到着
「あー、やっと着いた」
安堵の息をもらすアンディ。
「まずは情報収集だよな。まだ物はあまり買わなくていいよな。本国の品揃えはおそらくすごいだろうしな。それにしても暑い。やっぱり涼める場所探すか」
そう言ってアンディは目の前の飲み屋らしき店へ向かった。
そこは机が屋外に置かれそこで飲む形式であったが、机を覆う様に設置されている傘からの魔法により席に座れば十分に涼しむことが出来た。
「なぁにいちゃん。あんた南の砂漠から来るなんて珍しいね。何かあったのかい? もしかして犯罪者か何かかい?」
アンディが町に南側から入ったのを見た少し酔ったおっさんがアンディに話かけた。
「変なこと言わないでくれよ。酔ってるのか? 少し控えてはどうだ?」
「いいんだ。いいんだ。今日は給料日だからな。独り身の俺が何に金使おうが俺の勝手だよ。そんなことよりも何で南から来たのか教えてくれよ」
「分かったよ。普通なら南からティカリット本国へ行くにはトンネル通るだろ? でもトンネルが崩れてしまってて、急ぎの用だから仕方なくこっちから来たって訳だよ。そういえば本国って言い方でいいのか?」
「なぁるほどね〜。本国? まぁ、伝わるからいいだろうさ」
「大丈夫か? ふらつきだしたぞ。酔いがひどくなってんじゃないか?」
「いいのいいの。酔えばあとは寝るだけさ。あぁ〜、今日もいい日だったよ。にいちゃん、じゃ、おやすみ」
「え、まっ……まあいいか。ずっとこんな生活みたいだし、他の人に色々聞こう」
それにしても、南から来るのって珍しいのか。気をつけた方がいいかもしれないな。
「すみません。水ください。あとここからティカリット本国へ行く時に必要な物ってありますか? あるならどこで買えばいいか教えてください」
「水でいいのか? いろんな種類の酒を揃えてるぜ」
「あぁ、水だけでいい。急いでるから酒飲んで下手に酔いたくないんだ」
「まっ、一応水も金とるからいいけどよ。あんた商人じゃないんだろ? 旅人か何かなら何でこんなとこ通るんだ?」
「え、トンネルの話ここまで届いてないのか?」
「あのトンネル崩れたのか? 前にも崩れた時何人か本国への道で通ったけどよ。あんま人来ねーからな」
そういうものなのか? まあいいか
と思い、
「そんなことよりさっき言ったこと答えてくれよ」
と言った。
「ああ、そうだったな。はい水。えっと、必要な物はそうだな、砂漠の生き物を寄せ付けないのとか睡眠道具とか治療道具とかかな。性能は悪いかもしれないがここでも買えるぜ。あと他の店の情報は基本的に話さないやつ多いからなこの町は」
「おっさんも話さない感じか?」
「もちろんだ。で、ここで買うのか買わないのか」
「見といて損はないだろ? 見てから決めるよ」
「逃げやがって。まあいいさ、これは自慢だぜ。この道具は睡眠道具だが寝ている間は宙に浮いて地上の生き物を寄せ付けないし、空の奴らは音で追い払う。しかもその音が使用者には全く聞こえないのに加え使用者が睡眠中落下することもない優れものだぜ。買うかい?」
なかなかいいな。確かにこれからも砂漠以外の危険地帯の中で寝ることもあるかもしれないな。
そう考え決める。
「買うよ。いくら?」
「あー、待って待って、早まらないで最後まで聞いてからにして。次の道具は治療道具だ。しかもこいつはさっきのと相性がいい。これは危険な場所なら1番近くの安全な場所に運んだ上で怪我を治してくれるんだ。ただし使用中意識を失いやすいから気付いたらどこか分からない何てこともあるがな。あ、安心してくれ治療終了後2分以内に必ず目覚めるから。しかもさっきの道具の使用中だとどこにも移動しないぜ。さっきの道具が安全地帯だからな。」
「……まだあるのか?」
「いや、にいちゃんが欲しそうな物はこんだけだよ。買うかい?」
そうだな。あれば便利だ。買い物は本国でいいと思っていたが、本国に辿り着けなかったら元も子もない。……さてどうしようか。
そう暫く考えた後、アンディは決断する。
「よし分かった。両方買うよ。いくらだ?」
「あんがとね。金貨13枚だ」
高いのか? まあいいか。ここの金もラクダみたいに知ってる金とは違う気がするしな。
「はいよ」
こうしてアンディは少し高めの買い物をした。




