試練後
メリークリスマス
ですね。はい。
疑問。
それは、スーロとアーチの頭に湧き出た感情の根源であった。
は? 何て言った? 遂に? どういう事だ? こいつらが出てくるのが分かってたって言うのか?
とスーロが考えていた時、アーチも同じ疑問を抱いていた。
しかし、先に口を開いたのはアーチだった。
「何で出てくるって分かってんの? その言い方は絶対何か知ってるよね?」
アンディは答えない。
何故なら、幻術がアンディ個人に向けられた指向性のものに変わっており、つるとアンディ、正確にはつるを操る術者とアンディのみの世界を見せられているからだ。
しかし、術者はアンディに姿を見せず全方向から声が聞こえる様にしていた。
「どこから来た?」
「待ってくれよ。姿も見せねーし、声もいじった様な変なものだし、変な植物で拘束するし、先に正体を明かさねーと何も言わねーぞ」
即座に「無理だ」ときた。
「じゃあ、何でこんな事をするんだよ?」
「貴様を知るため」
アンディは驚きを隠せない。
「何故今のは答えた」
「貴様には関係無い事だ。早く質問に答えろ」
ーーーーー
エルフって言うと信じてもらえないだろうし、仮にこいつらが例の木ならエルフ達の信用を失わせてしまうよな……。それに、エルフ以外の種族の種族名とか知らねーし……。正直が、一番……か。
ーーーーー
「それは知らないから答えられない。強いて言うなら川だ。そうとしか言えない。納得出来るか?」
沈黙が走る。
「………………」
「何故黙る?」
「ならば貴様は何者だ?」
「それも答えられない。知ってる事は人型の何かという事だ」
「………………。ならばその傷はどこで得た物だ?」
「は? 耳の事か? これも知らないうちになっていたんだ。だから答えられない」
「……そちらの事では無いが、まあ、それも知らんのだろう……。」
「勝手に話進めんな! ならどれのことだよ! 教えろ」
その瞬間、「アンディ! 起きろ! 目を覚ませ!」の声と共にアンディは脇腹に衝撃が走った。
原因はアーチが石を投げた事であり、スーロが呼びかけでどうにかしようと奮闘していた。
しかし、それにも関わらずアーチが痺れを切らしたが故の結果。
しかし、それが功を奏しアンディの意識が戻る。
ーーーーー
くそ、タイミングが悪い。アーチめ、後でお仕置きだ。それにしても傷だと? どういう事だ?
ーーーーー
「なあ、アーチ。その弓矢は何のためにある? 護身用かな? それでもね、頭を使おうよ。それでこれを切れそうだけど?」
アーチの目にはアンディが怒っている様に見えていなかった。
「え? あ! ……。すまん。今から試す!」
結果、全ての矢が弾かれた。このつるにアーチの矢での切れる要素がない。
何でだ? 明らかにおかしいだろ? これも能力なのか?
そうアンディが考えていると、また声が聞こえた。
しかし、今回は意識は持っていかれずに済んだ。
「しつこい野郎だな。何が聞きたい?」
「おい、誰と会話してるんだ?」
とスーロが聞いた。
「多分、木」
と答えると、アンディは木に集中した。
「何故、私が仕掛けると知っていた?」
「何度も気失いかけて見えたんだよ。植物が。木だったり、つるだったり色々とあったけどな」
「しかし、それでは物理的に干渉するとは限らない。それを把握出来たのは会話まで記憶できたからか?」
焦っている術者は端的に質問出来なかった。
しかし、アンディの知る事実だったため、アンディは「そうだ。正確じゃないかもしれないが覚えてるものもある」と答える。
この時、アンディは意図していなかったが、この発言によりスーロらと術者の全員の疑問が消え去ったのであった。
「なるほど、そう言う訳で襲撃が分かったんだ」
というスーロの独り言とアーチの晴れやかになっていく顔はアンディには届いてなかったが、アンディはスーロに「アーチに説明頼むよ」と一言だけ伝えた。
何となくスーロならば分かると悟っていた。
この時のアンディの思考は早過ぎたのだ。
「説明無くても分かるわい!」
アーチの苦痛の叫びであったが、アンディに届かない。
「どうする? あいつには筒抜けかもしれないぞ。だからと言って幻術を解こうものなら次に指向性で拘束するまでかなり時間がかかる。これは最高長に相談を考えねば」
「しかし、こんな奴は初めてだ。我々の幻術が有効打となり得ないし、占いも善悪両論の結果で、今は怪しむ事しか出来ない」
「それよりも、我々が判断しかねると最高長のお怒りがくるぞ。それに、最高長の下に相談を持ちかけたとしても、最悪の場合連帯責任でお怒りが……。全くどうすればよいのやら」
アンディは複数の声が聞こた。
しかし、その声たちは小音過ぎたため全てを聞けずにいた。
「ここへ来い。歓迎しよう」
突然の大音声。
これはそこにいる全員に聞こえていた。
「誰だ! 大元か?」
「一応、そうだ。お前を迎え入れる。しかし警戒は解かない。私たち、いや、私だけかもしれないがお前を恐れている。だからこちらに来てから条件を無視すれば容赦はせん。こちらはお前に全てを明かさせる準備を完了させている」
「恐れる? 俺を? 何でだ?」
「分からないからだ。私たちは無知が危険で恐ろしいものだと知ってる。だからお前を恐れるのだ」
「なら、俺もお前らを知りたい。連れてけ」
「承知した。その場の全名をこちらに来させよう」
その数秒後、眩い光が現れたかと思うと道が開かれた。
前回、前々回のタイトルを変えました。
内容に変更はありません。
すいません、今回ので誤字等ありましたのでなおしました。