意志魔法
「まず、私はあんたを見て魔法が使えないなって思った。けどね、そんな人に会ったことはなくてもどの魔法が使えて、どれが使えないかは分かるんだよ」
とブルードは言った。
「何でそんなことが分かるの?」
とメサリーは聞いた。
「伊達に長生きしてないよ。やっぱり私らはねどこかで感覚に頼らなきゃ生きていけないの、分かる? つまり根拠のない感覚なんだけど、事実としてそれが正しいの。そんじょそこらの魔法解説書や魔導書なんかじゃ分からないこともいっぱい知ってんのよ。分かる? 妖精さん」
と上から物を言うブルードにメサリーは
「私だって、長生きしてるわよ。ただ魔法使う環境じゃないだけよ。エルフ達のことだったら私の方が知ってるわよ!」
と返した。
「まぁ、妖精は睡眠長いから寿命は正確に比べられないんだけど、私が凄いのは理解したよね? じゃあ、本題に入るけど、やっぱりあんたに魔法を教えるのには種類を厳選しなきゃいけないと思うんだよね。例えば、監禁してた部屋から出た魔法とかさ」
その言葉を聞きアンディは
「そういえば、何であれが出来たんだ?」
と質問した。
そしてメサリーは
「だから邪魔が入ったのね!」
と怒ったが、2人には無視された。
「あれは意志魔法の1つだし、それにあの部屋にはあんたにはまだ言ってない魔法も実は結構かけてたからね、補助魔法かけてたとは言えまさか1番出来なさそうなのをするとは思わなかったよ」
とどこか嬉しそうにブルードが言った。
「……お前、一体いくつの魔法をかけてたんだ?」
とアンディが聞くがブルードに話を逸らされた。
「まぁ、そのことは忘れて次の話をしよう。意志魔法の本質って実際はあんたのしたことと一緒なんだよ」
「どういうことだ?」
とアンディは聞いた。
「想像力。実際問題、こいつが自由でなきゃ強い意志魔法は出来ない。事実魔法のエリート達は他の魔法にばかりに注目してこっちを疎かにするから発展もしないし、大人になるとみんな想像力が弱くなるから余計にそれが顕著なんだよ。けどな、逆に考えてもみろよ、発展してないってことはまだ意志魔法は未知数の可能性があるんだよ。つまり想像したものを後は理論を見つけて魔法にするだけ、何も知らないはずなのに壁抜けしたあんたなら出来ると信じて私は意志魔法を選んだ。どう? やりたいかい?」
とブルードが熱のこもった言葉を放った。
「想像力がいるのに、結局発動するには理論がいるのか?」
とアンディの素朴な質問がブルードを詰まらせた。
「いるんだけどね、その説明が出来ないんだ。……確かに魔法には何かの法則がある、おそらく化学の物質みたいに、魔法の物質があるのか、また別の何かが魔法になってるのかまでは私には分からないけど……、もっと問題なのが何で意志が他の物質とかに影響を与えるかが誰も知らないんだ。だからこそ意志魔法が発展してないんだよ、未知過ぎて危険だから。何か意志に作用する、意志と関わりの深い何かがあるとは思うけど分からない。その辺は深く考えないでくれるとありがたい」
とブルードは言った。
その姿は何か重要な事を考えながら言ってるようにアンディには見えた。
「そうか、まぁ、魔法が学べるなら何でもいいさ。意志魔法の一部だけでも構わない。俺に魔法を教えてくれ」
とアンディは言った。




