校内
「さてと、この学校中はどうなってるんだろ?」
そう言ってアンディは中へ入る。
中には荷物が入った箱を持った人がこちらを向いて立っており、その表情は驚きを隠せないでいる様であった。
「え、何? 客か? こんな時間に何で? 何しに来たの? いやいやいや、店間違えてるよ」
「何で驚いてるんだ? 誰でも参加出来るんだろ?」
「間違えてないのか。仕事しなきゃいけないじゃん、面倒くせー。それで? 何を知りたいんだ?」
「え? 何って魔法についてだけど」
「いや、違う。違う違う。それは分かってる。魔法のどの程度のものが知りたいか、学びたいかって意味」
「それなら、基礎中の基礎から。もう、みんなが1番初めに習うようなものからでいいんだけど」
それを聞き目を丸くする。
「やっぱり、あんた学生じゃないんだね。んー、基礎か。なら物を浮かす魔法かな」
「それって飛翔石のと同じか?」
「いや、違うな。あれは特別だ。魔力の消費が全くないし、あれは自分しか浮かばないからな。とりあえず、この豆粒に使ってみ。豆粒向かってレッグって唱えると浮くから、はいやってみな」
「それだけでいいのか? ようし。レッグ」
………………。何も起きなかった。
「おかしいな? この魔法だったらどの種族でも使いやすいはずなんだけどな。あんた、魔法を基礎から知りたいって言ってたけどどっから来たんだ? もしかして、ど……。いや、近人か?」
「近人? 何だそれ?」
「んー、何って言われても困るんだけど、言うなら種族だな。あんたもあの神話知ってるだろ? と言うか神話って言えばほとんどあれしかないから伝わるな。あの中に出てくる神は種族的には人類って種族名があるのは知ってるだろ。それで、私達は確かな起源は分からないけど人類から生まれた、人類に創られた。毎回ここ言い方困るんだよな……。えー、何て言おう」
それを見て冷静に
「雰囲気伝わってるから大丈夫」
とアンディは言った。
「そう? なら助かった。人類に創られた、つまり人類とは別の種族になるわけだけど、それが亜人と類人。エルフ、ドワーフ、リザードマン……。色々種族はあるけどみんなこの2つに分けられてたんだよ。でも最近分類の難しい種族を近人にしたんだよ、10年くらい前だったかな? ただ、それでも近人の分類が難しいから国によってはまだ浸透しきってないんだよ。分かる?」
「分かるけど、10年前を最近って言うのか? まだ若く見えるけど」
それを聞きまた驚いた表情をし、すぐに笑い出す。そして笑いながら言う。
「やっぱりあんたヴァンパイアじゃないんだね、しかもよく見たら魔法が全く使えないみたいだし、それにその耳だよ。でも、筋肉が量も質も優れているとは言えない。あんたは結局何なんだい? どこかの地域に定住してる近人か? それとも放浪してる近人か? 又は、運良く逃げ出す事の出来た、奴隷、か?」
脅しをかける様に目付きが鋭くなり牙をちらつかせる。
しかしすぐに元の表情に戻り話し出す。
「冗談だって、奴隷の話も忘れてくれ。そっか、魔法が全くと言っていいほど使えないのか。でも大丈夫、意志魔法なら使えるものが少しはあるから」
「例えばどんなの?」
「さっきあんたが言ってた様に、飛翔石使った魔法みたいに何か道具を使った魔法があるな。他には、特殊な空間、時間帯、強過ぎる意志、そういった特別な状態の時に発動できるものが多いからな、教えるのが大変で、普通の学校じゃ1番教えられてないな」
「なるほどな。そんな大変そうな魔法を教えてくれるのか?」
「教えられる限りは教えるよ。こんな人が来るのは初めてだからな、それにこの仕事も暇潰しに始めたものだし、面白くなりそうだからな」
「そうか、ありがとう。……それで実際のところ何歳なんだ?」
「女に向かって聞くことか? まずはヴァンパイアについて知らない事教えてやるから、とりあえず座れ」




