事情
アンディが聞く。
「それで、何があったんだ?」
「ん?ああ、助けた時か?」
男は短いため息をする。それを見たアンディの頭には疑問のみが膨らむ。しかし、男は平然と話し出す。
「あの時、俺はアーチと言う友と薬草を採りに行ってたんだ。で、帰りは川の近くを通ることにしたんだ。その方が下手に木々を怒らせないしね。」
アンディは先程の疑問を払いこの話を聞いていた。しかし、また、疑問が出る。木々を怒らせる?どう言う意味だ?と。そんなことを気にせず、男は続ける。
「その時君を倒れているのを見つけた。で、『大丈夫か?何があった?』と声をかけたんだ。そしたら君が『大丈夫だ。嵐に巻き込まれた』と弱々しく答えたんだ。覚えてないか?」
アンディには全く身に覚えのない出来事であったが、少し思い出せないか考えた後、答える。
「全くわからないよ」
「そうか、なら仕方ないし、君はまだ名前しかわかってないようだし。……そうだな、ここにしばらくいてくれていいし、何か思い出せそうなら手伝うよ」
「そう言うことなら助かるよ。これから、いろいろ教えてくれ。よろしくな……あれ?名前聞いてなかったか?」
「ああ、すまないまだ名乗ってなかったな。俺の名前はスーロだ。よろしくな」
その時、スーロに背後で音を立てながら部屋に1人の男が入ってきた。
「お!やっと起きたか。大丈夫かい?俺はアーチ、こいつスーロと一緒にお前を助けたんだ。よろしくな!それで、もう助けた状況とかは聞いたかい?あと、君の名前を教えてよ!」
かなり騒々しい男だと思いながらアンディはアーチを観察した。アーチが目を輝かせて此方を見ていることに、純粋だな。と思いつつ、笑いながら答える。
「いろいろ質問されたけど、順番に答えるよ?まず、大丈夫だ。次に状況は大体聞いた。最後に俺はアンディだ。よろしくな」
「そうか、アンディって言うのか!よろしくな!」
騒々しいと思うのはアンディだけではないようであり、スーロですらため息をついている次第である。そして、呆れた視線でアーチを見つめながら言う。
「やっぱりさ、お前の名前はノージでいいよね?実際五月蝿いんだし!」
「は?嫌だよ!やっと定着したのにまた変えたくはないよ!それに、その名前の意味が嫌!」
「実際、昔からみんなノージにするかどうかで迷ってたんだよ!それとも、前の前の名前のフールに戻すか?」
「それこそ嫌だよ!最早単語そのまんまで意味も一瞬でわかるじゃん!バカって!今までで1番嫌いな名前だよ!」
アンディにとっては意味不明な会話がされおり、それを理解しようと試みているのを邪魔するかの如く罵り合いが始まった。
「バカ」
「それはお前だよ」
アンディはうんざりして、それに喝を入れるかの様に咳払いをし聞く。
「あのさ、名前って変えられるの?」
そのさり気ない一言で我に返ったスーロが答える。
「すまない、見苦しいところを見せてしまったね。じゃあ、一つずつ俺らの文化を教えていくよ」