進展
少し経ちアンディは思い出していた。
「俺は、無法者……。無法者は、どこか理を外れた存在。俺は覚えていないが事故で死を垣間見た」
ブルードはアンディの異変に気付く。
「何だ、ぶつぶつ言いだしたぞ。……やっと効果が出てきたのか? 何言ってるか聞こえないな、音あげたいけど変化に気付かれたら終わりだしな。どうすれば……」
そう考えていた時アンディが立ち上がった。
「俺は、理を、影が、死で、俺が、恐怖で、事故で、耳が、俺は、記憶は戻らなかった。俺は、俺で、何故、どこで、何が、俺は俺は俺は」
何言ってんだ。長居させ過ぎたか?
ん? 横のこの光は何だ?
そうブルードが考えた時、アンディが動いた。
「……出来る気がする……」
そう言い壁に手を伸ばすアンディ。
すると壁に触れた手は壁の中を通りそして外へ出た。
それを確認しアンディはそのまま歩み始め、全身が壁を貫通した。
壁にもアンディにも傷はなく、双方に異変は全くなかった。
「あいつ、やりやがった!」
そこでアンディは正気を取り戻す。
「……壁を、すり抜けたのか? 何をしたんだ?」
「はーい、そこまで。逃げようとはしてないみたいだからわざとじゃないな。けどまさか壁抜けをするとはね。驚いたよ。監禁はもうしないから戻って来な。いろいろ思い出しただろ?」
「……話が掴めないんだが? 確かにいろいろ思い出したけど、何でそれを知ってるんだ」
「だって、あの部屋に魔法をかけたからね。記憶を思い出す手助けをする魔法と遠い過去にある意識した記憶を手繰り寄せる魔法、他にも2、3個程かけたけど、効果の程は中で聞くよ。それにしても、ちょうど今は誰も通ってなくてよかったな、見られてたらすげー怪しまれてたからな」
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中に入り少し会話をした後ブルードに疑問が襲いかかった。
そして聞いた。
「てことはだ、結局思い出したのはエルフの所に居た事とかまででそれ以前は全くだったんだな?」
「ああ、でも俺にも疑問があるんだ」
「は? 何でだよ。魔法が効かなかった事に驚けよ」
「いや、魔法が分からない俺からしたら、そんな事よりも最近の事であるはずのエルフの村での出来事が遠い過去の様な感覚に陥っていたんだ。しかもそこで事故で死にかけたと聞いた時耳がない恐怖が消えて心が楽になったんだ。どうせ1度死にかけたんだ、記憶を取り戻す為に死んでも構わない。ってなったはずなのに……」
アンディは黙り込んだ。
「どうした? 何故止める。続けろ」
「俺はそれを忘れていた。何が原因かは予想が付く。おそらくシャドウに対する恐怖心が死の恐怖を上回ったんだ。確かに今は死の恐怖を覚えていないが、死にかけたと聞いた時は死んでもいいと思ったはずなのに、それを忘れていたんだ」
それを聞きブルードは溜息をつく。
「あのな。どんな生き物であろうと死は1番の恐怖だ。死のうと思ってようが関係ない、全てを全うしてない奴は死の直前には恐怖がそいつを支配するんだ。それに話を聞いていて分からなかったんだが、そのシャドウって何者だ?」
日曜日に投稿予定でしたが遅れました。




