逃走路
アンディは屋根の上を進み区界付近の路地裏で降りた。
「ちょうど区界には家がないのか、厄介だな。ここからこっそり行けばばれないだろう」
そう言ってアンディは路地裏を出て歩いた。
そこで彼らは運命的に引かれあい、偶然にもすれちがった。
何で、こんな時間に人が?
とアンディが思うと同時、彼もまた同様の事を考えていた。
(さっきの人は何だったと思う?)
「関係ないものは考える意味がない。前にも言ったはずだ」
(なぁ、1つ聞くけど、どうしてそこまでして)
すると前方から声が聞こえる。
「おい、こんな時間に何をしてる? もしかして、犯人か? 署まで来てもらいたい」
「……何を言ってるのか分からないな。眠れず気分転換に散歩してただけだ。犯人とやらではない」
「しかし、こんな時間にそんな暗い色の服を着ていては疑いがかかるのも仕方ないだろ? 兎に角来てもらうからな」
「署までの間に反論して認めてもらえれば、それでもいいんですか? ちょうど進行方向はそっちだし」
「それも可能だが、そんな事はあり得ないから諦めるんだな」
「いいんですね。話が分かる人だ。そう言えば、今日は月が綺麗ですね、ただ、赤いですけど。赤い月、あれはーー」
一言、二言、三言と言葉を重ね、そして掛けていく毎に警察官の頭は暗く深い混乱に落とされ、脳内を掻き乱され、脳の許容量を遥かに超えて、その場に倒れ込んだ。
「少しやり過ぎたか。今後は気を付けないとな」
(お前は何でそうなんだ……)
「考える種族に力で勝っても意味がない。考える種族には自身の考えでもって勝たなければ、本当の勝利はない。それにも関わらず何故こんなにもこの種族は考える事をせず、脆いのか。少し興味が湧いてきた。知ってる事は本当にもうないのか?」
(……無いよ)
「仕方ないな。今後はこれを探りながら行くか」
ーーーーー
「よし、さっきの人以外誰にもあってない。ただ問題は区界だな、時々人が見回りしてるから、タイミング間違えて見つかったら終わりだな」
少しアンディはその場で待ち、そして何事もなく区界を越え、近くの路地裏に辿り着いた。
「とりあえず、着いたけど。今日は路地裏で朝までか……。仕方ないな」
アンディは落ち込んだ様な悲しい様な感情が混ざり合った状態になった。




