製作
翌朝。
厄介事が過ぎたと思った自分に今の状況を見せたいとアンディは思った。
およそ30分前にあの富豪が店を訪れ、材料を置き日が暮れる頃に様子を見に来ると告げ、去って行ったのだ。
フランクはその富豪を常連にしたいと思っており、過去に1日で100もの武器など作った事はなかったにも関わらず、アンディの手助けがあれば可能とみなし、富豪に嘘をついていたのだ。
「本当に間に合うのかこれ?」
アンディの心からの疑問であった。
「何としても間に合わせるんだよ。ここであいつを常連にしておけば後々有利になる」
本心を言うが、間に合うか際どい所であると考えていた。
「でも、俺はいずれここを出て行くんだぞ? それで今後も間に合うのか?」
「そんなの知らねーよ。間に合わなかったら仕方ない。でもな、もう少し時間かければもっと質のいいものを作れるって言ったらある程度待ってくれるようになるだろ」
「相手は金持ちだ。そんな事で心が揺らぐとは思わないね。金持ちは自分の思うように事が進むのを望む」
「けど、武器を使うのはそいつの部下だ。仮にそいつらに気に入ってもらったら俺を辞めさせにくくなる。俺を辞めさせるなって言ってるやつも全員辞めさせるとなると厄介だからな」
アンディは確かにと思い。
「なら頑張るか」
と言い、何も言わなくなった。
そしてその後彼らは何も言わず、ただ無心で作業を進めた。
アンディは初めのうちは専門的な知識が全くなく少し誤りもあったが作業を進めていく最中で初心者ながらも作業の効率化を図り、徐々に作業時間が短くなっていった。
フランクはそのアンディに関心しつつ、無心で作業を続け、昼も過ぎ後半残り半分程のところで、アンディとの作業が今まで1人でしてきた作業のどれより楽しかった為、アンディにまだしばらく残って欲しいと考え出した。
その雑念が少し作業を遅らせ始めた。
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「フランク急げもうすぐ日が暮れる」
「……。なぁ、アンディ。お前ずっとここにいないか? 何か、お前との作業楽しいんだ。今まで1人でしてきた作業よりも楽しいんだよ。だから残らないか?」
「……。その言葉は有難いが、俺は、今記憶を探してる。それにやるべき事もあるし、だからそいつらが終わった時には考えてもいいけど、今はそんな事考えずに集中してくれ」
「集中してるわ」
「俺はお前の武器が売れるのを見たいって言っただろ? だからせめてそれまではいてやるよ! だから急げ!」
「……。急いでるって言ってるだろ!」
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富豪が来た時には、何とか武器を全て完成させていた。
「お客さん。これでどうです?」




