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6話 俺の命を狙う奴が来ましたが帰っていきました (1)

更新ペースが遅くて申し訳ありません。

今回は過去部分を色々と修正しましたので、気が向いたら覗いてみてください。




「しゅ……襲撃者ってマジすか」


 スミア村を巡る戦いがどうなったのか、アムルから魔法の通信で報告を受けるつもりでいた。

 ……が、何故か剣呑な単語が出てきた。


『それって、あの……女王様を暗殺しにきたとか、城を丸ごと落とすつもりとか……?』

『人数からして、"城を丸ごと"ってのは狙ってないだろう。それと、この村を占拠してた奴の言い分を聞くなら、目的はお前みたいだ』


 マジか。

 一気に「遠くから戦いを見ているだけの部外者」から、「暗殺者に命を狙われている当事者」になっちまったみたいだ。


 いや、もう覚悟はしてることはしてる。


 前にも毒殺されそうになったし、いつかこうなるだろうことは十分予想の範囲内だ。

 それをわかっていて、人柱になることを選んだわけだし。


 ……それでも、ビビるもんはビビる。


『えと、もう一度確認しますけど、二人、城に向かってるんですね……?』

『人数については"おそらく"だけどな。遠方からだから確信はないが、それらしい悪意を持った存在が数人いるのは間違いなさそうだ』


 あくいをもったそんざい……何ソレ怖い、と思うのと同時にそんなことまでよくわかったな、とちょっと感心した。


『それも、魔法でわかるんです?』

『時間がないから、詳細は省くが……人が発する魔力ってのは、感情や思考の影響を受ける。それを読み解けば可能だ』


 へー……なんかすごいな。

 そのすごい魔法で、その襲撃者とやらを追い返せればいいんだけどな。


『その悪意を持った奴を城に入れないように、とか出来ないのか? それこそ、魔法で』

『確かにそれは理論上は可能だが……現実的には難しいな』


 そんなものなのか。

 魔法って奴はイマイチよくわからんな。


『ええと……それで、俺はどうすればいいんだ? どこかに逃げろと?』

『いや、とりあえず出入り口に鍵だけ掛けてくれればいい。その部屋は城の中でも頑丈に作ってあるから、下手に出るよりもよっぽど安全だ』


 鍵。

 初めて聞いたんですが……。


『鍵ってどこだ? どうやって閉めれば……?』

『あれ、まだ知らなかっ……ああ、そうか。最初にお前の世話役だった奴に、鍵について教えるよう言っておいたんだが……言わなかったみたいだな』

『……聞いてませんね』


 最初に俺の世話係だったアイツ、理由はどうあれ俺を殺す気だったみたいだからな……。

 そういう自分の身を守れるようなシステムは敢えて教えてくれなかったのかもしれないコンチクショウ。


『まあ、やり方自体は簡単だから問題ない。まず入り口の前まで移動してくれるか』

『ほいさ』


 俺は通信用の魔石を持ったまま、腰かけていたベッドから立ち上がった。


 そして、壁の一部の前に立ち止まる。

 パッと見、亀裂も扉も何もないように見える壁だが、ここが引き戸のように開いて人が出入りする様子はもう見慣れている。


『移動したぞ』

『あとは、戸に手を当てて「閉じろ」と念じてくれ。言葉自体はなんでもいい』


 え、そんな簡単なの?

 半信半疑になりつつ、俺は壁に手を当てた。


(えーと……"閉じてくれ")


 言葉自体はなんでもいいって言われたけど……これで大丈夫なのか?


『見た目には、特に変化がないみたいだけど……』

『大丈夫だ、もうロックはされてる。こっちでも確認した』


 え、俺がわからないのに、遠くにいるアムルにはわかるの?

