夢中
今回、文字の訂正をしました。
それに伴い文を少し増やしました。
すでに読んでしまった人すみません。
アンディは暫く砂漠を歩いていた。
「暑いな」
アンディがふと呟いた。
暑い。
やっぱり砂漠は暑い。
何て所だ。
しかも夜だと砂漠は寒くなるよな?
日が暮れないうちに着いときたいが間に合うのか?
そうアンディは考え、水を飲むとすぐにまた何も考えずに歩き出した。
ーーーーー
暫く歩きアンディは意識が薄れつつも歩みを止めなかった。
ーーーーー
「おい、お前。生きているか?」
アンディにはこの声が届かなかった。
「おい!」
そしてようやく気付いた。
「え、誰だ?」
そう言いながらもアンディには自身がどれほどの時間歩き続けていたのかという疑問があった。
「やあやあ、こんにちは。誰だ、と聞かれても何と答えればいいのやら」
アンディは目を見開いた。
「何でお前がここにいるんだ!」
そこにいたのはあの影であった。
「何でか答えてほしいのか?」
アンディからは止まることのない冷や汗が出ていた。
「その緊張が君の答えだな。そうだよ。私は影だ。ただし君の知るそれとは違うね。私は君が創り出した幻想さ」
「どういう意味だ?」
「君は影を見た時からずっと影に恐怖心を抱いているのだろう? そして今君の意識が薄らいだ時、脳が影に対策するシュミレーションをするのに力を注いだんだ。無意識に自分を長生きさせたかったんだろうね。君のその頭でここまで分かるかな?」
と煽るように言った。
「何となく」
と言いつつも余り理解が出来ないアンディ。
「全く君は運が悪いよ。そんな時に私に意識が芽生えるように何かが作用したんだ。私には君の知り得るものしか分からないからその何かは分からないがおそらく魔法の類だろうね。まあそうして私が生まれたんだよ、君からね。分かるかな?」
また煽られるアンディ。
「ああ、分かったが、お前は結局幻なのか?」
「ハハ。分かってないんだね。つまり分かりやすく言えば私は君が恐怖心から創られた、ただの想像なんだよ。むしろ単に幻覚と言う方が分かりやすいかな?」
「さっきから俺の気持ちを当ててるが何故分かるんだ?」
「君が分かりやすい人物というのもあるが、さっきも言った通り君が創り出した幻想、いや幻覚。君の事なら何でも知ってるよ」
アンディの耳に最後の1文が残った。
「何……でも? 本当か? なら俺の記憶について教えてくれ!」
「それは不可能だ。私がそれを知っているか知らないかは教えない。もし知らないなら言葉通りの不可能だ。しかし、もし知っているなら教えるのはルール違反だ。自力で、自分の意識が何かをした結果で思い出さなければ意味がない。成長はないんだ」
アンディにはその言葉が不思議でたまらなかった。
「それに君はまだ私が本当に想像なのか疑っているのだろう? ならば私が本物の影ならば嘘の情報が入っているかもしれないだろ? そうだったらなおさら聞かない方がいいだろ?」
見透かされてる。
何なんだこいつは?
「本当に何でも知ってるのか? 知ってるなら証拠をくれ」
「証明は出来ないかもしれないが、君はエルフの村でスーロとアーチが友人として助けてくれ、樹々の村へ行った。数日後本物の影に会い逃げ出し、ティカリットの村でトカゲの一種の婆さんや情報屋の助けでティカリット本国を目指して砂漠越えの最中なんだろ? 君の記憶の中はこれだけだろ? 他は一部しかないからさっきの通りルール違反に当たる為言えない」
おかしい。本物の影なら全ては答えられないよな? 違うのか?
「それから、君は無法者。そして、君は色々夢中になり過ぎている。実際少し前はティカリットに夢中だし、今は私に夢中だ。他に証明するのに何が必要かな?」
「夢中? 無茶し過ぎってことか? それに俺の事が分かるなら当ててくれよ」
「一部その通りだ。他は少し違う。君は1つの物事しか出来ないのかと疑うぐらいいつも何か1つに夢中だ。しかし気を付けてくれよ。熱中症、熱射病、人類の病名には詳しくはないが恐ろしいよ。それに私は君の一部なのだから余計に怖いよ」
そしてため息を吐くようにして続けた。
「よく考えてみてくれ。当てるのはいいが、私1人で話は出来ないし何か悲しいだろ?」
まぁ、一理あるな。
俺もそう思うし。
「なら、エイブについては?」
「エイブラハム リンカーンだろ? 覚えてないのか?」
「は? 無関係なのか?」
「だから私は君の事なら何でも知ってるだけだ。君の記憶からの推測でしかないよ」
「ならサイモンは?」
「それは、人名だ」
「誰の?」
「人名だ。それしか言えない」
「ルール違反か?」
「……ようやく私の考えを読めるようになったか?」
「いや、今までの流れがそうだったから」
「まぁいいさ。君が全てを知るのはかなり後何だからね」
「え? ……それはどういう意味だ?」
「もう時間がきたのさ」
「え?」
「さぁ、鳥よ羽ばたけ! 今、無限の可能性の世界が有限の世界に変わる! 世界の豹変は既に始まっている!」
声を出す間も無く、アンディは地面に倒れた。
ーーーーー
木の軋む音が聞こえる。
ここは?
「お、あんちゃん、目覚めたか?」
「うん。……で、ここは?」
「俺のラクダ車さ」




