試練前
彼らは何事もなく村を出た。
少しの無言の後、我慢が出来なかった様にアーチが呑気に言う。
「何もなくてよかったな! あと残っている心配事はアンディが好かれているかどうかだな! 」
スーロ少しアーチを睨んだ後、肯定する様に続ける。
「まあ、確かにそうだな。その判断は彼らがするから考えててもきりがない。まあ、後は気楽に行こうや!」
その台詞で賑やかに進む一行であったが、その後かなりの苦労が降り注ぐ事になるのであった。
その夜。
「早い場合はもう少し早くつくのか?」
アンディが問う。
「ん? ああ、そうだな……。もうついてるな。でも、俺は基本的に明日の昼辺りにつくからまだ安心出来るし、それに、いや、何でもない」
スーロは新顔がいるから遅れる可能性があると言おうとしたが、アンディが出発してから時折見せる不安な表情を思い出しやめる。
そしてアンディが「もったいぶるなよ」と言ったが、「本当に何でもない」と、スーロに笑って誤魔化された。
アンディは考える。長い時間考えたが誤魔化された意味が分からずにおり、仕方なくアンディはその夜を終えた。
翌日、真昼、暫く歩いた後。
「おい、アンディどうした?」
突然屈み込むアンディを見てスーロが聞いた。
「いや、こんなに歩いたんだし、もしもの事を考えて目印でも付けようかなと思ってさ」
そう言ってアンディは地面にバツ印を付けた。
「必要か?」
スーロが聞く。
「多分な」
アンディはあまり間を置かずに答える。
「そうか」と返し歩みを再開しようとした瞬間アンディが倒れた。
「おい、大丈夫か? おい!」
アンディからの返事はなく、その日スーロとアーチはそこで野宿をする事にした。
翌日、昼前ようやく目覚める。
「やっとか、大丈夫か?」
アーチが聞いた。
くらくらする。……何だ……これ。は? どこだ? この、バツがあるから、まだ移動してないのか。とりあえず、まずは返事だな。
「何があった?」
「ん? 多分、強い幻術が溜まって体に限界がきたんだよ」
事実、アンディは幻術作用の睡眠効果によって眠っており、未だ正常に体が機能しておらず、アーチの発言通りであった。
「そうか、なら急いだ方がいいかもな。多分俺、嫌われてるんだろ?」
そう言うアンディに対してスーロが「いや、幻術があるなら関係ない。急ぐ急がないよりも命が大事だ」と返す。
「確かにそうだな。まだ、ぼけてるみたいだしゆっくり行こうか」
アンディは自身の現状を確認出来た事でようやく冷静な判断を下せた。しかし、その判断はアンディを更に苦しめる運命を導き得るものであった。
「よし、大丈夫そうだし、行ってもいいだろ。」とスーロが、「よし、行くか!」とアーチが言った。