口を視界に捉えた瞬間、不意に聞こえてきたそんな高笑いと共に、砦の上から、右手に大斧をもった、一際図体のデカい一体の魔物が飛び降りてきた。
「虫螻…?貴方、今旦那様のことを虫螻って言いました?」
「あっ…」
魔物を視界に捉えるや否や、ドスの利いた声を漏らすユナ。
隣に立つルイは、何か察したようにユナと魔物を交互に見ると、何故か同情するような視線を魔物へ向けた。
「ハッ…貴様らのような虫螻に虫螻と言って何が悪いと言うのだッ!部下を討ち取っただけで調子に乗っ──」
魔物がそこまで言いかけて、不意に宙を舞った黒い影。
ぐちゃりという音を立てながら、地面に落ちたソレを前に、魔物はゆっくりとその正体を認識すると、遅れて激痛が右腕を襲ってきた。
「な、なんだこれは!?俺の、俺の右腕がッ!?」
二の腕部分から、無くなった腕の代わりというように、大量に噴き出る魔物の血。
そんな腕を抑えながら叫び散らす魔物を前に、ユナはゆっくりと歩みを寄せると、落ちている右腕の先を踏み潰した。
「旦那様を侮辱したこと、万死に値します…」
「な、何を言ってるのだ貴様…!」
強がる魔物を前に、ルイは何処か呆れなように、そして恥ずかしがるように息を吐くと、彼女の背中に向かって言葉をかける。
「ユナ、手加減は忘れないでね」
「はい♪旦那様♪」
素敵な笑みを浮かべながら、ゆっくりと聖剣を持ち上げるユナ。
その明らかに異常なオーラに、目の前に立つ魔物は、先程までの威勢などはとっくに消え失せ、ただ情けなく尻餅をついた。
「…貴方、楽に死ねると思わないでくださいね♪」
目の前で好きな人の悪口言われたら、そりゃキレるの当たり前だよね…?




