結果
死んだ。
暗闇の中ごそごそと自分の荷物の入った、コインロッカーをあさるユウの姿があった。
ユウは中に入っている荷物を全て取り出し、青い色のリュックを担ぐ。
残金600円とちょい。
結局ユウの出した一箱はすぐに飲まれた。
アドレナリンがでたのは束の間、何のことはない、大当たりは続かなかった。
時短終わり100回を越えた頃、ユウの命ともいえるもち球は全て消えた。
そのすぐ後に、さっきのおばちゃんが座るのが見えた。
きっと出したに違いない。
そう確信していた。
世の中やはり奇跡などないのだ。
「くそっ。伴のやつ。」
結局1万円を貸したままだ。返ってくる見通しもない。
あの一万円があれば、今頃いつものようにネットカフェで、冷たいジンジャーエールでも飲みながら、悠々と仕事を探せたのに。
そもそもパチンコなぞやらずに…。
ユウの後悔は尽きなかった。
後悔先に立たず。
ユウが荷物をしょって、歩く町はとても煌びやかだった。
飲み屋のネオンが、ユウの顔を照らす。
耳の横を汗がつたう。
今日も熱帯夜だ。
ユウには行くあてなど、何処にもなかった。
大田のように旅の目的も何もなく、ただ町を彷徨う。
無差別殺人でもしてしまいそうな顔つきで、ただただ東へ歩く。
何故東に向かうのかは、ユウ本人にも分からなかった。
ユウはついに本当の意味でのホームレスになってしまったことに、とてつもない恐怖を覚え、これからどうして良いのかなど、まったく想像もできなかった。
ダンボールを拾うのか?
残飯を食べるのか?
それとも自分は死ぬのか?
ユウは、夜逃げしてから初めて死というものを意識していた。
敗者の背中は、夜の街から国道沿いに消えていった。