 これも魔法のアレコレなんだろうが……意味がわからない仕様だな……。


『正確には、閉じたことを知らせるための魔力もお前に対して飛ばされたはずだが、気が付かなかっただけだろうな』

『はあ、そうすか』


 この世界に少しは慣れてきたとはいえ、さすがに魔法とか魔力はいまだによくわからないから、もはや反応の仕方もわからない。


『気になるようだったら、閉まったかどうかわかりやすく知らせるように改善するが……』

『頼んだ』


 "本当は戸を閉めるのを失敗したのに、暢気に籠城してた"なんてのもバカっぽいしな。

 その結果、襲撃者にあっさり殺されたりしたらシャレにならん。


 そうなったら、この国を守れない。

 "国の人たちを守りたい"と思うなら、俺が最も気にするべきことは、俺が死なないことだ。


 そのためにも、今の鍵の開閉状況は割と重要だろう。


『わかった。またあとでそっちへ行くが……』

『ん、なんだ?』


 何かまだ言いたいことがありそうだな。

 鍵をかけて引きこもり、以外に何かやることがあるんだろうか。


『別に、普段からこまめに鍵を掛けてくれてもかまわないからな』

『? おう』

『お前も若い男だし……他人には見られずこっそりやりたいことのひとつやふたつあるだろう』

『は?』


 なんか、アムルがわかったような顔をして頷いてるような気がする。

 ……いや、まあ……いつアリアさんが部屋に入ってくるかわからない状況で、やれないことがないわけじゃないが…………。


『いやいやいや、何を言い出すんだ、お前は。いまそれどころじゃないだろう』

『それもそうだが……鍵を掛けてもらう以外、特にしてもらうこともないからなぁ。あまり気にしなくてもいいぞ』


 気にするなと言われても……俺の命を狙ってる奴が城に向かってる、なんて言われたら、そりゃ気にもなる。


『本当に鍵かけてるだけで大丈夫なんだろうな』

『ああ。ガイス達にはもう連絡してあるし、恐らくその部屋に辿り着く前に襲撃者も倒されると思うぞ』


 ガイスさん、か。

 この城に来たばっかりの時に会った筋肉のおっさんだよな。


 確か、防衛やら治安維持やらも担当してるっていう。

 なるほど、城に襲撃者が来てるなら、その対応するのは丁度ガイスさんの担当ってわけか。


『じゃ、じゃあ……本当に、鍵かけて待ってるからな』

『一応、オレも急いで戻るから、安心しててくれていいぞ』


 そんな軽い調子でアムルは言ったけど……気になるものは、気になるな。

 暗殺者がこっちに向かってるとか落ち着かない。


 ガイスさんは強そうだとは思うけど、実際戦ってるところを見たことがあるわけじゃないし、何ならさっき敵将をぶった斬ったアムルがいてくれた方が安心することはする。



 俺がそわそわとしていると、アムルとの通信が一段落したことに気が付いたのか、アリアさんが控え目に声をかけてきた。


「あのう……襲撃者、というのは……?」


 自分のことで手一杯で忘れてたけど、そういやアリアさんには通信してた内容は聞こえてないんだよな。

 襲撃者がどうのって話は、俺が驚いてつい口に出してたから、中途半端な情報だけは伝わっているみたいだ。


「何か……城に暗殺者っぽい奴らが来ているみたいです」

「まあ! 大変じゃないですか!! ちょっと私が行って……」

「いやいやいや、ちょっと待ってください! 一応大丈夫みたいですし、もう鍵かけちゃいましたし!!」


 腰にぶら下げた剣の柄に手を掛けて、アリアさんが外へ向おうとするもんだから、俺は慌てて止めた。

 同時に、アムルからの通信の内容をざっくりと説明する。


 しかし、アリアさんも強いってのは聞いてたし、性格も割と熱血系なのも知ってたけど、まさか自ら敵と戦おうとするほどとは思ってなかった……。


 いくらなんでも、メイドさんが戦いに出るのはダメだろう。

 そっちが専門っぽいガイスさんに任せた方がいいはずだ。


「……そうですか。ガイスさまが向かっておられるなら大丈夫だとは思いますが……もしものことがありましたら、私も全力で戦いますので、遠慮などなさらないでくださいね!」


 説明したら、アリアさんも納得はしてくれたみたいだけど、今すぐ飛び出しそうで危なっかしくはあるな……。


 ガイスさんが今どこにいるのか、どこでどう襲撃者とやらを出迎えるつもりなのかはわからない。

 でも、アリアさんを戦闘に出させないためにもガイスさんには頑張ってもらうしかない。


(本当に頼みますよ、ガイスさん……!!)



 俺は、まともに会話したこともないガイスさんに、ただひたすらに祈るだけだった。

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