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2話 スミア村奪還に向かいました(アムルが) (3)

 休憩を挟みつつ平原を歩き続けていた部隊も今は山の中にいる。


 その様子を、俺は人柱部屋でアリアさんと一緒に見ていた。

 猪のイノリの方は、見ていることに飽きたのか、足元でよく眠っている。


 部隊の目的であるスミア村は小さな山の中腹にある。


 スミアの"村"と言いつつ、規模としては小さな集落ってところだ。

 確か人口も二ケタだったはず。


 部隊が城下町を出発してから既に三時間くらい経っている。

 そろそろ到着してもいいころだろう。


 ……正直、いまは地図のどの辺りにいるか、まではよくわかってないけど。


『これが最後の休憩になるかもしれないから、しっかり身体を休めておけよ』


 アムルが部隊を静止させたかと思えば、そんな声が聞こえた。


 きちんとした休憩所があるわけでもないけど、そこそこ拓けてもいるから休憩するだけなら問題ないんだろう。


 声を掛けられた兵士の人達は、その場に座ったり水袋で水分補給したり、各々休み始めた。


 一応、全員で同時に休むわけじゃなくて交代で見張りもするみたいだ。

 あ。アリアさんの旦那さんは屈伸運動してる。


『おーい、マモル。聞こえてるか?』


 アムル自身も休まずに立っているかと思ったら、こっちに通信してきた。


 俺も通信用の石を握って、アムルに呼びかける。


『おう、聞こえてるぞー』

『早速だが、一仕事頼むぞ』


 本当に早速だな。

 ただ映像を見ているだけの俺に一仕事ってことは、見張りをしろってことなのか。


『具体的に何をすればいいんだ?』

『オレ達が今いるのは、スミア村を占拠してる奴らがギリギリ気づかないだろうって位置だ』

『ふむふむ』

『といっても、スミアの村はもうすぐそこだ。そこまで鷹を飛ばすから、ちょっと上から村の様子を見てみようと思う』


 つまり……見張りというより偵察か。

 俄然、村の奪還作戦らしくなってきたな。


『わかった、色々見て報告すればいいんだな』

『ああ。村に配備されている向こうの兵士の数、抜け道の有無、気になることは何でも確認してくれ』


 結構重大な任務だな……俺が見落としたりしたら、部隊の人達が不利になるかもしれない。


「……アリアさん、村の方の偵察に行くみたいなので、一緒に確認しませんか?」

「はい、どんとお任せください!」


 俺が言うと、アリアさんは胸の前で両手を結んで気合を入れていた。


 こんなこと言わなくても、アリアさんならきちんと観察してくれるだろうけど。

 アムルとの通信は聞こえてなかったはずだし、確認するのは大事だよな。


 間違いなく、こういうのは俺よりアリアさんの方が得意だろうし。


『オレも一緒に見るつもりだが目は多い方がいいし、この周囲も警戒しなければならないから見落とす可能性もある』


 周囲の警戒……今もしてるのか。


 なおさら、アムルに頼り切らずに俺達もしっかり見ないとだな。


『それと、魔法の鷹で偵察するって言っても、普通の鷹に見えるよう心がけるから、あまり不自然な動きは出来ないからな。建物の中に入ったりとか、人に近づきすぎたりとか』

『りょーかい』


 鷹の正体がバレたりしたら偵察どころじゃなもんな。


 突入する前の今現在では、鷹がこっちの魔法だってバレないことが最も重要だろう。


『ところで動きとか以外で、そいつが魔法で作ったやつだってバレたりしないのか? なんかこう、相手の魔法とかで』


 ふと気になって聞いてみたら、アムルは直立したまま答えた。


『可能性はゼロじゃない。だが、限りなく低い』


 どういうこと?


『自然動物が普通に発している魔力なのか、誰かが魔法で作り出したものなのか、それなりに訓練した魔法使いなら分かる。魔法学校の一年生には難しいだろうが、卒業生なら簡単だろうな』


 うーん……その魔法学校基準とかよくわからないけど。


『ようするに、一人前の魔法使いが相手ならバレてもおかしくないってことか』

『ごく自然的な普通の場所ならな』


 何か引っかかる言い方するな。

 普通に説明しろよ。


『普通に説明しろよ』

『ああ、悪い。結論から言うなら、お前がいるからかなり難しいと思うぞ』

『え、俺?』


 俺が何かしたっけ……魔法なんか、さっぱり使えないんだけど。


 もしかして"俺"というより"人柱"が関係あるのか?


 俺の疑問を肯定するように、アムルはさらに続けた。


『人柱の役目は魔力を国に提供することだ。つまり、今この場所にもお前の魔力が満ちている』

『そういうもんなのか……』


 正直、俺が人柱として役に立っているのか全く自覚がなかったけど、そんな風に俺の魔力とやらがバラ撒かれてたんだな。


 確かにこれは、魔力量が少ない奴がやったら、とんでもないことになりそうだ。


 俺が魔力が高いのかとか、一般的にどれくらいの魔力を持っているのが普通なのか、の方は未だによくわかってはいないけどな。


『そのお前の魔力は、この国の住民やオレ達には普通に力になるものだ。魔法は使いやすくなるし、少しだが身体的にも強化される』

『ほう』

『だが、この国に敵対する者にとっては、ただひたすらに邪魔なものだ』


 じゃ、邪魔扱いか。


 いやこの国のためになってるんだからいいことだけど、俺自身が邪魔者扱いされたみたいで、ちょっぴり切ない。


『例えば、近くにおかしな魔力がないか探索しようにも、周りにはお前の魔力が満ちているから探りづらい』

『なるほど?』

『そうだな……例えるなら、オレ達にとっては、常に見通しのいい晴れの日みたいなもので、相手にとっては、常に濃い霧が出ているようなものだ。正確には、視覚的なものじゃなくて、魔力の種類としてだが』

『はあ』


 わかったような……よくわかってないような。


『ようするに、人柱がいるから相手の魔法……の探知?とやらを妨害出来てるって認識であってるか?』

『ああ、間違いない。それでも本当に優秀な魔法使いなら探ることも出来るだろうが、それほどの奴はさすがに滅多にいない』


 つまり……可能性は低いが、スミア村にその優秀な魔法使いがいたらアウトってことか……。


『大丈夫なのか? 可能性は低くても、絶対にバレないってわけじゃないんだろ』

『それはそれで"警戒すべき優秀な魔法使いがいる"っていう情報が入るから、作戦の変更なり増援を頼むなり、判断の材料が増えるから問題はない』


 ああ、なるほど。

 魔法の鷹を飛ばすのは"これが分かるレベルの魔法使いがいるか"っていう調査も兼ねてるんだな。


『わかった。鷹で村の調査なり、相手の戦力調査なり始めてくれ』

『了解』


 アムルが答えると、魔法の鷹は高く高く飛んでいった。

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