新顔
「じゃあ、ちょっと待っててね。みんな呼んでくるから!」
アンディは、
やばい!
と思い即座に答える。
「待って、待って。ちょっと考えてみて」
「何を?」
「ほら、後でみんなが俺に気付いた時、先に君が俺のこと知ってるとどうなるか分かるかい?」
「んー、そんなの分かんないよ」
「みんながいろいろ質問する時には、君は俺のこといろいろ知ってるからみんなに自慢出来るようになるよ」
この時、ノージの頭の中では、
みんなに自慢出来る
そうしたら、
みんなからすごいと言われる!
そうしたら、
みんなの僕を見る目が変わるかも!!
そうしたら、
名前も変わるかも!!!
と変換され、「分かった!」と、元気よく返事した。
た、助かったいっぺんに子供が来たら対処できなくなるところだった。
と、アンディは思い悟られない様に答えた。
「よーし、まずはどこから来たか知りたいんだよな? この辺じゃないずっとずっと遠い所から来たんだよ。しかも、そこは名前がないからどこどこって感じで答えられないんだ」
「へー、すごい所から来たんだね。大変だったでしょ? 」
「うん、大変だったよ。そんなことよりも、早く次の質問しなくてもいいの? みんなが俺に気付いたら遅いんだよ」
「あ、そっか! んーとねー。あ、何でここに来たの?」
「んー、実は俺魔法が使えないんだ。だからエルフも使えないって噂を聞いたからちょっと気になって、我慢出来ずに来ちゃったんだよ」
「そっか、魔法使えないんだ! 僕たちといっしょだね! えっと、次、は、んー、じゃあ、その頭に被ってるの何?」
「ん? これか? そうだな、俺も名前忘れちゃったよ。砂漠とかだったら便利だったかな? あ、いや、便利だったよ」
「へー、何か変わってるね、それ。じゃあね次は、何しに来たの?」
「ん? さっき答えた様なものだけど、エルフが気になったから見に来たんだよ」
「あ、そっか! んー、次、次、次は、えー、どうしようかな?」
「あ、もう質問無いかな?」
「あ、待って、一個思いついた! これが最後だから! どれくらいここにいるの?」
「んー、まだ考えてなかったけどスーロがいいやつだからしばらくはここにいると思うよ」
「そっか! ありがとう! よーし、みんなに自慢出来るぞ!」
「なあ、スーロ。アーチとノージには言うなよ。ノージって名前はああいう後先考えて無い様な性格のやつにつく名前なのか?」
「いや、その世代の中で単にうるさいから。でも、おそらくアーチが作ってそこから継承されていってるのかも」
と少し笑いながらスーロが答えた。
あ、案外単純か。
とアンディは思った。
「どーでもいい質問だったな。すまん」
とアンディが笑いながら言った。
「おい、俺がノージと喋ってる間何2人で話してたんだよ。2人共そんなに楽しそうにして」
「何でもないよ、アーチ。」
「本当か? アンディ?」
「何で、スーロよりも俺を信頼してんだよ? 本当だよ。」
「だって、スーロって嘘付くじゃん。それにアンディはいいやつだし」
「さっきの俺は? 嘘付いてたけど?」
「へ?」
「え?」
「あー、嘘でしたね。俺の負け、もうこっち見んな」
それを聞き、アンディとスーロが笑い、続く様にアーチも笑った。
その笑い声に気付き村の者が数名アンディに気付いた。
そして、彼らともノージの時と同様に質問に答えていきつつ、スーロの家に向かっていると、当然他にもエルフが寄ってきた。
そして、最終的にはスーロの家付近のエルフ達が来、アンディらは囲まれたのであった。
「はは、ここまでくると笑えねーよ」
「あんちゃん、どっから来たんだい? オラけっこういろんなとこいってっから変に方言まじってっかもしんねーけどかんにんな」
やめてくれ。その質問今日何回目だよ。
と思いつつも平静を装い答えるアンディ。
「おっちゃん、それ方言まじってんの? それよりも、絶対酔ってるでしょ? 今、昼間だぞ? 怒られねーのか?」
「あー、でーじょーぶ。今朝から飲んでおこられてっからよ。それに今日はオラは休みだべ」
そう言った直後奥さんと思しき人物に連れていかれた。
いや、最後のだべって絶対わざとだろ。今度からあの人は気を付けよう。何か面倒臭い。それに、あの奥さんの怒りが飛んできたら嫌だしな。というか、さっきの爺さんとか連れてかれたおっちゃんとか何で話し方違うんだ?
そう思いスーロに問う。
「なあ、スーロ。何で変な話し方の人がいるんだ?」
「多分出稼ぎに行く事が多いんだろ。それで覚えたんだと思う」
「え、何て?」
周りの質問責めでアンディはスーロの声が一部聞こえなかった。
「すいません、今日はもういいですか? 多分ノージって子供が1番知ってると思うから」
その瞬間約半数がその場を去った。
あれは、絶対ノージの所だな可哀想に。まあ、最初に見つけたのが悪かったんだ。今回は許してくれ。
と、ノージに任せた事に少し罪悪感を覚えつつも、すぐにそれを忘れスーロに再び聞いた。
「で、何て?」
「ん? あ、ああ。多分出稼ぎに行くのが多い人だと思う。きっと、そこで覚えてきたんだよ」
「あ、そう言えばそんなこと言ってたかもしれないな」
「お前、ノージを犠牲にしてなかなか酷いな。今なんかそのこと忘れて感心してるみたいだし」
「ん? 仕方ないよ。俺らの休息には犠牲が必要だったんだ。ノージという犠牲がな」
「いや、まあ、結果的に上手くいったけど、アーチがきょとんとしてるというか唖然としてるというか、むしろお前にゾッとしてるぞ」
「え? 何で?」
「ノージが前の名前だからもあるし、アーチはノージと仲がいいし、親近感からだと思うよ」
「ああ、可哀想なアーチとノージ。そういうわけで今日は休もうや」
「まあ、いいけど、やっぱり酷くないか? こんな性格だっけ?」
「ん? もう、お前らとは仲がいいからいいだろ? 元々こんなんだよ」
同刻、ノージ付近。
「ノージ! お前あのアンディとかいうやつの何を知ってる? 教えてくれ」
「ノージ、アンディってどういう人なの?」
「アンディはどっから来たんだい? ノージ」
「え? え? え? 待って! 無理! いっぺんに無理!」
誰か助けてください。
とノージは思った。
こうして、この日ノージは質問される側の苦労を知った。