吸血鬼
「まず最初に言っておくけど、ヴァンパイアってのは基本的にあんたら他種族よりも10倍は長く生きるんだよ。そして見た目が若い時期が長い。ちなみに私は500いや600……580? んー、そういえば最近数えてなかったな。まぁ、そのくらいの歳だな」
「女に聞くのかって言ってた割には答えるんだな」
「え? ……何で、言ってんの私……。ま、気にしても仕方ないし話続けるよ」
そのテンションについていけないかも……。
とアンディは思った。
「ヴァンパイアってのは寿命が長いだけじゃなくて病気にかかりにくいし、怪我もすぐに治る。だからそういった点でヴァンパイアは生物として完成していると言われてるけど、長寿のせいか生殖能力が他種族よりも著しく低い。というか完成された生物って何だって話だよな。ただ長生き出来るだけなのに、思考能力の柔軟さではーー」
何か愚痴が混じってきたし、面倒臭くなってきたな。
とアンディは思った。
「おい、聞いてるか?」
「あ、ああ、聞いてるよ」
「で、ヴァンパイアってのは生まれつき魔法が得意何だけど、長生きしてたらつまんなくなるんだよ。だから私が今してるのは物理の研究だ。これが面白い事に化学にも魔法にもどこかで繋がってるんだよ。しかも観測に時間をかければそれだけ正確に情報が手に入る。まさにヴァンパイアのすべき事じゃないかと思う訳だよ」
テンション上がってきたな、また語られるかもしれないな……。
とアンディは思った。
「とまぁ、どうでもいいヴァンパイアの話をしてきたけどさ。この国の歴史や現状知ってるか?」
と突然冷静な顔になり、落ち着いた声で彼女は言った。
それを見て少し驚くが、
「観光区で一通り見ましたよ」
とアンディは答えた。
「あれ、上手い事書かれてるよね尊敬しちゃうよ。でもね、さっきも言った様に長生きしてりゃ分かんのよ。この国のどこかには秘密の区がある。そこに行った事ないからあくまで予想だけど、奴隷を隠し持っていてそいつらを働かせているんだろう。そしてもう1つ、宗教区の勢力は全く衰えていない、寧ろ綺麗に他の区に違和感無く侵入し、侵略をしている」
「いきなり、何を言ってるんだ? 意味が分からない。それに俺に言ってよかったのか?」
「いいよいいよ。私は自分の持ってる知識を自慢したい性格だからな。それにあんたには興味がある。今まで見てきた何者とも違うし、直感で安全だと分かるしな」
「その判断曖昧じゃないのか……あれ? 名前聞いたっけ?」
「あ! まだ名乗ってなかったな。悪い悪い。私は……ブルード。長いしブルードでいいよな? まぁ、それは置いといて、全然曖昧じゃないよ。何年も生きてりゃ分かってくるもんだよ」
「そうか?」
「そうだよ〜」




