ようやく勇者になった…のか⁇
控室へと戻ってきたルイは持っていた木剣を置くと、ソファーの上に寝転がった。
「お疲れ様です旦那様♪」
「あぁ…ユナ、なんでそんなテンションが高いの⁇」
「いえ、旦那様のカッコいい姿が見れて私の気分が良くないわけないじゃないですか‼︎」
「あ、うん…面と向かって言われると恥ずかしい…」
ルイはそんなユナの用意したお茶を取ろうと起き上がると、不意にその隣にひとりの女が座っていた。
「…⁉︎うわぁ⁉︎えっ…誰⁉︎」
突然のことに驚いたルイはそのカップを取り損ねると勢いよくソファーの反対側へと移動してみせた。
「ふむ…まさか女がいるとは…まぁいい。ルイ殿、王がお呼びだ。すぐに私と来てもらおう」
女は淡々とそう言うと、ルイの手を引こうとその手を伸ばした。
「ダメです‼︎」
ユナはそんな光景を目にした瞬間、それを邪魔するように2人の間に割って入った。
「ふむ…何故私の邪魔を?貴女には関係のないことであろう」
「人の旦那に手を出そうとして…関係大有りですよ‼︎そもそも貴女、一体何者ですか‼︎」
「ゆ、ユナ⁉︎」
まるで威嚇をするようなユナを前に、唖然とするルイ。女はそんな2人をしばらく眺めていると、伸ばした手を自らの腰に当てがった。
「では、ルイ殿とその奥様。王がお呼びだ、私と一緒に来てもらおう」
『奥様⁉︎』
2人が驚いたような、恥ずかしいような表情をすると、女はもう片方の腕を上げ、その手をパチンと鳴らしてみせた。
「ははは…さすがは我が娘。仕事が早いのぅ」
女が音を鳴らした瞬間、ルイ達の周りは一瞬にして景色を変えると、不意に背後から老いた男の声が聞こえてきた。
「王、ルイ殿を連れてきました。それと、こちらはその奥様だそうです」
「そんな…私が旦那様の『奥様』…うふふ…」
「ゆ、ユナ?まだ僕ら結婚してないよ…」
周囲の状況に気づかず、ルイは若干トリップしているユナを宥めていると、不意にその様子を見ていた王様が口を開けた。
「あの、お二人さん⁇2人の空間に入ってないでちょっとワシの話を聞いてくれないかなぁ…ワシ、結構寂しいんだけど…」
「おい、ルイ殿。王がお話しなさるぞ」
「えっ?王様⁇」
女に肩を揺さぶられ、2人の空間から戻ってきたルイは周囲を見渡してハッとした。
「おおおお王様⁉︎本物⁉︎」
「ようやく気付いてくれたか…いかにも、ワシはこの国を治める王である」
「す、すみませんでした…‼︎僕、全く気付かずとんだ御無礼を…」
ルイはそのまま綺麗に土下座を決めると、その衝撃で王様と女以外の周囲にいた人間(主にお偉いさん)達を壁まで吹き飛ばした。
「だ、旦那様⁉︎何故土下座を…」
我に帰ったユナは周囲の惨劇を見ると土下座しているルイのほうへと駆け寄った。
「ハッハッハ‼︎顔を上げてくれルイ殿。ワシはソナタには正式に『勇者』となってもらいたいんじゃ」
「勇者、ですか…えっ⁇『勇者』⁉︎」
「ああ、どうかあの忌まわしき魔王からこの世界を救ってくだされ勇者様」
ようやく勇者になったんだけど…
土下座ェ…