相違
「なぁ、フランク。気になることあるんだが、今暇か?」
「仕事中だ、暇に見えるか?」
「客いないし武器作ってないしどう見ても暇だろ」
「……嫌なこと言うな」
「事実だろ。諦めて話聞け」
「仕方ないな、話ってなんだよ」
「あそこに倉庫あるだろ? あそこの金属が3つの区画で分かれてるだろ。そこの1つには全然金属ないけどどういうこと? 高いの?」
「高いよ。なかなか買えないけどそれを使う仕事は高くていいよ」
「じゃあ、これは? 1つしかなかったから滅茶苦茶高いの?」
そう言って小さな金属を見せる。
「あぁ、高いな。ただそれは地域によって値段変わるから一概に高いとは言えないけどな」
「……何かやる気ない?」
「ないよ、面倒だからね。それ本当高いから戻しとけよ」
「じゃあ、倉庫の3区画にはどんな意味あるんだ?」
「化学武器に使う金属と魔法武器に使う金属。もう1つはどちらにでも使える金属だよ」
「じゃあ、これはどれ? 両方に使えるやつ?」
「いや、それは飛翔石と言って、魔法武器に使う金属だ。それは加工しなくても持つだけで魔法を使えるから貴重なんだよ」
「そうなんだ。てことは魔法武器の貴重価値が高いってことか。イメージ的には両方に使えるのは万能だから高そうなんだけどな」
「ティカリットって言っても滅茶苦茶広いんだ東側は化学武器の方が少し多い。しかも南には鉱山があるからそこから調達出来るんだが魔法金属はあんまり出てこないんだよな。逆に西側は近くの魔法国家から魔法金属や魔法武器を貰えるから化学武器が少し少ない。ただ鉱山は近くに少ないから交換や売買での仕入れが多いな」
「途中からややこしくなった。もう一回言ってくれ」
「嫌だって言ったらお前うるさいよな? 簡単に言うとティカリットは広いから東は化学で西は魔法になってるんだよ」
「あ、この飛翔石ってどう使うの?」
「どう使うんだっけな。最近それ使う注文ないからよく覚えてないが、確かぐるぐる回る渦を想像してその中心に空っぽい物を考えたらよかったと思う」
「空っぽい物?」
「お前が『空はこれだ!』って思える物。1番空をイメージしやすい物。もうこれ以上言い方ねーから、頑張れ」
「……空っぽいか。そうだな……あれだな」
瞬間アンディは天井に頭をぶつけ気を失った。
「おい、大丈夫か? ……こりゃ駄目だな」
ーーーーー
サイモン。……サイモン。
………………。サイモン? 誰だ?
サイモンは……サイモンだ……。
……サイモンは、誰だ。
……サイモン……サイモン……
……サイモン……サイモン……
……サイモン……サイモン……
ーーーーー
「サイモン!」
「おいおい、何だよいきなり。起きて早々何なんだよお前は。てかサイモンって誰だ?」
「……分からない。声がいっぱい聞こえた。俺じゃない誰かの声が、サイモンと呼びかける声が聞こえた」
「お前の苗字か?」
「……かもしれない。俺の名前はアンディSだ。Sから始まるのは確実だけどSから先が分からない。サイモンかもしれないし違うかもしれない」
「気を失ってる時どんな感じだったんだ?」
「気がつくと暗いどこかにいて、ずっと誰かに声を掛けられ続けていた。暫くしたら返事が出来たんだが、何か、何かが怖い。そんな感じだった」
「よく分かんねーな。てか飛ぶ時何考えたんだ? いきなり真上に急上昇なんて変だぞ」
「そうなのか。てかこれ魔法使えない人でも使えるんだな」
「そうだよ。これは周りの力と使う人の想いの強さで、魔法が使えるんだからな。てか何考えて飛んだんだよ」
「なるほど、納得したよ。何考えたっけ? 多分、何も考えなかったよ」
「は?」
「まぁ、強いて言うなら白だよ。真っ白な何もないものを中心に渦を想像したよ」
「そうか、変なやつだな」
「フランクに言われると落ち込むよ」
「酷いな」
「酷くねーよ」




