真偽
村長との会談を終えてから3日後。
アンディへの質問に来る村民は完全に居なくなった。
「今日は俺、何したらいいの?」
アンディが問う。
「薪でも取ってきてくれ。残り少なくなったし、樹々の住処の範囲もだいたい覚えただろ?」
「ああ、もうばっちりだ。じゃあもう今日の俺の仕事はこれだけだから。他に任せたいやつはアーチにやらせといて」
そう言ってアンディは出て行った。
「あいつ、最近逃げ足速いな」
森の中で。
「これぐらいでいいかな?」
そうアンディが思っていると、何かが通り過ぎた。
「ん? 何だ、あれ?」
「………………」
後を付けようとすると気が付く、
黒……い?
と。
「おかしいな? この辺からの信号だと感じたが、来るのが遅かったか? それとも原因は別にあるのか? ん? おぉ、これだ。あった。これで目的の半分を達成だな」
そう言いながら謎の黒い影は機械的な物を持ち上げ、消した。
は? 消えた? 何で? どこに? 何だよあいつ。絶対ヤバイぞ!
とアンディが思った。
瞬間。アンディの脳内にテレビの砂嵐のような妙な機械音とピアノの音を延々と高低させているのが混ざり合って響き渡った。
ーーーーー
笑い声がその空間に響く。
「ハハハ。アハハハハ。アーハハハハ」
妙に甲高い声の反響が終わる前に
「ありがとう。助かったよ。全く、全てが君のおかげだな」
と聞こえるや否や
「私……由…す……んて、なん…お…か……だ」
と途切れ途切れの声となり消えていった。
ーーーーー
何……だ……? 今の、場面は?
とアンディが思うと、影の方から声がした。
「しかし、あれがこれだけで終わる筈がない。必ず、何かあるはず……だ!」
最後の音と共にアンディに向かって、巨大化しながら急接近する。
そして接近し終えると同時中央に赤い丸が現れた。
何だよこいつは!
と思い逃げ出すアンディ。
「やれやれ、見られてしまったか。しかしこの辺は妙だな。幻術か? まぁ、いい。私を見た彼もいずれ分かるだろう。私がどういうものか。それにしても、今回の信号は異様だ、前回のといい何かが動き出したな。もしも彼が無事に来ているとしたら……。……その時は上手く交渉でもしてゲームを楽しもうか。彼ならギリギリの勝負で楽しめるだろうしな」
そう大声で笑いながら言うと影は消えた。
まずい。まずい、まずい。あいつはヤバイ。まずいまずいまずいまずい。
死にものぐるいで逃げるアンディ。
やっとの事で後ろを向くと何もない、ごく普通の森だ。
た、助かった、のか? と、とりあえず、木を幾つか集めよう。帰りながら拾ったら、逃げられるし、怒られることもないな。
安堵。
アンディの中に安心がいっぱいに広がる。
暫くし、木も幾つか拾い村に着く。
真の意味でアンディに安らぎが訪れた。
これで、これで本当に助かった……よな。
「おかえり。あれ? ちょっと少なくないか?」
「そうか? ちょっと道に迷ってな」
「そっか。まだ1人は早かったか?」
「いや、そんなことはないと思うけど。すまん、何か今日は疲れた。もう休むよ」
「そうか。晩飯には起こすけどいいよな?」
「ああ、いいよ。あれ? そーいや、アーチは?」
「お前の代わりだよ。多分今頃半泣きでお前の文句でも言いながら仕事してるよ」
「そうか、悪いことしたかもな。じゃ」
「え? 何かやけに暗いな。それに、アーチに悪いと思うだって? このぐらいなら普段からしてないか? まあ、いいか」
その後暫くし、晩飯を3人で一緒に食べた。
そしてその晩、アンディは村から姿を消した。