パーティーを明けて
「プラソン、ちょっといい?」
「ん?どうしたルイ?」
パーティーを終え、飲み明かした翌朝。
プラソンがいつものように外で素振りをしていると、不意に頭上にある窓からルイが顔を出していた。
「あのさ、ちょっと渡したいものがあるんだけど…」
「…?わかったちょっと待っててくれ」
そう言って持っていたボロボロの剣を鞘にしまい、タオルで汗を拭うプラソン。
ルイはそんなプラソンの剣をしばらく眺めると、そっと窓を閉めて部屋へと戻った。
ーーー
「これはこうやって切るといいんですよ」
「…‼︎本当だ!全然苦味がない!」
「あの切り方だと味の染み込みも悪いので、これなら汎用性も上がると思うのですが…」
「最高だよユナ‼︎これでレパートリーも増えるね‼︎」
「はい!」
そう笑いながら楽しそうに台所に立つユナとシリアス。
2人は流れるような動作で次々と朝食を作っていくと、それをリビングのテーブルの上に並べていた。
「そういえばシリアス様」
「ん?何?どうしたの?」
「一昨日の夜、御二方を同じ布団に寝かせたんですが…あれから進展はあったのでしょうか?」
ユナのその言葉にシリアスは思考を回すと、思い出したのか持っている包丁を置いてその手を合わせた。
「あー…あれ、やっぱりユナ達がやったんだ?」
「余計なお世辞でしたか?」
「いや、そんなことないよ。…意識がなかったとはいえ久しぶりにプラソンと一緒にいたんだもん。むしろ感謝したいくらい」
「それならよかったです」
そう言ってシリアスに微笑みかけるユナ。
そんな自分の事のように喜ぶユナを前に、シリアスはどこか気恥ずかしそうにその目を逸らした。
ーーー
「ルイ、これは…?」
「僕が作った剣だよ。プラソンの剣、もう刃こぼれがひどくて見てられなかったから…お節介だったかな?」
「いや…ありがとうルイ。あの剣もそろそろ買い替えようかと思ってたしな」
プラソンはそう言うと、ルイから渡された剣を鞘から引き抜くと、周囲に当たらない程度に剣を振り回した。
「…それに、コイツはなんか身体にしっくりくる」
ルイとユナの持つ剣とは全く別の、質素だが洗練されたデザインの剣。
プラソンは鞘から出した自分の剣とそれをしばらく比べた後、満足といった様子で満遍の笑みを浮かべた。
「にしてもルイ…お前、剣も作れたのか‼︎最初から変わった装備をしてたと思ったがさすが勇者に選ばれた男だな‼︎」
「へっ⁉︎…あ、ありがと」
新しい剣を鞘に収め、そう言ってバシバシとルイの背中を叩くプラソン。
ルイが気恥ずかしそうに身体を捻っていると、不意に下の階から美味しそうな匂いが漂ってきた。
「ルイ」
「うん」
2人は各々の剣をその場に立て掛けると、嵐のように匂いのする方へと降りていった。
2人が飛びつくような朝食の匂い…
一体どんな料理なんだろうか?




