これが勇者になる第一歩…なのか?
「えっと…なんで俺らは呼び出されたんで…⁇」
プラソンはその女性を前に敬語ともわからない言葉遣いでそう聞くと、女性は引き攣った笑みを浮かべながら口を開いた。
「プラソン…相変わらず敬語がなってないな。実の姉とはいえ私はギルドマスターだぞ…」
女性は溜息を吐くとルイとユナを見て再び口を開いた。
「まぁもちろん今回の件はそんなことではないんだけど。君達がルイ君とユナ君か…新人とは聞いていたが中々の腕前らしいね」
「えっ…あっ…はい、ありがとうございます」
「ありがとうございます」
急に話を振られた2人は慌てて頭を下げるとプラソン達のほうへ目をやった。
「それでルイ君」
「は、はい」
「話によれば君は勇者になりたいそうじゃないか」
「それは…そうですが…」
女性はルイの反応を見ると、どこか嬉しそうに指を立てた。
「それじゃあ一つ、試させてもらおうかな」
「⁇」
ルイが言葉の意図を理解できずにプラソンとシリアスのほうを向くと、2人は始まってしまったか…というようにあからさまに表情を濁らせた。
ーーー
女性に案内され、どこか闘技場のような場所に連れてこられたルイはその控室でユナに淹れられたお茶を飲んでいた。
「旦那様。くれぐれも慎重に、ですよ」
「あぁ…わかってるよユナ。負ける気はしない」
「いえ…間違って相手を殺さないように、という意味です」
「あ、そういう…」
「ちゃんと手加減してくださいね。旦那様がちょっと力を出したらこの町が壊滅していますから」
「大丈夫大丈夫。僕だってこの住みやすい町を消すような真似はしないよ」
ルイはそう言うと、闘技場に入るときに渡された木剣を手に立ち上がった。
「じゃ、行ってくる」
「はい」
ユナは控室を出るルイを見送ると、ルイが使ったカップを見て何か血迷いそうになりつつもそれを片付けはじめた。
ーーー
「自己紹介が遅れたな。私はキャンプ。この町のギルドマスターだ。これから君が『勇者』と呼ばれるのにふさわしいかどうか確かめさせてもらうよ」
女性がそう言うと、ルイは会場を見渡した。
「えっと…これってもしかして王様とか見てます…⁇」
「何を当たり前のことを…勇者かどうか決めるのは王様と、この国の全国民だぞ」
ルイがキャンプの言うことに唾を飲むと、司会役のような声が会場に響き渡った。
『勝敗はどちらかが降参するか戦闘不能になった地点で決まります。ただし、命を奪うような攻撃、魔法は禁止とします』
「それじゃあ、全力でかかってきてね」
「は、はい…」
そう言い木剣を構えたキャンプを前に、ルイはどこか躊躇いながら木剣を構えた。
『それでは、試合を開始してください』
その声と共に会場は大きな歓声に包み込まれた。
さてさて、今回はここまで。
次回はルイとキャンプの戦闘からの予定です。
短いけど許してね。