試練中
一行が歩み始めると後方から突風が吹いた。
しかし、彼らは運悪く何の影響もなかった。
「何だ今のは? どっちだ?」
アンディが呟いた。
直後、風の全く関与していないにも関わらずアーチが転んだ。
「か、風のせいだ! びっくりして転んだだけだ! お前らは何も知らない何も見ていない」
恐慌し弁解するアーチ。だが、スーロ達には無意味であった。
「明らか遅いだろ、バカか?」
アーチが2人を追いかけながら「いや、でも今のおかしいだろ。今俺、指痛いし、絶対何かに躓いた! ほら!」と言い指を指すが、先程の場所には土は平で物などはなく、完全にアーチの見苦しい言い訳に見えたのであった。
そんなアーチを無視し、歩みを再開する2人とそれを追う1人、彼らの進む道はどれ程の距離を進もうとも幻術に阻まれているとは知らずに。
数時間後。
「すまない、また……少し、だけでいいから……休もう」
アンディ、本日7度目の休憩の提案をする。
しかし、スーロ・アーチはアンディを気遣い休憩の提案をしており、本日の休憩は十数回目であった。
「またか、まあ、仕方ない事だし、休むのはいいんだけどさ……。本当に大丈夫なのか?」
スーロが聞く。
続けてアーチが言う。
「そうだぞ! やばい時はガンガン言ってくれよ!」
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そうは言われても、やばいやばくないの話じゃねーぞこれは……。倒れた時からずっと眠気があるのに頭痛がするわで頭働かねーよ。とりあえずここは、もう手遅れだが安心させないと駄目だな。
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「大丈夫だ。暫くしたら眠気がしてきて、その後に頭痛がするだけだからさ。それに、こうして少しずつ休憩した方が倒れた時よりも長い距離歩けるだろ? そしたら早く目的地に着くしな」
それを聞いてスーロが、
本当に大丈夫なのか? 会話してる時は表情が柔らかくなるけど、歩いてる最中ずっと険しかっただろ? それに……
と、思う。
「お前が早く着きたいのはわかってるが……、分かってるのか? この休憩は今日十数回目だぞ。無理な時は時間が掛かってもいいからしっかり休めよ」
「分かった。じゃあ今回は暫く休むよ」
アンディが合意し、倒れる様に近くの石に座った時に気付いた。
「何だよこれ! え? 待てよ、俺達全く前進してないのか! ?」
アンディの突然の驚きの声に、スーロ、アーチの両名が驚きスーロが返した。
「どうした? 何があった?」
「これを見てくれ、この木のここ。線が2本あるだろ? 倒れて起きた時にバツが薄くなってたから念の為に木にも印つけたんだが、どう思う? 俺ら幻術で同じ所歩かされてるんじゃ?」
それに対してアーチが答える。
「でもよ、この辺りにバツなんかないぞ。その印だけじゃ説明は無理だと思うけど」
「いや、この石で傷付けたから大きさがあえば証明されるよ!」
それを聞いた2人が驚愕する。
「お前よくやるよ。この辺りに木々の仲間が住んでたらどうしたんだよ?」
「ああ、この程度なら殺されないと思ったし、それに実験的な意味でやってみたかったしな」
と言いつつ内心アンディは、
あの時はそこまで頭が働いてなかったし、今の所何もないから大丈夫なのか? それともこの幻術は傷付けた所為なのか?
と思い不安を拭えずにいた。
「今度からは絶対にするな! 彼らと唯一関わりのある俺らエルフでも過去には死者が出たんだ。だから危険を冒すなら俺らにも相談しろ!」
スーロが怒り混じりで言った。
アンディはそれに圧倒され「分かった」と言うことしか出来なかった。
直後またもや突風が吹いたかと思うとつるが空を切り、アンディの四肢を拘束した。
そこでアンディが言い放った。
「遂にお出ましか!」