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王城への潜入

 日が落ちるか落ちないかの時刻。


 クロネコは城壁の側面にある通用口の扉に近づき、向こう側の気配を探った。

 一人いる。

 恐らくは、出入りを監視する衛兵だろう。

 日没となった今の時刻なら、これから下働きの人間が出入りする可能性は少ない。


 クロネコはポケットから取り出した覆面を被る。


「解錠」


 何なく扉を開け、通用口に入り込む。


「何だあ? こんな時間に、誰……」


 中にいた衛兵が硬直する。

 賊らしき人間が堂々と入ってきたのだから、当然の反応だ。


 クロネコは二の句を告げさせず、衛兵の鳩尾に、鋭く拳を叩き込んだ。


「げえ……!」


 身体を折る衛兵の背後に回り込み、首に革の紐を巻き付ける。

 そのまま衛兵の首をきつく絞め上げた。


 衛兵は少しの間、手足をじたばたさせていたが、程なくして動かなくなった。

 その衛兵の身体を、目立たないよう物陰に引きずり込む。


 ここからは、あまり時間をかけるわけにはいかない。

 衛兵の腰から鍵を拝借し、城内へ続く扉を解錠する。


 城内に侵入した後は、気配を殺し、足音を立てずに廊下を進んでいく。

 壁に設置された燭台の灯りが、クロネコの影をゆらゆらと揺らしている。


 床は全て石畳だが、彼の足音が響くことは一切ない。


 クロネコは頭の中に見取り図を思い描く。

 地下牢への最短距離は、騎士がよく通るエリアを通過する必要があるため、少し回り込む経路を選択する。


 正面から、巡回の衛兵がやってくる。

 王城への侵入者など想定していないのだろう、気の抜けた顔をしている。

 クロネコは通路の分岐へ身を潜め、それをやり過ごす。


 次に遭遇した衛兵は巡回しておらず、直立不動で立っていた。

 クロネコは音もなく背後に回り込み、衛兵の首に革の紐を巻き付ける。


「ひゅ――!」


 掠れた息を漏らし、衛兵は手足をじたばたさせるが、それも次第に力を失う。

 クロネコは、絶命した衛兵の身体を暗がりまで引きずる。


 気配を殺して通路を進み、衛兵を絞殺する。

 それを3度繰り返したところで、地下牢へと続く扉まで辿り着いた。

 鍵など持っていないが、クロネコにとっては何の障害にもならない。


「解錠」


 小声で魔法を発動させ、鍵を開ける。

 扉を押し開け、地下への階段を下りていく。


 冷えた空気が、じわりと階下から忍び寄ってくる。

 壁に映る自身の影は、上から覆い被さるほどに伸びて、まるで地の底から這い出た魔物のように見える。


 階段の終点に、地下牢の入り口がある。

 ここからが本番だ。

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