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狙撃勇者は外さない  作者: HIZASI
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第一話 出会い

  鬱蒼とした森の中、黒い短髪に紅の瞳が特徴の青年、リオ・デュークは、ひたすらに時を待っていた。体を木々の間に隠し、さらに気配断絶魔法を使用した今の状態のリオは、どんなに嗅覚に優れた獣にも見つけることはできない。リオは目を閉じ、物音一つ聞き逃すまいと、聴覚に全神経を注いでいた。そして待つこと数分。東の方角から、僅かに木々の揺れる音がした。

(来たか。)

リオはすぐさま音の方に目をやり、視覚強化の魔法で目標を視認すると、手にしていた狩猟用のスナイパーライフルを構えた。ライフルに取り付けてあるスコープを覗くと、レンズ越しに体長が三メートルほどある熊形の魔獣、フィアーが見えた。魔獣とは、体内の生命エネルギー、いわゆる魔力が暴走してしまい、より狂暴になり、姿も大きく変化した動物のことである。なぜ魔力が暴走してしまうのかは原因は不明だが、ときどきこうした森や川などに現れ、人や動物を襲う。リオはその魔獣を駆除する専門家、魔獣ハンターを生業としていた。フィアーは見た目はただの熊だが、前足の爪がバナナぐらいの大きさまで発達しており、人間など一撃で切り裂いてしまう非常に危険な魔獣だ。今のところは、リオが事前に仕掛けておいたハチミツを食べて大人しくしているが、放っておけば人里に降りてくる可能性がある。

(早めに終わらせるか。)

リオは近くにあった小石を拾い、フィアーの方へ投げた。コツーンと、小石が木にあたる音が森に木霊する。フィアーの顔が、自然にこちらへと向けられた。

(今!)

その一瞬を見逃さず、リオは引き金を引いた。時速約三キロメートルものスピードで放たれた弾丸が、吸い込まれるようにフィアーの眉間へと命中。フィアーは唸り声も上げず、その場で仰向けに倒れる。しかし、ここで油断しないのが魔獣ハンター。素早くボルトハンドルを操作し、空薬莢を排出。再び銃を構え、発砲。今度は右腕に命中したものの、フィアーはピクリとも動かない。念のため射撃姿勢を維持し様子を見たが、動く気配はない。どうやら完全に絶命したようだ。リオはようやく銃を構えるのを止め、胸を撫で下ろした。

「よし。お仕事終了。」

森に入っては、魔獣を討つ。こんな日々を過ごしながら、人生は終わっていくのだろうと、リオは漠然と思っていた。()()()()()()()()


  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

  宿場町カルモ。リオが日々魔獣を駆除している森のすぐ近くにある、人口二千人ほどの町である。皇都から比較的近いこともあり、皇都に行く前に宿に泊まる人々が多く訪れており、決して大きくはないが活気のある町である。魔獣駆除の仕事が終わったリオは、この町のギルドホールに来ていた。というのも、魔獣駆除の仕事はギルドから依頼されているので、仕事が終わると、ここに報告しなければならないのである。ギルドは多くの冒険者や他の魔獣ハンターも利用しているので、いつもガヤガヤ騒がしいが、そんな光景ももう見慣れたものだ。知り合いに軽くあいさつしてから受付に行くと、顔馴染みの受付孃がいた。彼女の名はエニー。種族は猫系の亜人である。少し幼さの残るかわいらしいルックスとスタイルの良さ。淡い水色の美しい毛並み。そしてちょこっと出た三角形の耳が多くの男性のハートを掴み、今やギルドのアイドル的存在だ。リオにとっては、魔獣ハンターを始めた頃から度々お世話になっている恩人でもある。

「こんにちは、エニーさん。しっかり仕留めてきましたよ。」

そう言いながら、リオは先ほどのフィアーから採取した爪を出した。エニーはそれを手に取り、依頼した魔獣のものか確認する。

「・・・・。うん、本物ね。お疲れ様、リオくん。いつもありがとう。」

「いやいや。これが仕事ですから。」

「ふふ。そうやって言えるのが君のいいところだよね。はい、今回の報酬。」

「毎度ありがとうございます。」

リオは報酬の入った袋を受け取り、ぺこりと一礼してそのまま帰ろうとした。

「待って待って!今、リオくんにお客さんが来てるよ。皇都から入らした魔導師さんですって。」

「え?」

思いがけない言葉に、足を止めるリオ。一介の魔獣ハンターでしかない自分に、魔導師が何の用だろうか?と少し不信に思ったが、とりあえず指定されたギルド内の応接室に向かう。扉を開けると、中に女性が一人待っていた。輝かんばかりの銀髪に、澄んだ蒼い瞳。神がその手で創り出したかのような美しさがその女性にはあった。身に付けている白の布地に金の刺繍を施した上品なローブが、彼女の魅力をより高めていた。

「初めまして。あなたがリオ・デュークさんですね。とりあえず立っているのもなんですし、まずはお座りください。」

「あ、ありがとうございます。」

女性に促され、少し緊張した面持ちでリオは女性と向かい合うように椅子に座った。

「あの、あなたの名は?」

恐る恐る聞くと、女性は手にしていたティーカップを置き、先ほどの優しげな笑顔とは打って変わって真剣な表情なった。静寂に包まれる室内。やがて、ゆっくりと女性が口を開く。

「私の名はアズサ。こことは別の世界から召喚され、この世界を救う使命を背負った者です。」


 

初めまして。HIZASIです。一、二週間に一度程度のペースで投稿していきたいと思います。良ければ感想をいただけるとありがたいです。誤字、脱字報告もしていただけると助かります。次回は8月28日18時頃投稿予定です。

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