用意
今さらですが、前回から書き方変えてみました。
「一応言っておくが、君を信頼するから連れて行く。けど、いくら俺が信頼しても彼らが信頼出来なかったら意味がない。そのための条件だからな」
アンディはまっすぐにスーロを見つめ無言で頷く。
「条件は事あるごとに言っていくが、大前提として他種族に彼らの住処を言わないと彼らと契約すること。これを俺らに守ると誓え。守れないと連れて行けないからな」
少し考えた後に納得し「分かった。誓うよ」と答えるアンディ。それを聞いてスーロは続けて言う。
「よし、大丈夫だな。それから、出発は明日の早朝だ。村の人達に見つかると質問ぜめでなかなか村から出られないと思うし、その時間なら段々明るくなって安全になるだろ? だからだ」
それに対しても納得してアンディは「分かった」と言った。両名の利害が一致した。
そして、スーロが言う。
「納得したみたいだし、今日はもう寝ろ。明日は早いし、もう1日経ってるけど君はいろいろあったみたいだしね」
「なあ、さっき発言したばっかりなのに、また俺無視されてる? 話勝手に進んでたけど、俺もついて行った方がいいの? 違うことした方がいいの? 何をすればいい?」
またもや、アーチが突然割り込むように言った。
アンディとスーロは思う。何でこいつの存在感がこんなに無いんだよ! と。
そして、スーロが返す。
「お前はついてきたいならついて来い。別にいいならここの見張り的な役回りになってくれ。どうだ? どっちがいい?」
少し考えてからアーチが答える。
「ついて行く。だって、そっちの方が面白そうだし、久々に彼らにも会いたいからね」
それを聞いたアンディが聞く。
「なあ、時間はどのくらいかかるんだ?」
スーロとアーチはお互いを見つめ合い、少し難しそうな顔をして、スーロが答えた。
「そうだな、早くて1日、遅くても1週間ってところかな」
アンディに疑問が現れる。
「何でそんなに違うんだ? 道のりが険しいのとそうでないのがあったとしても差が大きすぎないか? それにさっきアーチが久々に会いたいって言ってたけど1日のルートなら結構関係持ってそうだけど、交易とかはしてないのか?」
「そらそうだよな。最もな疑問だ。まず、到着までの時間差は彼らの幻術によるものだ。真相は教えてくれないけど、彼らが嫌ってるものは時間をかけて来てもらい、何らかの対策を取るためにしてると思う。あくまでみんなの話からの憶測だけどね。そして次に、彼らは他種族との関わりを極力避けている。理由は俺たち一般のエルフには分からないが、個人的にだったら取引なんかもすることはあるな。特にお偉いさん方には多いし、彼らに気に入られているエルフなんかも結構してるよ。まあ、そこのアーチは置いといて俺はそこそこ信用されているとは思うけどね」
「なるほどな。で、君が気に入られているって? なら、明日は安心かもな!」
嬉しそうに言うアンディ。
この時彼は気付いていないがスーロは少し表情を曇らせていた。
その後ちょっとした会話をし、荷造りを終え、彼らは全員で眠りについた。
そして、翌日。
まだ夜が完全に明けていない時間、村の者がまだ誰も起きていない時間、そんな時間に彼らは出発した。
村中では誰も声を出さず身振り手振りで言いたい事を伝え合っていた。昨晩の打ち合わせで決まっていた事だったのだが、やはりアンディにはその用心深さが異常に感じられ、自分の為を思っての行動であるのを知っていてもなお、自分の異質な姿に対する不安が湧き出てくるのを防げずにいた。